しかし同じ継続雇用制度といっても「再雇用」と「勤務延長」とでは条件が大きく異なります。
さらには、同じ会社で働き続けるのではなく、定年退職を機に、別のことをやってみるというのも一つの選択肢に入ってくるため、例えば「海外で暮らしてみたい」とか「留学したい」という希望を叶える「シニア留学」にも注目が集まっています。
今回は、佐佐木 由美子著書『1日1分読むだけで身につく定年前後の働き方大全100』から、定年後の道についてご紹介します。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」を基にした「高齢者雇用安定法」によると、
【第九条】
定年の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置のいずれかを講じなければならない。
一:定年制の廃止
二:定年の引き上げ
三:継続雇用制度の導入
とあります。
厚生労働省が発表している「令和5年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」によると、高齢者雇用確保措置を実施している企業は全体の99.9%に上り、前年度から変動はありません。
「継続雇用制度」とは、本人が希望すれば定年後も雇用する「再雇用制度」などのことをいいます。
さらに、令和3年4月からは「高年齢者就業確保措置」による70歳までの就業機会の確保が努力義務とされ、定年を65歳以上70歳未満に定めている企業は、以下のいずれかの措置を講ずるよう勤めなければなりません。
・定年制の廃止
・定年の引上げ
・継続雇用制度の導入
・業務委託契約を締結する制度の導入
・社会貢献事業に従事できる制度の導入
高年齢者就業確保措置を実施している企業の割合は29.7%にまで増えており、継続雇用制度はどんどん広まりを見せているのが現状です。
継続雇用制度には、再雇用制度のほかに勤務延長制度と呼ばれるものがあります。
勤務延長制度は定年で退職とせず引き続き雇用する制度のことで、再雇用制度との大きな違いには、退職金と雇用条件が挙げられます。
まず、再雇用制度を利用する場合、一度「退職」という形になるので退職金のある企業であれば退職金を受け取ったあとに再雇用の契約を結び直します。
一方、勤務延長制度の場合は「退職」という形にならないため、退職金は支払われないと考えられます。
また、雇用条件についても再雇用だと嘱託社員や契約社員・パート・アルバイトなどとしてあらためて雇用されることになる可能性がありますが、勤務延長制度だとそのまま雇用契約が継続されるため、労働条件を変更するには労使間の合意が必要です。
定年後の働き方として「再雇用」と「勤務延長」のどちらがいいのかは人それぞれですが、例えば退職金でローンを返済する計画をしている場合、勤務延長だと退職金を受け取れないため、困ることが出てくるかもしれません。
しかし、再雇用だと今より雇用条件が下がる可能性もあるため、様々な要素を考慮したうえで、定年後どうするかを考えたほうがいいでしょう。
「再雇用制度」と「勤務延長制度」では、選択によって退職金や雇用条件に違い出てくることを理解し、どちらが自分に合っているのかよく確認したうえで決定されるようにおすすめします。
定年退職後の選択肢は人それぞれですが、先の「再雇用」か「勤務延長」のどちらかを選んで働く人が多い中、長年の夢を叶えるためにあえて仕事から離れる人もいます。
その中でも、今、秘かに注目されているのが、シニア留学です。
海外に旅行へ行くのは魅力的ですが、数日間で観光スポットめぐりをするのと、現地で生活してみるのは、全く違った体験が味わえるはずです。
また、永住するのとは違ってハードルもそれほど高くはありません。
定年退職は、留学のいいタイミングだと言えます。
「海外で暮らしてみたい」という憧れを現実にする、いいチャンスだからです。
「若いときにあこがれた国で暮らしてみたい」「大好きな国の文化や生活に触れてみたい」「インバウンドの手助けがしたい」「ボランティアやキャリア形成に役立てたい」など、シニア留学の動機はさまざまです。
定年を迎える頃には子どもも独立し、自分自身の人生と向き合えるようになっている方が多いため、これからは自分の好きなことをしてみたい、と考えても不思議ではありません。
シニア留学における不安として挙げられるのは、留学中の健康面での悪化や留学先の国の治安状況、食事、クラスメートやホームステイ先とうまくやっていけるかといったことです。
こうした不安を解消するために、シニア向けの留学を手掛けるエージェントも最近では人気があります。
現役で仕事をしていると、数か月の休みを一気に取ることは、なかなかできないものです。
かといって、仕事を休職してまで留学するのも現実的には難しいと思われます。
かつては留学と言えば、20代の若者が行くものだと思われていましたが、現在は50代、あるいは定年という1つの区切りを迎えてから、留学という形で長年の願いを叶えるあり方が浸透しつつあります。
これも人生100年時代ならではの選択肢といえるのではないでしょうか。
まとめ
企業は貴重な経験と知識を持つ従業員を引き続き活用し、労働力不足を補うことが可能な一方、従業員には安定した収入を得るだけでなく、自己実現や社会貢献の機会も継続できるメリットがあります。
定年後の人生が延び続ける中で、どう言った人生の選択をするかは人それぞれです。
ぜひ自分に合った道を選びだしてください。