しかし、そんな人でもお勧めの方法があるといいます。
今回はリスクを抑えながら、会社員の経験が活かせて、さらには長く活躍もできる働き方について考えていきます。
2023年に総務省が発表した調査によると、65~69歳の就業率は10年連続で上昇を続けています。
今や60代後半での就業率は50.8%と半数を超えています。
また、70~74歳でも33.5%と過去最高を同様に更新中。
今や年齢は関係なく、働けるうちは働く時代なのです。
この背景にあるのは深刻な懐事情です。
年金だけで豊かな生活を送ることはもはや難しく、また、退職金制度も廃止や減額の動きが加速しており、さらに定年後も教育費や住宅ローンの負担が続くという人も少なくありません。
70歳くらいまでは定期収入を確保したいと切実に願う人も多いのではないでしょうか。
そうした願いにもかかわらず、何の準備もないまま、大勢に流される働き方を続けてしまう人が多いのが実情です。
しかし、一般的に収入は役職に就いていた頃をピークに、役職定年でピーク時のおよそ75%、60歳定年でピーク時の50%と、段階的に下がっていきます。
そして、65歳になれば企業に雇用の義務はなくなりますから、再就職の当てがない限り、イチから新しい仕事を探さなくてはなりません。
この年齢で希望に合う仕事に出会える人は決して多くないでしょう。
会社員のままで働き続けるという選択は、決して安泰とは言えないのです。
では、どうしたらいいのでしょうか。
一番は、独立して「一人社長」になるという選択です。
といっても、いきなり会社を立ち上げるわけではなく、今の会社の仕事を業務委託で請け負いながら、スキルアップや新しい取引先の開拓を目指す「"半"個人事業主」というやり方をおすすめします。
「独立起業」という言い方がありますが、「独立」と「起業」は別物です。
「独立」はしても、新たな事業を「起業」するわけではありません。
「起業」しなくても「独立」は可能なのです。
若い世代ならともかく、定年を迎えるシニアが、未経験の事業や多額の初期投資が必要な事業を起こすのはかなり無理があります。
肉体的に負担の大きい仕事や過剰なストレスのある仕事も長続きしないでしょう。
しかし、いままでの仕事を続けての独立なら精神的な負担も軽減されますし、無理がありません。
独立の最大の課題は「顧客の確保」ですが、"半"個人事業主の場合、自分が働いている会社が顧客ですから、ニーズも課題もわかっています。
未経験の分野での起業を「清水の舞台から飛び下りる」とたとえるなら、"半"個人事業主の独立は、「2階から手すり付きの階段を下りてくる」ようなものです。
気をつけていればそうそう失敗がありません。
むろん収入の面でも期待が持てます。
60歳の定年退職時に"半"個人事業主となった場合、一時的には会社に残り続けた場合の収入を下回るものの、スキルアップや顧客の開拓を行なうことで、反転して収入をアップすることは十分可能です。
また、働けるうちはいつまででも働くことができます。
65歳まで会社に残り続けるよりも、生涯収入を大きく増やせる可能性もあるのです。
"半"個人事業主という働き方には法律面でも追い風が吹いています。
高齢者雇用安定法により、希望者全員を65歳まで雇用することが企業の義務になっています。
その方法として、①「定年延長」、②「定年の廃止」、③「契約社員などでの再雇用」があり、多くの企業で③が採用されているのはご存じの通りです。
あわせて、65~70歳の雇用者については、先の3つに加えて、④「業務委託契約を締結」、⑤「事業主自らが、あるいは委託、出資(資金提供)する団体が行なう社会貢献事業」という5つの形で70歳まで雇用することを、企業の「努力義務」としています。
努力義務とはいっても、65~70歳を一律で雇用し続けることは企業にとって負担が大きいですから、多くの人は65歳で会社を離れることになります。
しかし、まだまだ活躍できる人、会社の側も活躍してほしい人には、「業務委託」という選択肢が加わりました。
国もこの働き方を推奨している、とも言えます。
また、企業の側の意識も変化しています。
経団連が2022年に行なったアンケート調査では、回答企業の30.2%が、社外からの副業・兼業人材の受け入れを認めている、もしくは認める予定だと答えています。
常用労働者が300人未満の企業に限れば、37.7%とさらに多くなります。
伝統的な企業が多く、正社員を重視する傾向のある経団連の会員企業でさえ、雇用以外の働き方(=業務委託)を受け入れるようになっています。
この傾向は今後もさらに進んでいくでしょう。
しかし「業務委託は特別な資格や能力がなければ難しいのでは?」と考える人もいるでしょう。
確かにこれまでは法務部などの専門職やITの専門家、公認会計士など、特別な資格やスキルを持った人たち(「スペシャリスト型」)が、業務委託契約の主役でした。
しかし最近では、それとは異なる個人事業主へのニーズも増えてきています。
例えば、「会社の業務プロセスを熟知し、実務能力と人間関係、人柄などによる信頼感をベースに仕事を請け負う」「実務の即戦力として、実力をよく知る人からの依頼で仕事を行なう」「誰かが対応しなくてはならないエッセンシャルワークを担う」といった業務委託です。
こうした性格の個人事業主を「リリーフマン型」と呼びます。
これまで企業は、契約社員や派遣社員を活用してリストラや人手不足に対応してきました。
しかし、2013年の労働契約法の改正で5年間契約更新を繰り返した契約社員に無期転換権が発生するようになり、15年の派遣法改正で派遣社員は同じ職場で3年以上の勤務ができなくなりました。
言葉は悪いですが、企業は非正規社員を都合よく利用できなくなったのです。
また、シニア社員を雇用し続けることも企業にとってリスクになります。
「働かないおじさん」問題はその典型です。
こうしたギャップを埋めるのが"半"個人事業主であり、とりわけ「リリーフマン型」はその主役となり得ます。
企業は雇用リスクを抱えることなくベテランの経験やスキルを活かせますし、"半"個人事業主の側も、フルタイムではなく、稼働日を限定した勤務によって自由な時間を得られます。
業務委託契約は企業と対等な関係で交わすものですから、指揮命令を受けることもなく、年下上司との微妙な関係も解消されます。
まとめ
特に男性が取得する介護・育休は、人によって数週間~年単位と期間が一定ではなく、その期間の仕事を非正規社員で補うのはなじまない場合もあります。
今後も育児や介護で休業する人はさらに増えると思われますから、定年を迎えたシニア世代にとっては業務委託という、“半”個人事業主の働き方(特にリリーフマン型)の活躍の場が増えていくことに大きな期待が持てそうです。
定年後も定期収入を確保したい方には、ぜひ老後の働き方の選択のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。