スーパーセンチナリアンの多くは100歳時点でも自立した生活をされており、健康寿命が100歳を超えているのです。
まさに健康長寿のエリートですね。
今回は、スーパーセンチナリアンとまではいかなくても、老いにくく元気に生きるヒントになる血管老化についてご紹介します。

世界的な長寿国である日本においても、スーパーセンチナリアンに当たる方の数は決して多くありません。
2020年の国勢調査の結果を見ると、百寿者(100歳以上の方)は約8万人いますが、スーパーセンチナリアンと呼ばれる超百寿者(110歳以上の方)は141人で、僅か2.2パーセントにしかなりません。
110歳以上のスーパーセンチナリアンの多くは、100歳の時点でのADL(日常生活機能)が高く、自立した生活を送っていました。
では、100歳になるまではどんな生活をしていたのでしょうか。
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターでは、神奈川県川崎市と共同で、85歳からの健康状態や生活習慣がどのように長寿に関わっているのかを調べる「川崎元気高齢者研究」を進めています。
この研究は2017年にスタートし、まず85歳から89歳までの自立した男女1026人を対象に基礎調査を行った後、その変化を追跡調査しています。
どのような生活習慣や社会環境が健康状態に影響しているのかを明らかにすることで、自立から要介護に至るまでの過程を明らかにするのが狙いです。
2040年には85歳以上の人口が1000万人に到達するといわれています。
つまり10人に1人が85歳以上という時代になるのです。
85歳からの健康状態を調査することは、社会全体の介護負担を減らすためにも、とても重要なのです。
この研究とともに、元気に年を取る人と介護が必要になる人の違いが何によるものなのかが明らかになりつつあります。
すでにわかっていることの一つが、血管の老化を遅らせることの重要性です。
人間は細胞でできているので、その細胞に栄養や酸素を運んでくれる血管はとても大切です。
血管の老化は脳の血流にも影響するので、認知機能にも関わってきます。
スーパーセンチナリアンが100歳時点で自立しているのは、この脳の血流が保たれていることも一因なのです。
血管の老化を遅らせるために大切なのは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを下げることです。
よく「年を取ったら好きなものを食べたほうがいい」と言われることがありますが、過去に心筋梗塞などを起こして血管に障害がある人は、高齢になってもコレステロール値を下げるためのコントロールを続けたほうが良いということです。
血管の老化度は、検査で測定することができます。
血管内にプラークがあるかどうかを調べる頸動脈超音波検査や、動脈硬化の程度を調べる血圧脈波検査などで、血管の状態がわかります。
これらの検査は、人間ドックのオプションになっていることも多く、希望すれば受けることができるので、機会があれば一度検査してみても良いのではないでしょうか。

血管の老化を遅らせることも大切ですが、元気な百寿者になるためには、若いときからの積み重ねがとても大事なようです。
身体活動が多い人は、長生きする傾向にあります。
定期的な運動を継続している人は、心機能が低下するほど分泌されるNT-proBNPの数値が低く抑えられていて、心機能が保たれていることがわかりました。
さすがに100歳を超えてハードな運動をしている人は少ないのですが、85歳以上で元気な人たちの7割くらいが散歩の習慣を持ち、その次に多かったのがラジオ体操などを定期的に行っています。
数はかなり減りますが、なかにはゴルフ、水泳、ダンスなどを楽しんでいる方たちもいます。
川崎元気高齢者研究では、85歳以上の対象者に加速度計をつけてもらい、1週間の活動量を測定したところ、活動量が多い人ほどフレイルになりにくいことがわかりました。さらに、運動習慣がある人のほうが脳の萎縮が少なく、認知機能の低下が抑えられるといわれています。
フレイルにならないために効果があるのは、中から高強度の運動です。
たとえばウオーキングでも、ゆっくり歩くのではなく、少し早いペースで歩くなど工夫をすると、体に負荷がかかってフレイル予防につながります。
また、座っている時間が長い人ほどフレイルになりやすいというデータがあります。
つまり、家事をしたり庭の手入れをしたりと、1日の中で立って動いている時間が長い人ほどフレイルを予防できるということです。
座っている時間をなるべく短くすることも、元気な百寿者になるための秘訣だといえるでしょう。
高齢になってから意識したいのは、たんぱく質の摂取です。
若いうちは脂質やコレステロール値に気をつけたほうがよいのですが、年を取ってからは筋肉量を維持することが大切になってきます。
個人差はありますが、75歳以上になると筋肉量の低下を自覚しやすくなるといわれており、実際にはそれ以前から筋肉量は減ってきているのですが、70代半ば頃から、段差でつまずきやすい、歩くのが遅くなるなどの目に見えた変化が現れてきます。
筋肉量を落とさないために必要なのが、たんぱく質と適度な運動です。
無理して肉を食べる必要はありませんが、調査した百寿者たちも、豆腐などやわらかい食材からたんぱく質を摂取しています。
たんぱく質の摂取に関しては、スーパーセンチナリアンの調査で、血中のたんぱく質の濃度が高い人ほど死亡率が下がることがわかっています。
たんぱく質の摂取も健康長寿につながる可能性があるのです。

100歳以上の方たちは、若い頃から「100歳まで生きよう」と思っていたわけではありません。
あくまでも自然体で日々を過ごしながら、気づいたら100歳を超えていたという方ばかりです。
若い人たちが「将来が不安で長生きしたくない」と言っていると聞くこともありますが、100歳以上で生き生きと楽しく暮らしている方たちの例として、100歳を超えてからお孫さんの勧めでカルチャーセンターに2年間通い、自分の本を自分で書き上げ出版した方がいます。
100歳を超えても何かに夢中になっている方はみな元気で、長生きに希望が持てるようになるお手本でしょう。
生きがいを見つけて日々を大切に過ごし、100年以上も元気に生きられるなら、それが理想ではないでしょうか。
今、老化研究の分野では、生物学的な“老化度”を測るための研究が進められています。生物学的な年齢というのは、体内の細胞や組織の機能によって定まります。
スーパーセンチナリアンの「DNAのメチル化状態」を調べると、生物学的な年齢が実年齢よりも若いことがわかりました。
生物学的な若さを保つために、生活習慣や環境因子をどのように変えていけばよいかがわかれば、今後さらに健康寿命を延ばすこともできるでしょう。
そうした研究が進み、多くの人が100歳を超えても元気に活動できるようになれば、きっと年を取るのも楽しみになってくるのではないでしょうか。

まとめ
老いをネガティブなものとして避けるのではなく、安心して老いを受け入れられるように、社会全体で支えていく仕組みが今後より一層大切になるでしょう。