なので、人事担当部署の方々をはじめ、会社のトップから社員のすべてが、良い人材に入社してもらいたいと願っているのです。
しかし、しっかり面接で見極めたつもりでも、中途採用で「ヤバい人」を採用してしまうケースはしばしばおこるもの。
それを見極めるには、どうしたらいいのでしょうか。
今回は、中谷充宏氏著書『小さな会社の採用お金をかけなくてもここまでできる!』 から、採用面接で入社させてはいけないモンスター社員を見極める方法についてご紹介します。
人手不足の上に、中小零細企業には思うような人材なんて来てくれないから、多少ハードルを下げてでも採用しないと応募者が集まるのすらままならないのが現実、という気持ちはよくわかります。
しかし、今までの採用方法を繰り返しているからこそ、過去に何度も痛い目に遭っているのであれば、面接で人材を見極める方法を替えない限り同じ失敗の繰り返しになってしまいます。
これでは、いつまでたっても何度繰り返しても人手不足は変わらないし、会社も進歩しません。
やはり中小零細企業といえども、自社なりの採用基準を設けて、それを満たさない人は落とす、ということで良いでしょう。
たとえば、わかりやすいのが「転職回数の多い人」。
短いスパンで何回も勤務先が変わっている人は特に要注意です。
もちろん、それだけで即不合格にしないとしても、理由を聞いて納得できないなら、やはり見送るべきでしょう。
一番まずいのは、理由はともあれ、早急に欠員補充しなければならなかったので、採用したけど、やっぱり当社も短期で辞めてしまった、となることです。
転職回数の多さも気になるところですが、加えてチェックすべきなのが、前職(現職)の退職理由です。
これも「納得できるか」が最大のポイントです。
応募者が前職の誹謗中傷を発言するのは論外として、たとえば「長時間労働がきつかったから」との理由であっても、それが月30時間程度の残業で、自社でも十分起こりうるのであれば、採用してもやはり「キツイ」と感じるのではないでしょうか。
「仕事と待遇(給与)が見合わないから」という理由も、自社でも十分起こりうる、となると、入社しても同じ事象になる可能性が高いと見て、見送るのが妥当でしょう。
「パワハラがあったから」も、事実内容がわからないのと、合法的な厳しめの指導をパワハラと主張するケースも多くなってきているので、詳細を深掘りし、本当にパワハラなのか、被害妄想か、自社でも起こりうることかを見極めることが大切です。
「なぜ前職を辞めた(現職を辞める)のですか?」
この質問は「ヤバい人」を見極めるための、大切な質問です。
本当の退職理由を尋ねたアンケートには、「職場の人間関係が悪い」「給与が安い」「会社の将来性が不安」「仕事内容が合わない」「残業・休日出勤が多い」というのが代表的な理由となっています。
「職場の人間関係が悪い」というのは本音として理解できますし、実際、統計上でも上位にランキングされているものの、退職を決断するほどに悪いということは、どれほどだったのか、具体的なエピソードを丁寧に聞き込んで、さすがにそういう状況なら辞めたくなるよな、と企業側(面接官)が納得できなければならないでしょう。
もしかすると、面接者の退職理由が、自社においてもあり得るかもしれないのであれば、うちに入っても同じことになるのでは?ということをチェックする必要があります。
そこで退職理由を一通り聞いた後に、「この会社でも同じような状態は起こりえるかもしれないことを前置きして、同じように辞めてしまうことになりませんか?と、深掘りして質問してみましょう。
回答に窮してしまうのか?それともそうはならない納得のいく回答を聞けるかで、応募者本人の本当の姿が見えてきます。
こうした追及の場面では、回答の内容以外に、表情や仕草の観察が大切です。
不満げだったり、逆にそしらぬ顔で飄々としていたりといった表に現れるサインを見逃さず、言葉と行動が一致しているかという視点から当人をじっくりと観察してください。
免許の必要な職種の場合、事故歴、違反歴があるからといって、ただちに「使えない、ヤバい人」と認定するわけにはいきませんが、こうした歴が多い人はそういった傾向がある、と見て良いでしょう。
