特に閉経後は、女性ホルモンの枯渇によってさらなる不調や病気に見舞われることになります。
女性の心と体は、一生を通じてホルモンの影響を強く受けているのです。
ひと昔前なら、更年期後の人生は比較的短い時間だったのですが、今では寿命が延び、閉経後の時間が長くなりました。
2022年厚生労働省の調査では、女性の平均寿命は87.09歳ですが、実は亡くなる人がいちばん多いのは93歳というデータもあります。
つまり、女性は閉経後40年近くも、女性ホルモンのない状態で過ごすことになるのです。今回は、年齢を重ねると抱えやすい不調やリスク、その治療・予防策についてご紹介したいと思います。
若い時には活発に出ている女性ホルモンのエストロゲンには、高血圧、高血糖、高コレステロールを抑える働きや、破骨細胞が骨を壊す働きを調節して骨強度を保つ作用があります。
なので、女性が閉経をするとこうしたエストロゲンの恩恵を受けられなくなるため、動脈硬化や骨粗しょう症のリスクが上昇するのです。
エストロゲンは皮膚に弾力やうるおいを与えるコラーゲンの生成にも関わっているため、閉経すると肌や粘膜の乾燥・不快感、関節の不調につながることもあります。
特に気を付けたいのが「自律神経の乱れ」です。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、一日のあいだでオンとオフを切り替えて働いています。
このバランスが乱れると、頭痛や疲労感、めまい、冷え、むくみ、便秘・下痢、不眠などが起こります。
老化によって自律神経も働きが衰えるため、アフター更年期になるとこうした体調不良を長引かせる人が多くなるのです。
「年のせいだから、病院へ行くほどでもないし」、と体調の悪いまま我慢している方もおられるでしょう。
しかし、その陰に病気が隠れていることもあるので、更年期が終わったあとは定期的に健康診断やがん検診を受けることが大切なのです。
生活習慣病につながるような肥満は避けないといけませんが、女性ホルモンのエストロゲンは脂肪組織からも作らるので、筋肉量を維持するためにも、閉経後は多少ぽっちゃりしているぐらいが健康的だと言えます。
シニア女性の適正体重より低めだった人が、食事に気をつけ、2~3kg体重を増やしただけで、「疲れやすい」「冷え」などの不調が改善し、元気になることもあるそうです。
更年期以降は骨も筋肉も減りやすくなり、サルコペニア(筋肉量の減少にともなう身体機能の低下)やフレイル(心身の虚弱)といった症状がでてきます。
特に痩せすぎの方は、これらの症状が進むと、要介護状態に陥る大きな原因になるので気をつけてください。
栄養バランスのとれた食事を心がけ、継続して軽い運動をしましょう。
規則正しい生活を心掛け、日中は活動的に過ごして質のよい睡眠をとることも大切です。
アフター更年期の不調の改善には、こうした毎日の養生が意外と効果を発揮するのです。ことも珍しくありません。
そして備えとして、自分の健康について日頃から相談できる「かかりつけ医」を見つけておくことも大切なことです。
高齢期に入ると急な体調の変化を感じることも珍しくありません。
定期的に診てもらい「元気な時の自分」を医師に知っておいてもらうと、病気にかかった時に発見してもらいやすいです。
どの病院にかかればいいのかわからないという方は、ご自身が不安に思う症状の専門医がいるところを選ぶといいでしょう。
老化にともなう症状や疾患の全体に詳しいのは「老年科専門医」です。
一般社団法人日本老年医学会のHPにある、『老年科専門医・老年科指導医一覧』で老年科専門医がいる医療機関を探すこともできますので参考にしてください。
1.頭痛
女性はエストロゲン減少の影響で、頭の片側がずきずき痛む片頭痛が起こりやすくなります。
また、肩こりや目の疲れ、精神的ストレスによって頭から首、肩にかけての筋肉が過度にこわばって起きる緊張性頭痛を併発することもあります。
目(緑内障)や鼻(副鼻腔炎)、歯の咬み合わせなども頭痛の原因になります。
【対策】
規則正しい生活、ストレッチなどの運動、ストレス対策である程度予防できます。
月に数回なら市販の鎮痛剤でも有効ですが、薬の使いすぎで頭痛が起こることもあるため頻繁に痛くなる時は、かかりつけ医や専門外来で相談をしましょう。
