パフォーマンスを維持するには、最低でも6時間以上の睡眠時間をとり、さらにできるだけ「睡眠の質」を高めることが重要です。
今回はそのため気を付ける点や、睡眠の質を改善する方法についてご紹介したいと思います。
日本人の睡眠時間は先進国の中でも最低レベルとされ、質・量ともに改善が必要といわれています。
なぜ、睡眠不足になってしまうのでしょうか。
その原因にあるのは、仕事や家事、プライベートなど、時間に追われ多忙であるがゆえに、睡眠時間を削らなければならない状況が続いているからです。
現役世代での睡眠障害の主な症状は「昼間にくる眠気」です。
十分な睡眠はパフォーマンスを高め、健康を維持するためにも不可欠ですから、睡眠時間の確保は必須なのです。
とくに、50代の日本人女性は、公私ともに多忙で睡眠時間が削られやすく、世界で最も睡眠時間が短いといわれています。
加えて、閉経後の女性ホルモン低下や更年期障害から不眠傾向が強まりやすく、夜、眠りたくても眠れない人も増加します。
女性が社会でもっと活躍していきやすくするためにも、まずは睡眠時間の確保、眠りやすい環境を作っていくことが大前提になります。
睡眠不足になると昼間の眠気だけでなく、生活習慣病や認知症、がん、うつ病、自殺などのリスク、さらには死亡率も高めます。
こうした状況から、国も睡眠の重要性を再認識し、2014年に「健康づくりのための睡眠指針」(厚生労働省)を発表しています。
20~59歳に適正な睡眠時間は6~9時間です。
平均睡眠時間が6時間未満だと、死亡率が高まるというデータもあります。
まずは最低でも、毎日6時間以上の睡眠をとるようにすることです。
2週間以上、熟睡できていないと感じたきは、医療機関を受診する目安だと思ってください。
また、この世代の安眠を妨げる大きな原因の一つとして、睡眠時に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」があります。
30~69歳の日本人の14%に当たる約940万人が中等症以上のSASと推定されています。
睡眠中にいびきや無呼吸、呼吸の乱れが生じるSASは睡眠の質を大きく低下させます。
SASの症状は、太っている人や首が太い男性に多くみられますが、顎(あご)が小さくてもなりやすく、やせた女性にも見受けられます。
さらに、加齢による舌や顎の筋肉の衰えや骨格、アレルギー性疾患、鼻中隔弯曲症、副鼻腔炎も関係しているとされています。
SASは自覚しにくいため、多くはベッドパートナーの指摘で気づくのだとか。
自分で確認したい場合は、睡眠の状況や質が記録できる「ポケモンスリープ」などのスマートフォンアプリ、スマートウォッチ、センサーのついた寝具などを活用してみましょう。
SASで問題となるのは、睡眠の質の低下だけでなく、糖尿病、高血圧、動脈硬化、不整脈、心不全などのリスクも増加させるという点です。
SASの治療は生活習慣病予防においてもプラスの影響が大きいので、まずはアプリなどを利用して自分がそうであるかどうかを確認してみてください。
SASの原因が肥満なのであれば、減量によって症状の改善が見込めます。
専用のマウスピースの装着や横向き姿勢での就寝も、気道が確保され、空気の通りが楽になるため、症状緩和に効果が期待できるとされています。
多忙な働き世代は、思うように睡眠時間を取れない日も多いのではないでしょうか。
限られた時間のなかで睡眠を得るためには、睡眠の「質」を高めることが大切です。
SASなど疾患の発見・治療をしたうえで、生活習慣、睡眠環境、嗜好品(しこうひん)のとり方を工夫することが、睡眠の質を高めるためには大切です。
ポイントは、
「朝起きて、太陽の光を浴びたあと、2時間以内に朝食をとる」
「日中は適度な運動をする」
「夜には明るい光を避ける」
の3つです。
朝の太陽を浴びるのが重要なのは、人間の身体には太陽光を浴びることで、夜の入眠を促す「メラトニン」というホルモンを脳内生成する仕組みがあるためです。
朝食を食べ、適度な運動をすることで身体が目覚め、睡眠と覚醒のリズムにメリハリが生まれます。
そして、夜にはできるだけリラックスするように心がけることです。
身体を活動モードにする「交感神経」を刺激するブルーライトなどの明るい光は避け、ストレッチやヨガ、歌詞のない音楽を低音量で流す、アロマをたくなど、自分にあったリラックス法を試してください。
「睡眠の質向上」が期待できるという機能性表示食品などもありますが、薬ではなく食品なので、その効果は限定的です。
頼り過ぎず、あくまでも補助的な使用に留めておくのが賢明です。
人のからだが最も眠りやすい状態は「体温が下がるとき」です。
その効果を得るために、夜の入浴にもコツがあります。
入浴することで体温が上がり、その後、下がることで眠りやすくなります。
40度の湯に20分入って、その1時間後に眠るのがちょうどいいタイミングです。
寝室の温度は冬で15度、春・秋で20度、夏は25度程度を目安に設定しましょう。
湿度は約60%が最適です。
真っ暗だったり静かすぎたりすると眠れない方は、照明の明るさを30ルクス程度に落とし、40デシベル以下(図書館レベルの音量)で数時間後に切れるようにタイマーセットして、音楽を流すといいでしょう。
反対に以下の8つの習慣は、睡眠の質を低下させてしまうので、注意が必要です。
【睡眠の質を下げる8つの悪習慣】
1.1時間以上の昼寝
2.午後3時以降の昼寝
3.夕食・晩酌後のウトウト
4.就寝前3~4時間以内の激しい運動
5.就寝前のカフェインの摂取
6.寝酒
7.休日の2時間以上の遅寝
8.就寝2時間前以内のブルーライト
昼寝はやり方次第で、睡眠の質を上げることにも下げることにもなります。
1.と2.の昼寝はかえって午後の眠気を増長させ、さらに夜の睡眠の質を低下させてしまいます。
一方で、15~30分の短時間の昼寝は、午後の眠気が軽減し、パフォーマンスが向上します。
横にならず、座って目を閉じるだけでも効果はあります。
カフェインは一日400mgまで(コーヒー換算700cc、マグカップで2杯程度)にとどめ、飲むのは夕方までにしましょう。
アルコールは飲んだ後に眠くなりますが、3時間くらいたてば覚醒するため、真夜中に目覚めてしまいやすくなります。
お酒を飲むのは夕飯の時間までにして、就寝前の「寝酒」はやめましょう。
睡眠リズムが2時間以上ずれると、時差ボケ状態になってしまいます。2時間以上の夜更かしは避け、休日でもできるだけ同じ時間に寝起きするようにしましょう。
快眠のためにさまざまな心がけをしていても、やむを得ず睡眠不足になる日もあるでしょう。
あくまで応急処置的な方法ですが、その日をなんとか乗り切りたいときに、夜の睡眠を妨げずに日中の眠気をとる方法をいくつかご紹介します。
まず、1時間ごとに身体を動かして交感神経を刺激しましょう。
とても強い眠気であれば15分程度の短い昼寝をとるのもリフレッシュ効果があります。
夕方前に眠気が来たら、100~200mg程度のカフェインを摂取するのも目を覚ますには効果的です。
まとめ
昼間の眠気を慢性的に感じている方も多いのではないでしょうか。
快適な睡眠を得て睡眠不足を解消するには、自分の生活習慣を振り返ってみることが大切です。
睡眠に悪い影響を与える習慣を避け、よい習慣を身につけて、毎日の快眠を目指しましょう。