そういった集中力が日常的に切れてしまうことは誰にでもあるものです。
では、集中力を持続させるにはどうしたらいいのでしょうか。
今回は、集中力を途切れさせるさまざまな誘惑からフロー状態に入るための方法をご紹介します。
修行を極めた僧侶でも、煩悩が頭に浮かぶと言います。
座禅で精神を統一させて自分と向き合っているときに煩悩が浮かぶと、警策(きょうさく)という板状の棒で、パーンと打ってもらうことで気持ちを整えますが、ビジネスにおいて、上司に警策で打ってもらうわけにはいきません。
そこでご紹介したいのが、「パーキングロット」を使って気持ちを整える方法です。
「パーキングロット」とは、本来駐車場を意味する言葉ですが、別の意味として会議で議題とはズレていながらも、無視するにはもったいない意見が上がった際に、ホワイトボードに書き留めておくテクニックとしても使われます。
この手法を個人の作業に応用するのです。
ひとつの作業をしている時に、「あ、そうだ。あの会社にメールを送らなきゃ」など、集中力が途切れて、作業に関係ないことが頭をよぎることがあるでしょう。
その際、頭によぎったことを近くにある紙キレにメモに書き留めておくという方法です。
そうすることで、メールの文面をどうしようかな……などを頭によぎった続きで考えなくて済み、やっていた作業の集中力を途切れさせずに済むというわけです。
私自身そうなのですが、並行して複数のタスクを進めている場合、他のタスクのことがしょっちゅう頭をよぎってしまうと思います。
そういう方は、その都度、すぐにメモできるメモ帳やパソコン、携帯のスケジュール帳を開けておくとよいでしょう。
頭によぎった別のタスクにどうやって「ちょっとくらいなら」とタスクスイッチングをさせないかが、集中力をキープし続ける真価が問われるところなのです。
そもそも、煩悩を理性で封じ込めることは不可能です。
学習心理学によると、「遅延による価値割引」と呼ばれる心理効果によって、人間は「未来」より「今」の方により価値を感じる習性があるのです。
これは先のことであればあるほど、価値が目減りする心理のことです。
つまり、人間の本能的な習性として「後で、メールを返信する」より「今、メールを返信すること」の方が価値があるように感じてしまう、というわけです。
この習性を利用して、「今、メモ(パーキングロット)しておく」ことを価値ある選択にすればよいわけです。
人間がは1日に何回、食事に関する判断をしていると思いますか。
何を食べる?いつ食べる?どこで食べる?など多くても数十回くらい……と思うかもしれませんが、コーネル大学の研究者によると、毎日226.7回の判断をしていると言います。
何を食べる?
どの皿で?
どのくらいの量を?
ナイフは使う?
フォークは?
スプーンは?
テーブルへの置き方は?
など、気付かない無意識の判断を常に繰り返しているのです。
さらに、ケンブリッジ大学の研究では、大人は毎日約35,000回の判断をしているというのですから、脳がどれほどがんばってくれているかがわかります。
脳がものすごく頑張ってくれているということは、すなわち、これらの無意識の「判断」の繰り返しが、脳を疲れさせている事実もあるということです。
フロリダ州立大学のロイ・バウマイスター博士の「意志力」の説にその答えがあります。
・「意志力」は、判断をするほどに低下する。
・なぜなら、判断をするほどに「判断疲れ」を起こすから。
・ゆえに、「意志力」を温存するのであれば、判断の回数を減らすべき。
つまり、意志力は使えば使うほど消耗するというわけです。
なので、集中力を維持したいなら、日常生活においても「判断の回数」をできるだけ減らすことが大切なのです。
スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグが、いつも同じ色のTシャツを着ていたのも、毎日着る服の判断をすることを避けるためです。
まずは、「判断」の回数を減らすことにこだわり、その上で、あなたなりの「いつも同じ」をつくればOKです。
ただ「いつも同じ」には、個人の価値観やライフスタイルがおおいに反映されため、あなたの価値観、ライフスタイルに合わせた「いつも同じ」の法則を考えてみるのがオススメです。
「ラムネ」を食べたら、集中力が回復する、という話を聞いたことはありませんか。
「ラムネ」はブドウ糖でできており、その糖の作用によって集中力が回復する効果があります。
低血糖な状態のままでいると、集中力は低下します。
糖質オフのダイエットを行ったことで、思考力の低下を感じ、何もする気がしなくなったという経験を語る方は多くおられますが、集中力を高めたい時は、ほんの少しの糖を体に入れるだけで効果があります。
ラムネでなくてもブドウ糖を含むブドウやバナナを少量食べると効果があります。
フロリダ州立大学の心理学者、マシュー・ゲイリオットの次の研究によれば、グループをレモネード(ブドウ糖入り)を飲むグループ(Aグループ)とレモネード(甘味料入り)を飲むグループ(Bグループ)に分けて「自己コントロール力」の実験を数回行いました。
すると、Bの甘味料入りのグループは、2回目の実験でのスコアが悪化しました。
調べたところ、1回目の実験でエネルギーを消耗して血糖値が下がっていたことが判明。
そこで、今度は血糖値を上げるべく、自己コントロール力が低下してしまったBグループに、ブドウ糖入りのレモネードを飲んでもらいました。
すると、自己コントロール力の回復が見られたのです。
これは、血糖値の絶対値ではなく、血糖値が“増えているのか”“減っているのか”という変化の方向が、自己コントロール力に影響を与えるということです。
要するに、糖をたくさん摂取する必要はなく、ブドウ糖を含んだものを「少し」口にすれば、集中力が上がるというわけです。
お腹がすいている時には集中できないという経験のある方も多いでしょう。
空腹時は、血糖値が下がっている状態です。
そういう時には、ナッツ類やチーズを摂取するだけでも集中力は回復すると言われています。
まとめ
誘惑に打ち勝ち、無理やりに集中し続けようと頑張れるほど強くはないのです。
すぐによそ見してしまう自分の煩悩と闘いながら、今回ご紹介した「パーキングロット」、「いつも同じ」をつくる、「少量のブドウ糖」という方法を上手に使いながら、賢く集中力を維持して誘惑に勝ちましょう。