人は怒りの言葉を口にすると、それをきっかけとして怒りの感情が暴走を始めます。
その結果、感情がエスカレートしてしまうことがよくあります。
悲しみも同様で、なんとなく気分が落ち込んでいるときに観たテレビが悲しいドラマだった場合、それを観ているうちに涙があふれてくることはありませんか。
一旦涙がこぼれだしたら止まらなくなり、声をあげて泣いてしまうような経験を一度は誰もが経験をしているのではないでしょうか。
このように脳の働きによって、実際には経験していないことでも、あたかも実際に起きた出来事と同じような気分が生成されます。
今回はこの脳の働きを利用して、言葉の持つ「力」をつかって人生を良い方向に変えていくポイントをご紹介します。
脳の原理から導くと、喜怒哀楽といった自分の感情は脳がつくり出していると言えます。
人間の脳は複雑なようでいて、実はとても単純で、ちょっとしたことで騙されてしまうという特性があります。
例えば、特別何かいいことがあったわけでなくてもニコニコ笑顔でいれば、次第に気分が上向き、楽しくなってきます。
これは、つくり笑顔でも同じです。
つくり笑いを浮かべていると、「自分は今、とても幸せなのだ」と脳が錯覚し、何かいいことがあったかのように、ウキウキ気分を醸成してくれることがあります。
この現象はアメリカの心理学者トムキンスが提唱した「顔面フィードバック仮説」に基づくもので、顔の表情筋が刺激されると脳にフィードバックされ、感情が生まれるという仮説です。
つまり、感情は「表情をつくる」ことで変えられるということになります。
脳がいかに騙されやすいかは、科学的にも検証された事実なのです。
さて、この騙されやすい脳は、脳科学をベースに編み出された口癖を言うことで、その口癖通りに騙されてくれるのです。
その定理をご紹介します。
定理1.言葉を使って、脳を騙す
たとえば、「梅干し」や「レモン」が目の前になくても、酸っぱいものの言葉を繰り返し唱えてみると、白然と唾液が分泌されるのを経験したことはありませんか。
その現象こそ、まさに脳を騙すことで起きている反応なのです。
その結果、脳と体は密接につながっているため、脳内に生じた化学反応は、頭で描いた状態に、そのままダイレクトに体に反映されます。
定理2.脳は主語や時間の流れが理解できない
唾液が分泌されるのは、私たちの体の全身の調整機能を司っている「自律神経系」の反応によるものです。
この自律神経系は、食べたものの消化など、生きていく上で欠かせない生化学反応を司っていて、この自律神経系をコントロールしているのが、脳なのです。
自律神経系を制御している脳の部位は、想像上の出来事と現実を区別しませんし、過去・現在・未来といった時間の流れも、さらには「私が」「あなたが」「彼が」「彼女が」という「主語」の違いまでも、脳は理解できません。
たとえばみなさんが、以前に起きた「頭にくること」を思い出したとしても、脳は過去の出来事に反応してしまい、自分が犯した行為でなくても、どんどん自分を不機嫌にさせてしまいます。
定理3.「いい言葉」を使い感謝する
これらを活用して「快の状態=何かを大好きでたまらない状態」をつくり出し、願望を実現させる最後の定理3.に関しては、つまり、「頭にきた!」といつも口にしていれば、脳は怒りの感情を増幅させ、ひいては血圧や脈拍にも変化を起こし、やがては体調まで悪化さるということです。
それは自分のつぶやく言葉が脳に影響を与えているからなのです。
悲しい場面を見聞きしたり、自分で語ったりしても、悲しくなって涙があふれ、やがては食欲が低下し、仕事の意欲まで失うというように、悪しき変化を招いてしまうことにもなってくるでしょう。
辛い…、キツい…などと言えば言うほど、つらい状況から抜け出せなくなるのも、そうした言葉を発していることが原因です。
しかし逆に考えれば、近い将来自分が望むことが起きるに違いないと本気で考え、言葉に出して語ると、驚くべきことに、脳にとってその願望はもはやファンタジーではなくリアルな出来事になっていきます。
まさに、今ここで望んだ出来事が起きているかのように脳に伝えることで、全身に力がみなぎり始めるのです。
つまり、思考パターンを変えることにより、行動パターンまでも変えてしまうということです。
「口ぐせ理論」は、そうした脳と体の関連性に着目して編み出された成功メソッドで、脳科学と運動生理学を基礎にした、成功哲学であるとも言えるでしょう。
「言葉の力」というものは、一般的に考えられている以上に大きく、それゆえに言葉一つで人生がガラリと変わります。
「言葉の力」によって好転もしますし、もちろん逆だってありえます。
「言葉の力はとてつもなく絶大だ」ということを知ることが大切なのです。
人と会話をする際に、十分に注意を払って言葉を使っているでしょうか?
おそらく、目上の人には敬語を使い、気のおけない友人と話をするときは、くだけた調子になることもあるでしょう。
相手が誰であれ、人を不快にさせたりトラブルの元になったりするような言い方は努めて避けていると思います。
しかし、それだけではまだ完璧とは言えないのです。
たとえば、振り返ってあなたは自分のためにどれ程注意を払って言葉を使っていると思いますか。
言葉に関して、最優先に意識すべきことは、ご自身に対する言葉の使い方なのです。
例えば、あなたがAさんと二人でいるときに、Bさんの悪口を言ったとします。
「Bってヤツは、嫌なヤツだ。仕事はできないし性格も悪い。みんなに嫌われるのも無理はない。そのせいか、しょっちゅうイジけてるし、年齢のわりに老けて見える」と。
こう言われて、一番気分を害すのは誰でしょう。
さらに、言葉の影響を受けて、実際に人から嫌われ、イジけて老け込んでしまうのは誰でしょう。
実は陰口の対象となったBさん、陰口を聞かされたAさん、この二人には、なんの影響もありません。
言葉の影響を受けるのは、その言葉を口にした人であるあなた自身なのです。
人の悪口を言ってストレスが解消されると思ったら大間違いで、むしろ気分は鬱々となるのです。
なぜそうなってしまうのか。
すでにご説明した通り、脳は、主語を一切理解しないため、他人についての話題であっても、言葉にした途端、自分のことだと解釈してしまうからです。
また、脳には、ウソや冗談が通じません。
どんな言葉も真に受け、その内容のよし悪しにかかわらず、必ず体に反応するよう命令を下します。
あなたが言ったBさんに対する「嫌なヤツ」「仕事ができない」「性格が悪い」「嫌われている」「イジけている」「年齢のわりに老けている」という悪口は、脳にとっては「自分もこうなんだ」と理解し、体に命令をして忠実に表現、つまりその状態の実現に向けて働き始める、というわけなのです。
自分の事はもちろん、誰の事であっても、けなしたり貶めたりするような言葉は口にしないことが賢明なのです。
まとめ
この事実を踏まえて、悪口よりもほめ言葉を積極的に使うようにしましょう。
「彼は仕事ができる」「性格もいい」「みんなに好かれている」と誰かをほめるときは積極的に口に出す。
すると、ほめられた人もほめた人も得をします。
その場に相手がいるのであれば、その人との人間関係もよくなるでしょう。
もし自分が「こうなりたい」というイメージを持ち、積極的に口にしていけば、なりたい自分にどんどん近づいていけと言うことです。
ネガティブな考えが浮かんだとき、例えば「こんなこといつまでもしていちゃだめだ」と思ったら、そのまま言葉にするのではなく「やり方を変えれば、もっと簡単に出来る」と口にすればよいのです。
そうすることで、言葉の閉塞感にとらわれることなく、自由で開放的な発想に転換できると思います。