認知症になるリスクとして、9つの危険因子(15歳までの教育、中年期以降の高血圧、肥満、難聴、うつ病、糖尿病、運動不足、喫煙、社会的孤立)がありますが、そのなかでも最も大きな危険因子とされるのが、中年期の聴力の低下です。
中年期以降に聴力が低下している方は、そうでない人に比べ、認知症になるリスクが約2倍も多いといいます。
ほかの8つの危険因子よりも、はるかに高リスクなのです。
今回は、認知症リスクを上げる「難聴」招く習慣とその予防についてご紹介します。

聴力の低下はコミュニケーションの円滑を妨げるだけでなく、音が脳に入ってこなくなるため、脳のネットワークが萎縮して認知症になるリスクが上がることが考えられています。
音は空気を震わせて耳の中の鼓膜を振動させ、「蝸牛」という場所に伝わります。
この振動を電気信号にかえて脳に伝える細胞が「有毛細胞」です。
有毛細胞は毛のような形状をしており、傷つくと脳に電気信号を正しく送れなくなって難聴になります。
この有毛細胞は一度失うと再生しないため、予防することが大切です。
また、難聴は加齢だけでなく、生活習慣の積み重ねも大きな要因となります。
それでは、どのような生活習慣が難聴を招くのでしょうか。
まず、難聴の進行と密接な関係があるのが「騒音」です。
世界保健機関(WHO)によると、音圧レベルが85db以上の音を一定時間聞き続けると、難聴の要因になるといいます。
音圧レベルが高くなれば、1日あたりに聞く時間が短くても難聴のリスクは高まります。

では、どういった生活音が難聴のリスクを高めるのでしょうか。
自分の生活のなかで当てはまる内容をチェックしてみてください。
①ドライヤーを15分以上使う
②地下鉄に15分以上乗る
③1日にカラオケを2時間半以上歌う
④アイスクリームが好き
⑤1日にコーヒーをマグカップで4杯以上飲む
⑥1日に板チョコを1枚以上食べる
⑦ハムやソーセージが好き
⑧晩酌に缶チューハイを2本以上飲む
⑨遅寝遅起きをする
⑩常に睡眠不足である
⑪ストレスが溜まっている
⑫仕事や家事で常に疲れている
⑬寝ているとき大きないびきをかく
※1つでも当てはまると難聴になる可能性あり!
105db以上の音圧は、日常頻繁に聞くことのない大音量になります。
日ごろ気をつけるべきは、難聴に影響をおよぼす、85~100dbの音圧です。
通勤で使う方も多い地下鉄の車内は要注意です。
毎日乗っていて、騒がしさに慣れてしまっている方も多いと思われますし、また、その中で音量を上げて音楽を聴いている方もおられるでしょう。
騒音というと、大音量で音楽を流すライブなどをイメージしがちですが、実は身近なところにもたくさんあるのです。
日ごろから大きい音を長時間聞かないように意識して生活することが大切です。
また、騒音だけでなく食生活にも気をつけるようにしましょう。
④のような体を冷やす食べ物は血流が滞りやすくなり、耳にもよくありません。
⑤のコーヒーに含まれるカフェインは、を取りすぎると、血流の悪化を招き、有毛細胞が過剰に興奮して耳鳴りを助長させます。
耳鳴りは難聴と密接に関係していて、難聴にともなって起こるものが多く、また、難聴で音が聞こえなくなった分、脳が働きすぎの状態になって疲れ切ってしまい、耳鳴りが起こるとも考えられています。
一見、耳の健康とは無関係に思える⑤~⑧の項目も要注意です。
チョコレート、甘いお菓子、加工食品のハムやソーセージなどの摂取を続けると、体内で糖化や酸化が起こり、内耳や有毛細胞などを傷める原因になります。
アルコールも過剰摂取はよくありません。
⑨~⑩のような睡眠の質や時間、就寝起床のリズムの乱れは血の巡りの悪化につながります。
⑪~⑫のような過度なストレスや疲労も血液循環や免疫力の低下を引き起こし、難聴の引き金になることがあります。
突発性難聴の発症した患者さんの中には、発症前に仕事や家事、育児などによる過労や寝不足、周囲とのトラブルやストレスを抱えていたケースが多く見受けられるのです。
⑬の大きないびきは、睡眠時無呼吸症候群である可能性が高く、難聴につながる注意すべき症状です。
睡眠時無呼吸症候群とは、主に空気の通り道である気道が塞がり、平均で1時間に5回以上、睡眠中10秒以上息が止まる状態のことです。
症状がひどい方の就寝中の体内は、酸欠状態で赤血球が増えて血がドロドロになり、血管を詰まらせることで、耳の端の毛細血管まで血液が行き渡らず難聴になりやすいのです。
いびきや無呼吸の兆候がある人は、早めに検査を受けることが大切です。

難聴の予防として、耳の健康にいい栄養素を意識的に取り入れることが大切です。
適度な運動や、質のよい睡眠をとることは血の巡りを改善するうえで重要ですが、摂取する栄養を見直すことも予防対策になります。
おすすめは亜鉛を多く含むすりごまやきなこ、牡蠣などの食材です。
亜鉛は炎症を抑える働きがあり、難聴の予防効果が期待できます。
ほかにも、末梢神経の代謝を促し、内耳の神経の働きをよくするといわれる緑色の野菜や魚などに多く含まれるビタミンB群や、有毛細胞の代謝の向上に活躍するそば、バナナ、のりなどに含まれるマグネシウムもおすすめです。
リラックス効果があり、ストレスが軽減されるハーブティーやノンカフェインコーヒーもよいでしょう。
体をリラックスさせるときに働く副交感神経が多く分布する場所のひとつが耳です。
特に耳の穴や耳のやや下側と周辺に集中しています。
耳の付け根を軽くつまんで回したり、手で温めるだけでも副交感神経が優位になり予防効果があります。

まとめ
チェックリストを参考にして、日ごろの習慣を見直し、認知症予防につなげましょう。