日本人の平均寿命が伸び続けるなか、寿命が延びても健康なまま長生きできるとは限りません。
まだ治療方法が確立されていないアルツハイマー型の認知症は、加齢とともに誰もが罹りうる病気です。
親が認知症を発症してしまった場合、子どもや周囲の人たちはどのように接すればいいか悩むことも多いようです。
しかし、認知症の親を家族だけで抱えて介護するのは難しく、プロの手を借りることは必須です。
それでも家族として、その場その場で接する対応のしかたがあります。
今回は、その時々でどうすればよいかをご紹介したいと思います。




親が困った行動をしたら常識的な対応を


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認知症を発症して、簡単なことが徐々にできなくなっていく親を見ているのは、子どもの立場として本当につらいことです。




なんとか認知症にならないように予防したい、それでも認知症になったら、治したいし、できることなら進行をできるだけ遅らせたい、とほとんどの家族が思います。




よくありがちなのは、弱っていく親に「しっかりしてほしい」という感情をコントロールできなくなることです。


たとえば、母親が何十年と繰り返してきたみそ汁の作り方がわからなくなって、自分でも戸惑っている状況を前にして、「何やってんの!」と叱りつけてしまうのです。

一度感情が溢れると、続けざまに「まずい。いつもの味じゃない」「台所をちらかして汚い」などと、責める言葉が止まらなくなってしまいます。

そして、後になって自分の強い態度や親を責める言葉に後悔を繰り返し、ますます自己嫌悪に陥ります。




人間が感情を持っている以上、誰もがやりがちなことなのです。




そんなときは、「普通の接し方をする」ことを心がけてみましょう。




普段、目の前で困っている人がいれば、その人が他人だったら、あなたはどうするでしょうか。

責めるようなキツイ言葉は投げつけないはずです。




認知症を患う親への特別な接し方があるのではなく、あなたがわかっている普通の、常識的なかかわり方をすればいいのです。

さりげなく手伝って、一緒にみそ汁をつくり、一緒に食べ、あとで本人に気づかれないようにさりげなく片づけておく、それでいいのです。






親ができなくなったことを非難するのは「いじめ」


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認知症では知的な機能が障害され、比較的最近の記憶や今日が何月何日が、今何時か、いまいる場所はどこかなどといった見当識や判断力などがなくなり、これまでと同じようにはできなくなっていきます。

そういう人に向かって、「つくり方、忘れたの?」「きれいに片づけられないの?」などと言うのは、たとえば視力が低下した人に「赤信号でしょ、分からないの?」と言うようなものです。




できないことを指摘して非難するのは「いじめ」です。




もちろん、あなたにいじめている意識がないことは理解できます。

小さいころから見てきた父や母とは全く違ってしまった姿を見て、今まででどおりでいてほしい、こんな情けない姿は受け入れられないという思いで、ついつらく当たってしまう。

家族があきらめないで認知症を克服するという思いで、親子げんかと後悔が繰り返されるのです。




認知症でない親なら、親子げんかをしても、謝れば関係は回復できます。

しかし認知症の親は、何について叱られているのかがわからないので、叱られたときのイヤな気分、悲しい気持ちだけがいつまでも心に残ってしまいます。




そして、このときに湧いてきた漠然とした「敗北感」「屈辱感」「嫌悪感」などの精神活動は、なぜ叱られたかを理解するという知的活動の裏付けがないため、より不安感が増してしまいます。




その不安が強くなっていくと、徘徊したり、大声で怒鳴る、暴力をふるう、失禁などの問題行動につながるケースも少なくありません。

そして夜中に大声を出したり失禁したことなどに、またあなたが叱ったりすることで、問題行動がますます悪化するという悪循環に陥ってしまうのです。




認知症ケアは、認知症という病気は誰にでも起こりうる普通のこととして受け入れ、認知症の人に態度を改めてもらうのではなく、介護する側が変わるという考え方を基本に、認知症の人と共に前向きに生きるための生活の仕方を工夫することが大切です。

この点が、家族だけで認知症の高齢者の介護と向き合うのが難しい理由です。




親子という深い人間関係を築いてきた歴史があるため、いつまでも、今までどおりの親子関係を守りたいという思いが強く、認知症になったの親に対して優しくできなくなるのは当たり前です。




「今まで通りの接し方ではうまくいかない」ということを大前提としてスタートしましょう。

イライラしたり、感情的になったり、自分たちの生活や精神面が脅かされてきたと感じたら、行政のサービスを利用して、介護のプロに協力を求めてください。






効果的な接し方「関心をそらせる」

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日常のなかで、認知症の親と接していると、やり取りに困ることもいろいろとあります。




家族が最も悲しく感じる認知症のお年寄りにありがちな行動のひとつが、「お金がなくなった」「物を盗まれた」という被害妄想です。

自分の親に泥棒呼ばわりされて、悲しくやりきれない気持ちを抱くのは当たり前です。




子どもに対して「泥棒」という強い言葉を発した親に対して、子どもも怒りや悲しみにとらわれると、お互いが攻撃し合うような言動になってしまい、事態はさらに悪くなります。




そんなときは、悲しみや悔しい感情のままに親を責めるのではなく、「関心をそらせる」接し方をしてみてください。

本人は本当にお金がなくなったり、物が盗まれたと信じているわけです。

その本人の関心をそこからそらせ、あなた自身の関心もそらせます。




たとえば、次のように「そらして」みましょう。




「おとうさんはやっぱりお金のことはきちんとしている。一代で財産を築いたんだもんね。商売のこと、もう少し教えてください」。
この場合、おとうさんを「財産を築いた立派な人」として尊敬する態度で接します。




あるいは、「お金がなくなったなんて許せないね。おかあさんは間違ったことが大きらいだものね。その正義感、どうやったら持ち続けられる?」。
相手の「正しい姿勢」をほめて、教えを請う接し方にします。




こんなふうに会話することで、盗まれたという被害妄想が、おとうさん・おかあさんの生きてきた道、人生訓のようなものに入れ替わってくれるかもしれません。




プロの介護職の方は危険を伴わないかぎり、認知症の方のさまざまな行為、問題行動を止めることはしません。

行動を否定したり、直そうとしたりもしません。

そのままを受け入れ、そして行動の裏に隠れている「理由」を探り出し、それをできる限り解決して、改善に導きます。

なぜそれができるかというと、過去から積み上げた人間関係がないので、いまの目の前のそのままのお年寄りを受け入れられるからです。




これは身内にはできないことです。




しかし家族として一つひとつの場面での、よりよい接し方・対応のしかたは一緒に考えることができるので、どう対応してよいのかわからなくなったら遠慮せずに相談されるとよいでしょう。






まとめ

親が認知症になった時、一人や身内だけで抱え込まずに、地域包括支援センターやケアマネージャー、ヘルパーなど、さまざまな人との出会いをもって認知症ケアを続けることが大切です。
行政のサポートを受けつつ、ある程度の時間が過ぎたら、認知症の親を受け入れるようになったという場合が多いようです。
自分たち家族だけでがんばるのではなく、介護のプロの手を借りて、今のおかあさん、おとうさんの姿をそのまま受け入れられる日を目指してほしいと思います。

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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似顔絵は、「似顔絵メーカー」で作成しました。