見込み顧客に電話をかけて商談の約束をする営業手法、通称テレアポ。
渡瀬謙氏は、「営業の電話をかけるときは『お世話になります』『お忙しいところすみません』を絶対に使ってはいけない。」と言います。
今回は、元リクルート全国トップ営業の渡瀬謙氏著書『静かな営業』より、テレアポが取れる核心部分についてご紹介します。
営業テクニックのひとつ、まずは「自己紹介」です。
あなたは自己紹介が得意ですか? というよりも好きですか?
自分の順番が来る前にどんな風に自分自身を紹介するのかを考えなければならないので、他人が自己紹介をしていても話なんて耳に入ってはきませんし、聞いている余裕もありません。
そして実際に自分の順番になると、頭が真っ白になって自分の名前を言うので精いっぱいとなり汗だくになって着席する。
こういうことを繰り返してしまうのではないでしょうか。
振り返ってみれば、自己紹介する場面は年に何回もあるのですから、何を言うかをあらかじめ考えておけばよいのです。
そしてまさに、「準備しておく」ことで大きな効果が得られるのが、営業における自己紹介です。
実際、自己紹介を変えるだけで仕事がバンバン入ってくるというのは、本当にある話です。
ビジネスで初対面の相手と接する際、あなたはまず、何を言いますか?
多くの方は、まず社名と名前を言うと思います。
そしてそのまま「本日はお時間いただきありがとうございます」などと言って、いきなり商談に入る方が多いのではないでしょうか。
しかし、社名や自分の名前を言うだけで、商品が売れるでしょうか?
まず売れませんし、興味すら持たれないと思います。
ということは、社名やあなたの名前は営業的には価値が低いということになります。
とはいうものの、いきなり趣味の話を始めても、相手はいぶかしがるだけでしょう。
そもそも、「静かな人」や「控えめな人」にとって、趣味の話をスラスラと話すなんてできるはずがありません。
だからこそ、事前に準備して、短い言葉で最も営業的な価値の高い自己紹介をすべきなのです。
下準備をすることで、自己紹介は苦手なものから、強力な営業活動に変わります。
売れる自己紹介のポイントは2つあります。
それは「誰に」「何を」を伝えることです。
例えばあなたが、仕事紹介のビジネスをしているとしましょう。
初対面の相手に「仕事紹介業をやっているA社の〇〇です」と自己紹介したとしても、相手は「ふーん」で終わることでしょう。
しかし、例えば、
「子育て中のお母さんに自宅で気軽にできる仕事を紹介しています」
と言ったら、どうでしょうか。
自分が子育て中の人はもちろん、自分の会社にそういう社員がいる管理職も「もう少し詳しく話を聞かせて」となるのではないでしょうか。
どんな商品やサービスでも、ターゲットに対してなんらかの価値を提供しています。
その価値に対してお客さまはお金を払うというのが経済の仕組みです。
それを「誰に」「何を」というかたちで、自己紹介として提案すべきなのです。
よく異業種交流会と呼ばれる場がありますが、そこに人脈を広げるために参加するのであれば、まず自己紹介を徹底的に磨き上げましょう。
こうした異業種交流会において、おそらくほとんどの人は手当たり次第に近くにいる人をつかまえては名刺交換をし、「何かありましたらよろしくお願いします」と言って終わりになるのではないでしょうか。
そして、その後実際に「何かあった」と連絡を受ける人が、どれだけいると思いますか?
こういう場においては、名刺の数を撒くよりも、少数の人に短い言葉で印象に残るようなアプローチをすべきなのです。
例えば、
・猫専門の訪問型ペットシッターです。
・ソロキャンプに興味がある人専門の楽しみ方教室をやっています。
・企業の社長だけを相手にしたメンタルコーチをやっています。
といった言葉なら、少なくとも相手の印象には残るはずです。
これらはすべて、「誰に」「何を」で構成されているからです。
「ペットシッターです」より「猫専門のペットシッターです」と、ポイントはできるだけ絞り込みます。
「あれも、これもやっています」では、印象に残りにくくなります。
あなたのやっていることの中でも最も尖っていること、具体的に「誰に」「何を」しているかがわかりやすいものを、自己紹介に盛り込むのです。
ポイントを絞り込むと、刺さらない人にはまったく刺さりませんが、刺さる人にはより深く刺さるようになります。
それでいいのです。
ペットを飼っていない人に「猫専門のペットシッター」と自己紹介されてもまったく興味が湧かないでしょうが、もしもそれを横で聞いていた猫好きの人がいたら、相手から声をかけてくる可能性は高くなります。
自ら追いかけて説明してまわるよりも、はるかに効率的に自分が会うべき人と出会うチャンスができるのです。
自分から積極的に押すのが苦手な人にとっては、この方法は極めて有効です。
参加者全員に自己紹介をして回る必要はありません。
シンプルな言葉で自分のターゲットだけに届けばいいのです。
あなたなりの自己紹介をぜひ考えてみてください。
そして、いろいろな場所で試してみるうちに相手の反応が明らかに変わるのが体感できるでしょう。
営業の中でも嫌いな作業の筆頭といえば、「テレアポ」でしょう。
ほとんど断られるために電話をしているような、ストレスがたまるわりには効果が出ない作業など、誰だってやりたくないはずです。
しかし、そんなことを言っていられない場合もあります。
効率良くアポが取れて、しかもストレスがかからないポイントを2つお教えします。
まず、ひとつ目は、第一声の問題。
「お世話になります」「お忙しいところすみません」を絶対に使わないこと。
ほぼすべての営業は、このセリフを当たり前のように使っています。
しかしこのセリフこそがアポが取れない元凶なのにです。
そもそもアポ取りの作業というのは、営業ではなくリサーチなのです。
電話で商品に興味を持って話を聞いてくれる人を探す作業なのです。
ところが、上のセリフを言った瞬間、相手に「この電話は営業だ」と思われてしまい、最初から警戒心を上げてしまいます。
すると、相手は電話をどう早く切るかを考えることになり、そのあとにどれだけ良いことを言ったとしても聞いてはくれません。
したがってアポも取れません。
使うべき言葉は「ちょっとおうかがいしますが」です。
ちょっとあなたにたずねたいことがあるのですがよろしいでしょうか、と切り出すことで、相手は警戒せずに聞いてくれます。
ふたつ目は、お願いよりも「リサーチ」を心掛けましょう。
会ってください、お時間ください……これもアポ取りでは禁止です。
そもそもどこの誰かもわからない相手のために、自分の貴重な時間を使おうなどとは誰も思いません。
たとえ暇だったとしてもです。
そこで、「そんな話なら聞いてもいいかな」と思ってもらえるようなセリフが必須なのです。
「あなたにとってメリットがあるかもしれない話があるのですが、お聞きになりたいですか?」
という内容を伝えるのがテレアポのキモです。
自分の商品がお客さまにどのようなメリットをもたらすのかを伝えることで初めて、お客さまは会うかどうかを検討します。
例えば、
「このサービスを使うことで○○万円の利益が出る可能性があります。ただ、利益が出ない会社もあります。御社ではどれくらい利益が出るかを、一度チェックしてみませんか?」
といったセリフです。
これをベースに各自で応用するのです。
そして相手が利益が出そうな良い感触を得たら、そこからが営業のスタートです。
まとめ
その結果、メリットがないと判断されれば断られるでしょうが、相手がメリットがあると感じた感触が得られれば、それに応じて営業を開始するという順番を踏むため営業効率は大幅にアップするはずです。
何よりも冷たく断られることがなくなります。