今回は、『おとなの歯磨き 単行本』より、口内の健康に直結するプラークを徹底除去するために一日も早く始めたい、おとなのための歯磨きあとのアプローチ方法をご紹介します。
毎日の歯磨きにかける時間は人それぞれ。
可能であれば10分以上の歯磨きにフロスと歯間ブラシを足したいものですが、これらすべてをちゃんとおこなうと、だいたい30分以上の時間をかけることになります。
とはいえ、時間が取れない、ついつい忘れてしまう、歯磨きにそこまでお金も時間もかけられない、などの理由から困難な人もいると思います。
そんな方のために「プチおとなの歯磨き」として、月曜日~金曜日の平日は、気が向いた時に、かための歯ブラシで歯のプラークを落とすだけでOKとして、のんびりと動画やテレビなどを見ながら、しっかり10分以上磨いていきます。
歯についたプラークさえ落としておけば、新たな歯周病の原因は取り除かれます。
そのため、虫歯菌や歯周病菌の繁殖速度を遅らせることができるので、平日はこのような歯磨きでも許容範囲内です。
ただ、平日にズボラを満喫した分、週末の土日は、ガッツリ「おとなの歯磨き」をおこないましょう。
磨き残して進行した歯肉炎やそもそも進行していた歯周病のために、やわからめの歯ブラシで歯周ポケット磨きを行います。
さらに、フロスやスポンジブラシもしっかり使った「おとなの歯磨き」フルコースをおこなうようにしてください。
「プチおとなの歯磨き」でも最低限のケアはできますが、じつは、実際に「おとなの歯磨き」を実践していただいたほとんどの方は、楽しくなってくるようです。
実際にやってみたら口の中が気持ちよかった
朝起きたときの口の中のネバつきがなくなった
歯垢染色剤で染め上げたとき、染まった歯茎を見て、そんなのが自分についてるなんてと思い、真剣に向き合うようになった
しっかり歯を磨かないと、口が粘ついて気持ち悪く感じるからもうやめられない
やってみたら、フロスが思った以上に楽しくてくせになった
など、感想は様々ですが、一様に「おとなの歯磨き」を楽しんでおられるようです。
歯科医の間では「口は命の入り口、魂の出口」とも言われてるくらいですから、命の入り口をいつもきれいに清潔に保つことは、病気を防ぐという意味での健康だけでなく、気持ちや心にも良い影響を与えるのだと思ってください。
ズボラーさんもぜひ「プチおとなの歯磨き」ではなく、ガッツリと「おとなの歯磨き」フルコースをおこなっていただければと思います。
アメリカの歯周病学会が発表した「フロスか死か」というスローガンがあります。
「Floss or die(フロス オア ダイ)」直訳すると「フロスをしろ、さもなければ死ね」です。
こんな恐ろしい言葉が用いられるほどに、欧米では浸透しているフロスですが、日本での使用率はあまり高いとは言えません。
しかし、歯磨きだけでは、歯と歯の間のプラークを完全に落とし切ることができないため、自分では毎日しっかり歯磨きしているつもりでも虫歯になった、という方は多いことでしょう。
その方の虫歯の原因は、歯と歯の間にあるプラークなのです。
だからこそ、歯磨き後にはフロスを歯と歯の間に入れ、歯の側面から歯周ポケットの中まで、フロスを上下と前後に動かして、プラークを除去するフロス仕上げをセットでしていただきたいのです。
歯磨きと同様に、フロスを入れる隙間の順番を決めて取り漏れがないようにしてください。
フロスを使うと、出血したりプラークが糸につくことがありるので、水で洗ったり、糸の違う部位を使用するようにします。
また、フロスを使うと血が出る場合もありますが、これは歯磨き方法のひとつバス法で出る血と同じなので、気にせず使ってください。
【バス法】のやり方
歯ブラシを歯と歯茎の境目に45度の角度で当てます。
歯ブラシを鉛筆を持つようにやわらかく持ちます。
歯を一本ずつ磨くように小刻みに動かす(2mm幅くらい)。
歯の裏側も同じように磨きます。
