「インターバル速歩が健康に良さそうである」ということは、前回の記事で何となく理解していただけたと思います。
では、インターバル速歩を続けることで実際に何が改善したのかを数多くの症状の中から3点挙げていきたいと思います。
1.「生活習慣病」の改善
生活習慣病になってしまう原因としてはいろいろな要因が挙げられますが、「よく寝る」「脂っこい食事は避ける」「野菜を食べる」など、そうならないための助言はよく耳にしますね。
しかし、『ウォーキングの科学』では、体力の低下こそが生活習慣病の最も重要な要因で、それを向上させればそれらの症状が改善することを示しています。
では、インターバル速歩によってどの生活習慣病がどれほどよくなるのでしょうか。
高血圧症、高血糖症、肥満症、異常脂質血症の疾患を持つ中高年者246名を対象に、インターバル速歩を始める前と後で比較した実験結果があります。
トレーニング前、低体力群と見なされた参加者の約80%が高血圧症、約70%が高血圧症、約40%が肥満症、約20%が異常脂質血症でしたが、5ヵ月の間、インターバル速歩を行った結果、高血圧症、高血糖症、肥満症の症状が約30%の人でなくなっていました。
したがって、もしも今、「血圧が高い」「血糖値が高い」「肥満症」などと指摘された方がおられたら、病院に行く前に5ヵ月間インターバル速歩をやってみてはいかがでしょうか。
もしかすると30%の確率でそれらの症状がなくなるのではないかと考えられるからです。
2.「気分障害」の改善
インターバル速歩は、身体特性の改善のほかに心理的効果ももたらします。
「うつ自己評価尺度(CES-D)」と呼ばれるアンケート調査を松本市の700人余りの中高年者を対象に、インターバル速歩を始める前と後で比較した実験結果があります。
この1週間のあなたの体や心の状態についてお聞きします。下の20の文章を読んでください。
今、あなたはこれらのことがらについて1週間のうちどの程度感じていますか?
当てはまる日数の点数を「点数欄」に記入してください。
CES-Dは「まったくないか1日」を0点、「2日」を1点、「3~4日」を2点、「5日以上」を3点とし、20項目の合計点数を算出します。
合計点数が16点以上であれば何らかのうつ傾向が見られると判定されます。
トレーニング前は20%あまりの方が15点以上で、中には40点、50点近くになった方もいました。
とくに、「不眠」を訴える方が多かったのですが、インターバル速歩を5ヵ月間すると、15点以上の方もほぼ正常レベルまで回復することができたそうです。
インターバル速歩によるうつ症状改善のメカニズムには、ミトコンドリア機能改善による最高酸素消費量の増加にあると考えられます。
この効果の一つに、血中の脳由来神経栄養因子が増加することが考えられ、それが脳の海馬、大脳皮質、大脳基底核という記憶、思考、不随意運動をつかさどる部位の神経細胞を活性化すると考えられているのです。
また、インターバル速歩を1日の決められた時刻に行うことで生活リズムが整えられ、継続的な睡眠効率の改善につながったとみることもできます。
3.「認知機能」の改善
インターバル速歩は認知機能にも良い影響を与えます。
最近、インターバル速歩を導入し、市をあげてその普及に尽力していただいている秋田県由利本荘市の65歳以上の中高年者を対象に検証しました。
本研究に応募していただいた市民200名を、対照群とインターバル速歩群とに100名ずつに分け、5ヵ月間の調査を行いました。
その結果、5ヵ月後に、インターバル速歩群で最高酸素消費量が3%、認知機能が4%向上したのに比べ、対照群ではそれぞれ最高酸素消費量は2%、認知機能は7%低下しました。
また、それぞれの群で約20%が事前に軽度認知障害(MCI)と判定されていましたが、彼らに絞って解析すると、インターバル速歩群では最高酸素消費量が6%、認知機能が34%とそれぞれ有意に改善したのに比べ、対照群では、最高酸素消費量0.4%、認知機能12%低下し、トレーニング前に比べ優位な改善を認めることができませんでした。
これらの結果は、加齢による認知機能の低下の主な原因が体力(最高酸素消費量)であることを示しています。
インターバル速歩をやってみようとしている人やより効果を出したいとう人からいただく質問を抜粋してご紹介します。
Q:1日30分の連続時間が取れない場合は、どうすればいいですか?
A:インターバル速歩は30分連続して実施する必要はありません。
たとえば、朝10分、昼10分、夕方(夜)10分とバラバラに実施しても効果はあります。
また、早歩き、ゆっくり歩きを3分間隔で繰り返さなくても、たとえば、2分間隔、5分間隔と自分の体力に合ったやり方を見つけるのもいいでしょう。
要するに、早歩きの1日の合計が15分になればよいのです。
Q:1週間4日はなかなか時間が取れない場合は、どうしたらいいですか?
A:平日が忙しくて時間が取れない人は、週末にまとめて実施しても問題ありません。
たとえば、土曜日早歩き30分、日曜日早歩き30分といった具合です。
要するに、1週間の早歩きの合計が60分以上になればよいのです。
Q:インターバル速歩中に、体調を崩すなど事故はないですか?
A:なんらかの基礎疾患を持っている方がインターバル速歩を開始する際には、先にかかりつけ医に相談することをおすすめします。
これまで7300人の中高年者を対象にインターバル速歩を処方してきましたが、心筋梗塞などの事故はゼロです。
その理由は、途中にゆっくり歩きが入るので、その間、本人がその日の体調を客観的に診断できるから、と考えています。
ジョギングなどではランナーズハイのような高揚感を感じたり、誰かと一緒だと「遅れまい」といった気持ちになったりして、どうしても無理をしてしまいがちになります。
一方で、インターバル速歩にはそれがないので、その日の自分の体調と相談しながらできると考えています。
まとめ
運動を続けていくハードルはけっこう高いですが、インターバル速歩なら手軽に、すぐにでも始められます。
これなら無理なく続けられそうだ、と思った方は今日からさっそく実践してみてはいかがでしょうか。
毎日の積み重ねが、あなたを健康へと導きますよ。