体重に占める重量の割合はわずか2%と言うわずかなものですが、エネルギーは人体に必要な量のなんと2割も消費しています。
脳への適切な栄養補給は、新しい脳細胞の生成、神経伝達物質の産生、シナプスの形成や維持など、その複雑な機能を支えるために欠かせないということなのです。
なので脳が最適なレベルで働くには、正しい方法で栄養を補給する必要があります。
今回は、全米トップ脳トレーナー、ジム・クウィック著書 、 三輪 美矢子訳『LIMITLESS[拡張版] 超・超加速学習』より、脳に効く食べ物と食べ方をご紹介します。
栄養が十分に満たされている脳は性能やパフォーマンスが高いと言えます。
新たな情報にすばやく対応し、的確に判断し、複雑な思考を処理できるからです。
一方、必要な栄養を欠いた脳は、認知能力が低下し、脳の記憶容量が減り、気分障害や神経変性疾患を発しやすくなります。
脳に適切な栄養を与えることで、記憶力や集中力、さらには知的パフォーマンス全般を高められるのです。
学術誌『ニューロロジー』の2017年の研究で、果物、野菜、全粒穀物、低脂肪のタンパク質をよくとる地中海式食事法を実践している人は、脳全体の萎縮が比較的少ないことが3年間の調査で明らかになりました。
この研究結果は、栄養豊富な食事が高性能な脳の土台であるという昔からの考えと一致し、またその考えを裏打ちしてもいます。
魚やアマニ油に多く含まれるオメガ3系脂肪酸は、脳の健康や認知機能を支えていることがわかっています。
私も日頃から意識してとるようにしている栄養素のひとつです。
『カレント・クリニカル・ファーマコロジー』誌に掲載された研究によると、オメガ3系脂肪酸の摂取量を増やしたところ、ごく軽度のアルツハイマー病や大うつ病障害で認知機能に改善が見られたそうです。
オメガ3系脂肪酸には、脳の炎症を鎮めて脳細胞の健康をサポートする働きもあり、近年は食生活におけるオメガ3系脂肪酸の重要性にますます注目が集まっています。
さまざまな果物や野菜に含まれる抗酸化物質は、脳を認知機能の低下の原因になりうる有害な作用である酸化ストレスから守るうえで重要な役割を果たしています。
『米国医師会ジャーナル』掲載の2002年の研究は、食事から摂取するビタミンCとビタミンEの量を増やすと、アルツハイマー病のリスクを軽減できる可能性があると結論づけています。
次に、集中力と記憶力、知的パフォーマンスを強化できる食べ物と食事法を見てみましょう。
例として、ブルーベリーは「ブレインベリー」とも呼ばれるほど、抗酸化物質のフラボノイドを豊富に含んでいます。
『アプライド・フィジオロジー・ニュートリション・アンド・メタボリズム』誌に掲載された研究では、ブルーベリーを日常的に食べることで、脳の老化を遅らせられるほか、ワーキングメモリを改善できる可能性もあるとされています。
抗酸化物質が多く含まれるとされているチョコレートはどうでしょうか。
注目するのはやはりカカオの含有率が高いダークチョコレートです。
ダークチョコレートには、フラボノイドとカフェインと抗酸化物質が多く含まれています。
『アペタイト』誌に発表された研究では、チョコレートの摂取頻度を増やすと、認知能力が有意に向上するとの結果が出ており、健康で長寿記録を持つ世界的な高齢者は、皆そろってチョコレートが好物だと口にしています。
さらにコーヒーの適度な摂取は、そのすばやい活力増強効果のほかにも、脳に明らかなメリットがあることがわかっています。
『フロンティアズ・イン・エイジング・ニューロサイエンス』誌掲載の研究によると、コーヒーを長期にわたって飲むことで、アルツハイマー病のリスクを下げられる可能性があるのだそうです。
また近年科学的に注目されているのが、「間欠的断食」です。
間欠的断食とは、一日のサイクルに食事をする時間と食事を抜く時間を周期的に挟む食事法のことで、脳への健康効果があると関心を集めています。
