一人ひとりのWell-beingにつながるライフスタイルをデザインしていくために、今回は、私たち人間の持っているネガティブ思考を紐解く「3つのP」についてご紹介したいと思います。
現代社会においては、職場でもプライベートでもストレスがつきものです。
自分ではどうしようもないことを過度に経験するとストレスが溜まります。
その溜まったストレスを軽減できる方法があります。
それは自分の考え方のくせを知り、微調整することです。
マーティン・セリグマン博士がおこなった、学習性無力感の研究から着想を得て提唱されている「3つのP」をご紹介します。
これは、私たちが抱くネガティブ思考を3つに分解した頭文字です。
1.個人化=Personalization
「どうせ私なんか~だから」のように、必要以上に自分のせいにしていませんか。
例えば、クライアントとの約束が急になくなったとします。
ある人は「何か急な予定でも入ったのだろう」と考えますが、個人化しやすい人は「きっと、私なんかに時間を割きたくないのかも」と思ってしまう、といった場合です。
2.普遍化=Pervasiveness
「一事が万事」という言葉があります。
一度起きた自分にとってよくないことを、他の事にも広げ、普遍的に捉えてしまっていませんか。
例えば、お付き合いしていた女性とうまくいかずお別れした男性が、「自分は魅力がないんだ。きっとほかの女性とだって、うまくいくはずないんだ。
なんなら仕事だってうまくいかないかもしれない…」などと、他のことにも広げてマイナス方向にとらえてしまうことです。
3.永続化=Permanence
一度起きたネガティブな出来事が、ずっと続いてしまう、と考えることを指します。
例えば、なにか仕事で失敗した際、「自分はいつまで経っても仕事ができないダメな人間なんだ。
きっとこれから努力したって永遠にできるようにはならない。」といった感じです。
この3つのPは、私たちのこころが重くなる考え方です。
ということは、この3つそれぞれを、反対のベクトルに向けると、こころが軽くなるということになりませんか。
1.個人化は非個人化へ
「必ずしも自分のせいじゃない」
何でもかんでも「私のせいだ…」なんて思わずに「多かれ少なかれみんなそうかもしれないじゃない」に変えてみる。
2.普遍化は特定化へ
「今回は不運にもそうだったけど他にだいじょうぶなことはある」
「結局なんでもそう…」ってブルーになるところを「今回はたまたま運が悪かっただけ」と信じましょう。
3.永続化は一時的へ
「今は耐え時。前を向いていればいつか笑える日が来る」
「どうせこれからも続く…」なんて言わずに「次こそはいける!」と声に出して言ってみましょう。
私たちは1日に何万回と思考しますから、まずは意識化できると練習のチャンスはたくさんあります。
まずは日ごろから、仕事や生活の中で、こころが軽くなる考え方を意識して、すこしずつ実践していきましょう。
他にも遺伝子的にも文化的にも生真面目である日本人がしがちな考え方として、以下のような特徴があります。
自分への関連づけ:自分に関係のないことまで自分の個人的責任だと判断してしまう
根拠のない推論:具体的な根拠がないまま結論を急ぎ、否定的に推測する
完璧主義:デジタル思考、白黒思考。白黒、〇か×かをはっきりさせないと気が済まない
選択的な注目:自分に関係のある特定の部分だけが気になり、抽象的に結論づけること
過大評価&過小評価:欠点を実際より過大に評価する一方で、長所は逆に過小評価する
感情による判断:客観的事実よりも、自分の感情から状況を判断する
誰もがやってしまいがちな考え方です。
「最近、なんか疲れていてネガティブ思考寄りだなぁ」と感じる方がいらしたら、ぜひとも振り返って確認するようにしてください。
「思考」がなぜこころを軽くするのに重要なのかというと、「思考」は私たちの「気分」に直結しているからです。
私たちは毎日、たくさんの出来事に遭遇しますが、そのたびに、
出来事⇒思考⇒気分⇒行動
という流れを繰り返しています。
たとえば、
・(出来事)上司に「最近、仕事がんばってるね」と言われた⇒
・(思考)「さらなる作業が振ってくるのではないか?」⇒
・(気分)「不安、猜疑心」
・(行動)⇒「がんばってる風は見せない。上司と目を合わせない」
といったかんじです。
いいか悪いかは別として、ある出来事が、自分の考えを通して、気分や行動につながっていく経路がおわかりいただけると思います。
この中で、起こる「出来事」や湧き出る「気分」は変えづらいですが、「思考」や「行動」を変えることは比較的簡単です。
先ほどの例、同じ出来事が別の方に起きたとしましょう。
・(出来事)上司に「最近、仕事がんばってるね」と言われた⇒
・(思考)「上司にねぎらってもらえた。期待してもらえている」⇒
・(気分) 「嬉しい」
・(行動)⇒「今日は家族にケーキでも買って帰ろう」
同じ出来事でも、考え方の違いによって、気分や行動がまるっきり変わってくるということです。
まとめ
だから皆、多かれ少なかれ出来事をネガティブにとらえてしまいがちなのです。
ネガティブ思考がだめ、というわけではありませんが、ただそれが続くと、自分にとって苦しい状態が続きます。
いつもこころが重くなる思考をしているとそれがくせになってしまい、その思考が気分や行動に影響を及ぼすからです。
こころと体は繋がっていて、ブルーなきもちによって、お腹が痛くなったり、眠れなくなったりすることもあります。
もしも最近、「ブルーになりがちでちょっと苦しいな」と思われていたら、ぜひ、3つのPでアプローチを試みてください。