プレゼンをする際にも、数字に弱く理論的な思考のできない方は、一生懸命やったにもかかわらず「結局何が言いたいのかわからない」と言われてしまうことになりかねません。
今回は、こういった悩みを解決し、どんな時でも成果を出せるビジネスパーソンを育てた実績を持つ深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を解説した書籍、『「数学的」な仕事術大全』から「仕事が多すぎる」という悩みを取り上げ、「仕事を断る」のに使える数値化のテクニックをご紹介します。
★ 「仕事を断る」というスキル
★ 「仕事を断る」のに使える2つの数字
1.時間
2.お金
★ 「攻め」の時代から「守り」の時代へ
★ まとめ

研修で学んだことを職場で実践したいと思っても、学んだことをなかなか職場で実践できないという方が数多くおられます。
そうなってしまう理由として多くの方が
「仕事が忙しく、学んだことを取り入れる(そのことを考える)ヒマがない」
「今の仕事の仕方を継続させることで精一杯」
といった苛立ちを抱えています。
こういうことになるのは、要するに、抱えている仕事が多すぎるからです。
時間は自ら工夫して作りだすもの、という厳しい見方もありますが、組織の中で仕事をしていると、どうしても時間が作れないこともあります。
では、どうすればいいのかと言えば、仕事を上手に断って、抱える仕事を減らせばいいのです。
「抱えている仕事が多すぎる」という悩みの根本には、「うまく仕事を断れない」「今のやり方を捨てる提案ができない」というスキル不足があります。
そこで、ビジネス数学の立場から「仕事を断るロジック」を作れる人に共通する視点を知ることで、業務改善に役立てていただきたいと思います。

ビジネスシーンで何かを断るためには数値が必要です。
そしてそれは
1.時間(できないものはできない)
2.お金(ビジネスとして適切でない)
というたった2種類の数値のみです。
1.「時間」を理由に断る
たとえば仕事に使える時間が6時間あるとします。
すでに予定に入っている仕事で使う時間は5時間を見込んでいる場合、仕事に使える6時間のうち、5時間はすでに埋まっているので、残された時間は1時間です。
そんなとき、上司から、どう考えても2時間はかかる仕事を依頼されました。
使える時間が1時間しかないにもかかわらず、2時間はかかる仕事なのですからできるわけがありません。
もちろんあなたは時間を理由にその依頼を断ることができます。
断る根拠は子どもでも計算できる算数によるものでしたが、この極めてシンプルな例の中に仕事を断るための重要なポイントがあります。
私たちがこのような算数をするためには扱う対象が数値化されていることが条件です。
言い換えれば仕事を時間に換算できているかどうかが問題なのです。
すなわち、普段から自分の仕事を時間換算できる人は、時間という数字を使い、「できないものはできない」という理由で仕事を断れます。
最悪なのはここで「頑張ります」「どうにかします」と言って仕事を預かってしまうことです。
特に誠実で生真面目な人ほど、仕事を依頼されたことを嬉喜んでしまい、このような姿勢になりがちです。
当たり前のことですが、2時間かかる仕事は1時間ではできません。
どう頑張ってもできない、という揺るがない原則を、断る理由にするのです。
2.「お金」を理由に断る
上司からある業務をそのまま引き継いだとしましょう。
その仕事の進め方はアナログの手作業なども多く、明らかに非効率的なものです。
きっとあなたは何かツールを導入して、多少のコストを発生させてでも効率よく仕事がこなせる手法に変えたいと考えるはずです。
これはつまり上司の要求をある意味で「断る」ということになります。
しかし、ここで「効率が悪いので」という理由だけを上司に報せても、おそらく納得はしてもらえないでしょう。
具体的に効率とは何か、ツールを導入することでどれくらい効率が改善されるのか、コストがどれくらいかかるのかわからないからです。
さらにこの説明の問題点は、上司のこれまでの仕事の仕方を根拠もなく「効率が悪い」と否定することになってしまうことです。
2つの理由から、このような説明は避けたほうがよさそうです。
ではこのようなケースで上司の要求を断ることができる人はどうするのでしょうか。
答えは現状のやり方と新しいやり方の違いを金額換算し、比較して説明することです。
仕事の効率化を時間換算し、さらに時給や時間あたり付加価値という数字を用いることで、現状の仕事が生む金額と新しいやり方で生まれる金額の差が示せます。
企業にとって何より重要なのはお金(利益)です。
経済的メリットがないという事実は、ビジネスという営みにおいて適切でないことを意味するので、仕事を断るための最強の方法ではないでしょうか。

ビジネスパーソンの置かれている状況として、ビジネススキルのあり方を数値化することで10年前と明らかに変わってきています。
10年前であれば、数値化というテーマは「攻め」のスキルでした。
収益化するため。新規事業を立ち上げるため。仕事を獲っていくため。自分の市場価値を認めてもらうため。このようなことを目的に数値化が必要というメッセージには深く納得される人も多かったように思います。
しかし現代はまったく違って、やりたくない仕事をやらなくて済むように。自分にとって自由な時間を創出するために、仕事を数値化する必要があるのです。
先輩や上司に対して「NO」と言うためには、仕事を数値化する提案がとても刺さります。数値化が自分を守るためのスキルに変化したのです。
「守り」の時代にいきいきと仕事をしているビジネスパーソンは、例外なく仕事の「断り方」が上手です。
そのためのテクニックとして、普段からの人間関係や話し方などコミュニケーションスキルは重要かもしれません。
しかし最後の決め手になるのは、やはり数値化された根拠を提示することに尽きるのではないでしょうか。

まとめ
抱えている仕事が多すぎる、とか、今の仕事の仕方を継続させることで精一杯、と悩んでいる人は、ご紹介した2つの数値化をぜひ取り入れて、仕事の効率をはかってみてください。