つまり、100万円を1年間銀行に預けたとしても、20円しか増えない計算なのです。
社会的な不安定要素や将来への不透明感が高まっているなか、どうすれば資産を増やすことができるのだろうか。
家計再生コンサルタントとして活動する横山光昭氏の著書『定年後でも間に合うつみたて投資』 から、老後に備える資産形成の方法について一部をご紹介します。
お金を貯めるためには3つの方法があります。
1.「収入」を上げること
2.「支出」のコントロール
3.「投資」
です。
3つのうち、どこが強いか弱いかは、意外と意識できていないかもしれません。
現状で自分はこのうちどれがきちんとできていて、どれができていないかを3つ並べて考えてみることが大切です。
収入面が非常によくても、その分使ってしまっていたら、貯金もないので投資もできない、といったことも考えられます。
収入を上げることばかりに意識が行ってしまい、支出を意識しないという人もいます。
その逆に、高い収入がなくても、支出のコントロールがうまい人もいます。
結果として差分をしっかりと貯金ができている人もいます。
こういう人にはすぐに投資を始めることをお勧めします。
支出のコントロールができる人は、働くことや投資にも意識が行くでしょう。
これからを変えていくことを考えると、支出のコントロールが重要な役割を担っていると思います。
収入に対する投資額の割合の黄金比的なものについては、 収入の6分の1を貯金に回すことが理想的なようです。
収入があったら、まずは貯金を最優先し、その一部を投資に回します。
収入から支出を引いた残りを貯金するということではありません。
30万円の収入があったら、先に6分の1の5万円を抜き出して貯蓄に回し、残りの 25万円で生活するということです。
定年期の人たちの中には、1千万円くらいの貯金を持っている人もいます。
現金として持つのは生活防衛資金となる生活費1年分の360万円ほどで十分で、それ以上はインフレなどへの対策、将来の資金づくりとして投資に回していくのが理想的なのですが、できていません。
それだけでなく、毎月貯金に回すお金の全部を投資に全振りしても構わない状態なのに、まだ貯金を増やそうとする人に自信をつけ、投資に目を向けてもらうには時間がかかります。
一方で、投資のことをよく理解し、つみたてNISAなどの非課税投資制度を夫婦で満額まで活用しようとする人もいます。
つみたてNISAの年間投資上限額は120万円で、毎月積み立てられる金額の上限は10万円です(新NISA)。
投資に回せる貯金があれば、一度にそれを投資に回そうとする人もいますが、じっくり時間をかけ、分散しながら投資に回す方がよいでしょう。
また、高齢者を中心に自宅でお金を保管する「タンス預金」も増えているようです。
日銀の資金循環統計(2022年第4四半期)によれば、家計部門は現金・預金だけで1116兆円あるとか。
国家予算の10年分にも及ぶ額と考えると恐ろしいほどです。
株や保険、年金などを含めた家計の金融資産残高は2023兆円で、証券が311兆円(15.4パーセント)、保険・年金・定型保証が536兆円(26.5パーセント)あります。
これに対して現金・預金は55パーセントを占め、他を圧倒していると言えます。
ところが、現金をいくら持っていても、お金は増えていきません。
ほぼゼロ金利政策を採用している日本では、銀行に定期で預けたとしても金利は年率で0.002パーセントほどですから、100万円を1年間預けてもわずか20円。
ほぼ増えることはありません。
タンス預金であれば利子はゼロです。
少しずつでも資産価値を高めていくことを考えなくてはならないわけです。
定年期の月当たりの収入を、30万円と設定しましょう。
60歳を中心に、前後5歳ずつ、55歳から65歳くらいまでの方をボリュームゾーンとして想定しています。
再雇用となってこれまでの6~7割の収入で働くとして、手取りで20万円前後。
30万円は旦那さん一人ではちょっと大きい数字かもしれませんが、共働き家庭だったらあり得そうな気がしています。
旦那さんが20万円、奥さんが10万円くらいでしょうか。
貯金や投資に回す金額は月の収入の6分の1という設定なので、収入が30万円という設定は計算もしやすいかと思います。
介護施設に入居時の年齢は80代で46.4パーセント、90歳以上で23.8パーセントというデータもあり、80歳を超えてからの入居者が7割を占めています。
介護施設に入る年齢を考えると、つみたて投資は定年期から始めるのがちょうどいいということが言えます。
とりあえず少額から投資を始めてみるというスタンスは悪くありません。
とはいえ、投資となると効率的に増やしていきたいと考える人も多いようです。
「投資だ!投資しかない!」とばかりに、相対的にリスクの高い個別株やギャンブル的な要素のある暗号資産やFXばかりに目が行ってしまい、家計の状況を顧みないような非常に偏った状態でやっているような人です。
意識が投資に向いたときに意外と抜けがちなことですが、投資はきちんとした家計管理のもと、両輪でうまく回していかないとうまくいきません。
これは最近、本当に強く感じることです。
投資をやりたいと思っている人が、まずは家計管理からと言われると、出鼻をくじかれるかもしれませんが、日々の生活をきちんと送ることを、まずは最優先で考えましょう。
家計を見直すと、わりと余分な出費がかかっている場合があります。
各家庭の判断軸の中で「これくらいはかかる」と思っていても、家計の専門家から見ると、「ここの固定費、落とせますね」とか「この死亡保障はいらなくないですか」という部分が発見できるものです。
こういった部分を見直して、まずはいい家計状態にあることを前提にしておくべきだと思います。
投資を含む家計全般を見ていく上で参考にしてほしいのが、「ショウ(消費)・ロウ(浪費)・トウ(投資)」の考え方です。
ショウ(消費)・ロウ(浪費)・トウ(投資)とは、お金は、生活に欠かすことのできない支出(消費)、なくても生活に支障のない支出(浪費)、将来の自分に返ってくる支出(投資)の3つに分けて考えることです。 家計簿の各項目がどれに該当するのかを普段から意識しておくようにしましょう。
例えば、同じ「交通費」をかけて電車に乗る場合でも、通院のためなら「消費」、ふらっと外出するためなら「浪費」に該当します。
社会人教育の受講に行くなら「投資」となります。
「ショウ・ロウ・トウ」は、金額でなく、割合で確認することによって、自分のお金がどう偏っているのかを客観的に判断できるはずです。
消費:浪費:投資=70%:5%:25%(貯金の16.7%は投資に入る)
この割合を意識しながら、1週間ごとにお金の使い方をチェックしておくのがいいでしょう。
極端に節約に努めようとしなくても、貯金ができ、投資に回すお金ができるようになっていくはずです。
まとめ
投資や保険といった具体的な金融商品の中身については、ファイナンシャルプランナーに相談するのもいいでしょう。
投資は定年後からでも大丈夫、と言う言葉に少々安心した方も多いのではないでしょうか。