特にドライバー職や郊外の外回りの営業職など、仕事で毎日のように車を運転する場合は注視すべきですし、それ以外でも自動車通勤をする場合でも、会社側としては聞いておきたい質問でしょう。
社有車で事故を起こすと、事後処理だけで社内に大変な労力がかかり、解決まで長引けば、負担も大きくなります。
仕事上で運転するシーンがあったり、毎日の通勤で使う場合は、「念のため事前に確認させてください」と、質問の意図や主旨を事前に伝えてから、事故歴、違反歴を聞く方が円滑に進むでしょう。
虚偽申告は当然NGであり、もしも入社後に発覚したら解雇を検討しなければならない事案になりますが、一方で、「あるけど、スピード違反(駐車禁止違反)くらい、誰もやるでしょ?」とか「私はペーパードライバーじゃなく、頻繁にクルマに乗るので、そりゃそれなりの数の切符も切られてますよ」といった態度だったり、歯切れが悪かったり、隠す様子があれば、不採用を前向きに検討して良いと考えます。
こちらから一通り質問したら、逆質問を受ける流れになります。
「何か質問はありますか? どんなことでも結構です」
と、何を聞いてもらっても大丈夫だということを告げて、応募者の質問するハードルを下げてください。
その質問内容が、これから担当する仕事の詳細やその進め方、職場のメンバー構成、日常業務のルーティンなどではなく、休日や休暇、手当といった福利厚生や処遇ばかり聞いてくる人は要注意です。
説明会や面接でいくら説明しても、仕事のすべては理解できないし、日常業務のルーティンとして、細かい話ですが、たとえば「貴社の社員は始業時間のどれくらい前から出勤しているのか? 新人もそれで良いのか?」といったことも気になるはずです。
福利厚生や処遇の質問すべてがNGというわけではありませんが、完全歩合制の営業職の募集なら、先に仕事の詳細を聞いた上で「何をどれだけ売ったら、どれだけ給与に反映されるのか?」といったことは、プロの営業として当然気になるはずです。
給与や休みは、就職先を決めるのに重要な要素であるのは間違いないし、事前にきちんと確認したい心理もよくわかります。
一方で、会社にぶら下がっていられさえすれば、こうしたものが手に入るという甘い考えの人が一定数存在するのも事実です。
処遇や福利厚生についてのやりとりが終わったら、「担当する仕事や働き方とかについての質問はありませんか? 大丈夫ですか?」と、念押ししてください。
ぶら下がり系の人は「大丈夫です」と回答するケースが多いです。
受かろうと必死で、面接でつい大きく見せたり嘘をついてしまうのは、実際に良くある話です。
「平気で嘘をつく人」を入社させないための質問としては、
「この面接での虚偽の発言は懲戒の対象になりますが、よろしいですね?」
と念押ししましょう。
これから就く仕事に必要な資格やスキル、経験がないのに「ある」と嘘をついていたとすると、なければ採用しなかったわけですから、もしも入社後に嘘がバレた場合は懲戒解雇になる可能性が高いということを伝えておきます。
その時に動揺した表情を見せるのか、「全然大丈夫です!」と涼しい顔をしているのかなど、相手の反応をよく観察してください。
求人の職種について充分な経験がある、と面接で聞いたことを鵜呑みにして採用したものの、実は経験などない、あるいは経験はおろか知識すらないという人がいることも確かなのです。
こうした人は嘘をついている自覚が乏しく、
「少しかじった程度でも、経験は経験じゃないですか?」
「この程度の給与でそこまでのレベルを要求する方が、そもそもおかしい」
と、反駁してきます。
こうなった時に、「面接でこうした主旨を伝えましたよね? 大丈夫と回答しましたよね?」と、論理的に詰めることができます。
なお、嘘をついたからすべて懲戒解雇というのではではなく、「それが真実(たとえば必須条件を満たしていない)だったら元から採用しなかった」という点が懲戒解雇の基準になることをお忘れなく。
まとめ
近年は、たった一人でも職場を破壊しかねない「ヤバい人」が増えつつあります。
お金をかけずに、良い人材を採用できる面接の手法をぜひ取り入れてみてください。