ただし、フロスを使い慣れていないと、歯周ポケットの最深部を超えてフロスを入れてしまう場合があるので、フロスも痛みを感じない程度に使ってください。
また、しっかり歯磨きしているのに、フロスを使うと食べかすが取れることがありますが、これこそ磨き残しの証拠です。
今までの歯みがきがどれだけ不十分だったのかを認識する気付きになるでしょう。
歯磨きによる磨き残しの多くは歯の隙間にあるので、フロスは毎日使うのが理想です。
初めてフロスを使う人は、最初のうちはなかなか使いこなせないと思いますが、使ううちに慣れてくるので心配はいりません。
最初は慎重に、鏡を見ながら、各歯の隙間にアプローチできるように時間をかけ、慣れてくればスッとフロスが隙間に入れるようになり、食べかすやプラークが取れることが楽しくなってきます。
使いはじめはなおさら毎日のフロスを忘れないようにしましょう。
どうしてもフロスが上手く使えないという方は、糸ようじタイプを使いましょう。
とはいえ、紐タイプのほうが上下左右に自由に動かせるため、除去効率はこちらのほうが高いです。
平日は糸ようじタイプ、週末は紐タイプでしっかり除去するのも良いかもしれません。
年齢を重ねると歯周病が進行して歯茎が下がっていきます。
すると若いうちは空いていなかった歯の根本の隙間が大きく開いていきます。
フロスは隙間の少ない細かいところで力を発揮しますが、この状態になってしまうとフロスだけではどうしても歯の汚れを除去しきれませんし、歯磨き効率も下がってしまいます。
そんな歯の隙間が空いてきた方には歯間ブラシの併用がおすすめです。
歯間ブラシは、歯と歯の間の根元、ブリッジや、部分入れ歯のバネがかかる歯も驚くほど綺麗にできます。
サイズは、4Sくらいの小さい物なら歯茎を傷つけません。
最初は鏡を見て、歯と歯間ブラシが直角に交わるように歯と歯の隙間に差し込んで3往復ほど磨いてください。
歯に沿わせ上下と前後に動かします。
斜めにすると歯間ブラシが折れる危険があります。
金属タイプは、汚れをしっかりと落とせますが、隙間が狭い場合にはゴムタイプの方が痛みがありません。
使ったことがない方も多いかもしれませんが、歯の根本に隙間を見つけたら積極的に使ってみましょう。
ここまでの歯磨き法で、歯と歯周ポケットのプラークはほぼ落とせています。
しかし、それでもまだ落とされず残っているのが、プラークの恐ろしいところです。
では、残りのプラークはどこに潜んでいるのかというと、それは歯茎です。
もし、歯垢染色剤を購入したのなら、ぜひ試していただきたいのですが、歯磨き、フロス後に歯垢染色剤を使ってみると、歯茎が真っ赤に着色されているのをその目で確認することができます。
しかし、歯ブラシの固い毛先では柔らかい歯茎を傷つけてしまうため、歯茎を磨くことはできません。
歯茎にプラークが残っているのに、磨いてはいけないというアンビバレンツな難問をクリアしてくれるのが「スポンジブラシ」です。
主に介護現場など、歯磨きが困難な人などに使われているスポンジブラシですが、これほど歯以外の場所を清掃するのに優れたアイテムはありません。
スポンジブラシを水で湿らせて絞った後、歯茎をスッスッと磨いていくと、綺麗にプラークを落としてくれます。
歯茎は、普段磨くことのない場所なので、最初のうちは違和感を覚えるかもしれませんが、たっぷりばい菌が付着している場所なのでしっかりと綺麗にしておきましょう。
また、スポンジブラシは歯茎だけでなく、口内全体を磨くのにも適しています。
舌や頬の粘膜など口内全体をスポンジブラシで磨くのも菌を減らすための有用な手段です。
まとめ
歯は一度抜けてしまうと元には戻りません。
日本歯科医師会が提唱している「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という8020運動からもわかるように、歯は健康寿命にも直結した大切な体の一部です。
ぜひ大人の歯磨きを実践して、お口の清潔を維持していきましょう。