それは定年までは雇用をもって生活を維持し、その後年金に基づく新たな生活に入るというビジョンが成立していたから可能であったことです。
しかし昨今は定年制度そのものを廃止する会社もでてきており、定年後もその会社に勤め続けたり、別の新たな仕事を見つけて転職したりと、定年後に年金だけで生活する生活は考えにくくなっています。
今回は、会社の定年後再雇用制度について考えてみたいとと思います。
定年後の「再雇用制度」は、会社で決められた定年を迎えても本人の意思があれば、新たに雇用契約を結んで働き続けられる制度です。
2021年4月1日から改正法が施行され、定年年齢を65歳以上70歳未満としている会社には70歳までの再雇用制度の導入など、就業機会を確保する努力義務が課せられました。
改正法が施行される前からすでに60歳以上65歳までの再雇用制度の導入など就業機会の確保が義務付けられています。
高年齢者雇用安定法により、65歳までは就労の機会を与えることが義務付けられているため、60歳定年制の会社では、通常は5年間、有期雇用契約での再雇用をすることになります。
なお、会社によっては再雇用制度ではなく、勤務延長制度や定年の引き上げ、定年制の廃止など別の方法で就業機会を確保しているケースもあります。
勤務延長制度では、定年になっても退職扱いにはせず雇用を続けるため、賃金をはじめ職務内容が大きく変わることはありませんが、再雇用制度では、従業員をいったん退職扱いにして退職金を支払った後、新しい雇用契約を交わしなおすため、従業員の雇用形態・労働条件が変更されるのが一般的です。
定年を65歳未満に定めていて、かつ、定年後再雇用制度を採用している会社が、定年後も働き続けたいと希望する従業員の再雇用を拒否するのは違法です。
もし、会社に定年後も働き続けたいという意思表示をしたのに「再雇用はしない」と言われたなら、メールなど文字が残る形でやり取りをしたうえで、労働基準監督署に相談しましょう。
または、労働問題に詳しい弁護士に相談するのも選択肢の一つです。
希望通りに定年後再雇用制度を使って働き続けていたとしても、会社が「来年以降の契約更新はしません」と言ってくるケースもあります。
もしも問題なく職務を遂行していたにもかかわらず会社側から雇い止めをほのめかされたら、労働基準監督署に相談しましょう。
客観的合理性または社会的相当性を欠く雇い止めと認められれば、違法・無効となります。
基本的に会社が定年後再雇用の拒否や雇い止めをすることはできませが、以下のような場合は、定年後再雇用の拒否・雇い止めが認められることもあります。
1.「健康上の理由で耐えられない」など、実は再雇用そのものを最初から本人が拒否していた場合
2.「部下から常習的なパワハラで訴えられていた」など適法に解雇できる事情がある場合
実際に認められるかどうかは個々の事例に照らし合わせて判断しないといけなせんが、自分が再雇用を希望する側であっても、人事担当者として再雇用ができるかの判断を行う側であっても、経緯をこまめに記録しておくなど、事後に確認できるようにしておきましょう。
まとめ
働きたいという意思があるなら、会社によって制度の違いはあるでしょうが、高齢になっても働き続けられる定年後再雇用制度などの方法があるかを確認しておきましょう。
また、会社から制度の利用を拒否されたとしても、自分に落ち度がなければ制度を利用できる可能性が高いので、「何かおかしい」と感じた時には、労働基準監督署や労働法に強い弁護士に相談するのをおすすめします。