体内時計の乱れと言えば、睡眠障害などを思い浮かべる方が多いでしょうが、それだけではなく筋肉の維持や老化の防止にも関係があるようです。
今回は、体内リズムが健康にもたらす影響について、ご紹介します。
人間の細胞の中には「概日リズム」や「サーカディアンリズム」と呼ばれる、細胞そのものが時間を認識する体内時計があります。
その体内時計は、睡眠と覚醒のサイクルを調節するという重要な役割を果たしますが、それ以外にも食事の分解やエネルギー吸収など、代謝に関する能力にも影響を与えています。
さらに、サーカディアンリズムは筋肉の量にも非常に影響があります。
筋肉の量は血糖値のコントロールや脂質のコントロールなど、代謝臓器としての役割があるとよく言われますが、その機能に細胞の中の時計が関与しているのです。
サーカディアンリズムは多くの遺伝子によってコントロールされており、その遺伝子が乱れると睡眠と覚醒のリズムも乱れて健康に影響を与えてしまいます。
例えば、夜勤をする人は睡眠障害が出やすく、身体的や心理的な健康異常、心血管系や代謝の異常、女性ホルモンの異常やガン、不安、抑鬱なども起こりやすいということが、過去の研究で報告されています。
サーカディアンリズムは太陽の光でリセットされるのですが、リズムは25時間周期と言われているので、24時間に合わせるために太陽の光を浴びて時計をリセットしなくてはいけません。 しかし、なかなかやらない人が多いのが実状です。
サーカディアンリズムは主に脳がコントロールをしていると考えられていますが、脳だけではなく、脳と筋肉がお互いに交信していることが、マウスを使った研究でわかっています。
目の奥にある視交叉上核(SCN)と呼ばれる核が、サーカディアンリズムをコントロールする脳の領域なのですが、このSCNの遺伝子をブロックするとサーカディアンリズムが狂ってしまうのです。
サーカディアンリズムの遺伝子がブロックされると、酸素消費量やエネルギー消費量、血糖値や脂質の代謝の異常なパターンが出てくることが報告されています。
さらに、そのまましばらく観察していくと、マウスの筋肉の量が徐々に減少し始めました。
そこで再びSCNの遺伝子を発現させて元に戻すと、それ以上筋肉は減少せず、筋肉を維持することができました。
要するに、筋肉の維持や早期の老化防止には、細胞の中の時計であるサーカディアンリズムをコントロールすることが非常に重要だということなのです。
人が年齢を重ね睡眠と覚醒のサイクルが乱れてくると、同時に「サルコペニア」と呼ばれる筋肉量の減少も起こります。
年齢を重ねると多くの人が、睡眠時間が短くなったり、朝は早く目覚め、夜は早く寝るといった感じになります。
マウスの実験でも、年齢を重ねるとSCNの遺伝子の発現が減少して、サーカディアンリズムが乱れやすくなることがわかっているので、人においても同じようなメカニズムがあることは容易に想像できます。
ただし、このマウスの実験では続きとして、「活動性が高いときに食事を与えて、活動性が緩いときには食事を与えない」という、食べる時間と食べない時間をしっかりと分ける食事制限を加えるとサーカディアンリズムが復活して、筋肉の機能低下を防ぐことができたということが報告されています。
人も食事が遅れたり夜間に食べたりすると、肥満や糖尿病、心臓病などになりやすいのですが、こういったときには体内時計も乱れています。
食事のタイミングが遅かったり食事の回数が多かったりすると太りやすくなり、特に20時以降にカロリーを摂ると体重が増えやすくなります。
どの時間帯に食事を取って制限するかということが重要ですが、朝型タイプの人はなるべく早い時間、夜型タイプの人はある程度遅くてもいいとは思います。
ただ、寝る直前にはならないようにすることと、なるべく活動的な時間帯に食事をすることが重要です。
まとめ
一度、現在の食事の時間帯と食べている時間全体を振り返り、自分に合ったタイミングを見つけて習慣化することで老化の予防につながるでしょう