それだけならよくある風景ですが、それだけにとどまらず、脅迫的に氷が無性に食べたくなる場合は要注意です。
その欲求には思いもよらない病気のサインが隠れていることがあるからです。
今回は、暑い夏に見落としがちな「氷食症」という病気についてご紹介します。
真夏に氷入りのドリンクを飲むのは美味しいですが、実は暑さと関係なく氷を食べるのをやめられない人がいます。
もしかするとその人は、「氷食症」かもしれません。
その定義ははっきりとしていませんが、2か月以上、毎日のように大量の氷を食べている場合は、氷食症を疑ったほうがいいでしょう。
氷食症は、本来食べるべきではないものを食べる、「異食症」のひとつと考えられています。
氷食症になる原因は、明確になっていませんが、鉄欠乏性貧血の患者さんに比較的高い確率でみ受けられます。
鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄分が不足した状態で生じる貧血のことです。
鉄分が不足すると、全身に酸素を運搬する赤血球中のヘモグロビンが十分に作られなくなり、その結果、全身の倦怠感や耳鳴り、めまい、頭痛などの症状が現れます。
鉄不足は、偏った食事などが原因だと考えがちですが、実は思わぬ病気が隠れていることがあるので注意が必要です。
例えば、鉄を喪失する病気には次のようなものがあります。
・子宮筋腫や子宮がんなどの婦人科疾患
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)
・胃がんや大腸がんなどの消化管出血を起こす疾患
ほかにも、造血機能が低下する病気など、原因はさまざま考えられます。
氷の食べすぎに心当たりがある人は、病院で相談してみるといいでしょう。
また、「子どもが氷をかじりたがって困る」と悩む親もいるそうです。
鉄欠乏性貧血は、妊娠や授乳期などにも起こるため、大人の女性がなりやすいイメージがありますが、思春期の女の子にも多くみられます。
月経がはじまり、出血のために貧血になりやすい他、ダイエットや偏った食事などで、鉄分の摂取量が減って貧血になる場合もあります。
鉄は、神経発達に必要な栄養素であり、また、脳の成長にも多くの鉄分を必要とするため、鉄欠乏は成長期の子どもの発達や性格形成に影響を及ぼす可能性も示唆されています。
貧血の治療方法として、基本となるのは普段の食事です。
鉄を多く含む食物を多く摂取するようにしましょう。
ただ、鉄分だけを摂取しても、鉄分の吸収をよくするビタミンCを併せてとらないと意味がありません。
身体を作るタンパク質、脂質、糖質、ビタミン等、栄養のバランスがとれた食事をするように心がけることが大切です。
また、栄養をきちんと消化し効率良く吸収するためには、よく噛んで食べること。
暴飲暴食を避け、規則正しい生活を送りましょう。
氷食症の怖いところは、鉄欠乏性貧血が原因でなく、強い精神的ストレスや強迫観念により引き起こされる場合があることです。
ストレスを感じると、何度も同じ行動を繰り返さずにはいられないという強迫性障害により氷を食べ続けることがあります。
また、氷食症に加えて、拒食・過食といった行動が同時にみられることもあります。
氷食症を放っておくと、大量の氷をガリガリと噛んで食べ続けてしまうことで、歯に負担がかかり、歯の表面が徐々にすり減っていきます。
ほかにも、あごに過度な負担がかかり、痛みを感じたり、口が開きにくくなったりする顎関節症を引き起こすおそれがあります。
いずれにしても大きな病気が隠れているサインの可能性があるので、もしも自分自身や周囲の人に氷食症の疑いがあると感じた時は、できるだけ早めに病院を受診してもらうようにしましょう
まとめ
明かに自宅の製氷機の氷の減り具合が早い、また、家族の誰かがしょっちゅう氷を食べているなど、少しでもおかしいと感じたら氷食症であるかもしれません。
単に氷を食べるのが好きとか、暑いから食べるというのではなく、異常なほどに氷を食べるのは異食症という病気の1つです。
その定義はあいまいですが、製氷皿いっぱいの氷を1皿以上食べたり,強迫的異常行動としてみられる場合は、一度内科などの病院で診察を受けてみてください。