また普段とは違う強い痛みやどんどん強くなる痛みを感じた時は、重篤な脳血管障害(くも膜下出血や脳出血)の可能性があるので、すぐに医療機関(脳神経外科、脳神経内科)を受診してください。
2.疲労・倦怠感
仕事や家事など多くの役割を担っていると、「だるい」「疲れやすい」といった症状があっても我慢して後回しになりがちです。
アフター更年期になると、体力や気力が以前より衰えているのに無理をしてしまうため、それが疲労や倦怠感につながりやすくなります。
【対策】
貧血や甲状腺などの内分泌疾患、悪性腫瘍などが隠れている可能性もあるため、症状が続く場合は内科で相談をしましょう。
問題がなければ、食事や睡眠などの生活習慣の見直しを始めましょう。
筋肉をつくる源となるタンパク質、不足しがちなビタミンB1、B2、鉄やカルシウムも意識してとってください。
ウォーキングやスクワットなどの軽微な運動もおすすめです。
3.めまい
女性に多い症状で、
回転性…自分や周囲がぐるぐる回る
動揺性…身体が揺れる
頭位変換性…向きを変えると起こる
起立性低血圧…立ちくらみ
などがあります。
さらに年齢を重ねると、平衡感覚の衰えや筋力低下によるふらつき、転倒などの心配も出てきます。
【対策】
めまいはストレスや睡眠不足が原因で起こることも多く、入浴やマッサージで心身をリラックスさせることや、睡眠環境を整えてぐっすり眠ることが改善策になります。
めまいは貧血や脳や耳の病気が原因でも起こるので、症状がつらい場合は内科または耳鼻科を受診しましょう。
4.冷え
女性はもともと体熱をつくり出す筋肉が少ないことに加え、自律神経の乱れや血行不良も冷えを生じやすい原因になります。
足は冷えるのに顔はのぼせる「冷えのぼせ」や足のむくみをともなう冷え、冬にしもやけになるような手足の先の冷えもあります。
【対策】
頻繁に冷えを感じる場合は、筋肉のもとになるタンパク質や、エネルギー源となる糖質や脂質をとり、栄養不足や「痩せ」の解消を心がけましょう。
スクワットやウォーキングなど運動による血流改善も効果があります。
甲状腺疾患や、血流障害が原因のこともあるので、心配な場合は必要に応じて内科で相談してください。
5.むくみ
むくみは、体の細胞と細胞の間に余分な水分がたまった状態のことです。
座りっぱなし、立ちっぱなしの体勢が続き、下半身を動かさなかったり、下肢の筋肉量が減ったりすると、血流やリンパ液が滞ってむくみが生じます。
また塩分のとりすぎや、前項の「冷え」も、むくみの原因になります。
【対策】
ストレッチやウォーキング、入浴で血流を改善しましょう。
足を上げることや、着圧効果のあるソックスを履くことも効果があります。
食生活では減塩を意識し、塩分を排出する働きのあるカリウムや、血液循環をよくするビタミンEをとるよう心がけましょう。
対策をしてもなかなか改善されない場合は、心臓や腎臓の病気、内分泌疾患の疑いもあるので内科で相談することをおすすめします。
6.便秘・下痢
年齢を重ねると、消化機能が全体的に低下し、胸焼け、腹痛、消化不良、胃もたれ、腹部膨満感、下痢や便秘などの症状が多くなります。
自律神経の乱れも消化器の不調に影響するので気をつけましょう。
【対策】
規則正しい食生活を心がけ、乳酸菌を含む食品や食物繊維で腸内環境を整えるようにしましょう。
自分の歯でよく噛むために、歯科でのメンテナンスも定期的に忘れずに行ってください。
腹筋を鍛えてしっかりいきめるようにすることも便秘対策に効果があります。
前述した「冷え」対策や「自律神経」を整える方法も試してみてください。
内科(消化器内科、胃腸科)での相談、大腸がん検診も忘れずに。
まとめ
太り過ぎは良くないですが、少しぽっちゃりであるほうが体調管理はしやすくなるかもししれません。
加齢はさまざまな不調をもたらしてきます。
自分の時間を大切にしながら心を平らかに暮らせる生活環境を整えて、過眠や過食、オーバーワークや精神的なストレスはできる限り避けるようにしましょう。
単なる年のせいだと我慢していたら、病気が隠れていることもあります。
不調が長引いて心配な場合は、医療機関を受診して検査を受けましょう。