『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』誌に発表された研究で、間欠的断食は認知機能を高め、神経変性疾患を予防し、もしかしたら寿命を延ばす可能性もあることが明らかになりました。
この食事法は、代謝のプロセスを最適化し、脳により健康で効率的なエネルギー源を送る助けとなるようです。
とはいえ、どんなに強力な食べ物でも、ひとつの食べ物だけで脳の健康と能力を支えることはできません。
大切なのは、オーケストラ並みにさまざまな栄養素を供給されるように、さまざまなバランスの取れた食事を心がけることなのです。
そうした栄養素は、その1つひとつが、人が物事を認知するという壮大な協奏曲の1パートを奏でています。
だからこそ、食事には果物と野菜、そして低脂肪のタンパク質と全粒穀物がバランス良く含まれていなければならないのです。
脳の健康と栄養との結びつきを理解することはとても大切ですが、一方で栄養はパズルの1ピースにすぎません。
栄養以外にも、運動、睡眠、ストレス管理などといった、日常生活におけるそのほかの要素も、脳の機能を最適に保つには欠かせません。
人生のどんなこともそうですが、結局はバランスが重要だということです。
脳に良い栄養は、言わば最高のパフォーマンスへと続く脳のエンジンを動かす燃料であり、そのおかげで、人は考え、学び、創造し、世界に有意義な方法で貢献できるのです。 だからこそ、バランスのとれた栄養素を取り続けなければならないのです。
脳への栄養の与え方に積極的に注意を払うことは、あなたの潜在力を引き出すための外せない要素です。
脳により良い栄養を与えるためにいますぐできることを、5ステップで紹介します。
ステップ1.水分をこまめにとる
水分補給は、脳を最適な状態で働かせるためにとても重要です。
水分不足になるとは、短期記憶や注意力を損ない、判断力の低下を招くこともあります。
毎日、1杯240ミリリットル程度のコップに入れた水を最低8回は飲むことを目標として、個人の運動量やニーズに合わせて調整しましょう。
ステップ2.食事の色をカラフルにする
いろいろな色の果物や野菜を食べることで、幅広い植物性栄養素を摂取できます。
植物性栄養素には、脳の健康に有効な抗酸化・抗炎症作用をはじめ、数多くの健康効果があります。
ステップ3.加工食品と添加された糖類を控える
加工食品と添加された糖類(食品の調理・加工段階で加えられる糖類)の多い食事を続けていると、認知機能の低下や神経変性疾患のリスク上昇につながることがわかっています。
そうした食品の代わりに、脳に必要な栄養素をふんだんに含む未加工の自然な食べ物を選ぶようにしましょう。
ステップ4.腸の健康に気を配る
最近の研究で、腸の健康と脳機能は深く結びついていることが示されています。
腸内の善玉菌のエサになる、バナナ、葉物野菜、タマネギ、ニンニク、アーティチョークなどの「プレバイオティクス」を豊富に含む食べ物と、腸内フローラのバランスを改善し、健康に有益に働く生きた微生物である「プロバイオティクス」が豊富な、ヨーグルト、ケフィア、ザワークラウトといった食べ物を日々の食事に取り入れ、健康な腸マイクロバイオームを育てて、脳の機能を最適な状態まで高めましょう。
ステップ5.マインドフルに食べる
「マインドフルに食べる」とは、自分が食べるものや食べる行為に神経を集中させ、一口ひとくちを味わいながら、もっと食べたい、もうお腹がいっぱいだ、など、体の出すサインに耳を澄ませることを言います。
この食べ方を実践すると、体に良い食べ物を自然と選ぶようになり、消化能力が上がり、食事をもっと楽しめるようになります。
まとめ
かかりつけ医などに健康管理の専門家に相談をして、サプリメントを摂取しても問題ないかどうか、また自分の脳をケアするのに必要な栄養素はどれかを確認しましょう。
今までの食生活を変えて脳のパフォーマンスを最適化する「脳に効く」食べ物&食べ方で、認知症とは縁のない老後を過ごしたいものです。