ストレスを溜めないためには、良い意味で忘れっぽい人間になるのが良いようです。
他人を許すことができない人ほど、いつまでも頭の中でしつこく相手と対立したり文句を言ったりしています。
それがストレスになり、メンタルや身体の健康を損ないやすくしているのです。
今回は、内藤誼人著書『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本』よりストレスフリーな人の気持ちの切り替え方をご紹介します。
誰かからひどい仕打ちを受けても、比較的すぐに忘れてしまう人がいます。
少しは落ち込む時間があっても、思考の切り替えが早く「まあ、仕方ないか」とケロリと忘れてしまえるのです。
ストレスを感じにくい人になりたいのであれば、よい意味で「忘れっぽい人間」を目指すことです。
いつまでも根に持つのではなく、許せる人間になることで、自分のストレスもなくなるのです。
アメリカのアイオワ州にあるルーサー・カレッジのローレン・トゥーサンは、「恋人が浮気しているのに気づいた」「半年間、職探しをして結局見つからない」など、96パターンの状況において、ストレスの感じやすさと、人を許してあげる気持ちの強さを実験しました。
すると、ストレスを感じることと人を許す気持ちには、強い関連性があることがわかりました。
人を許すことができない人ほどストレスを感じやすく、メンタルの健康を損ないやすいことがわかったのです。
ひどいことをされたとき、「チクショウ、あの野郎!」などと、いつまでもぶつぶつ文句を言いながら根に持ち続ける人がいます。
こういう人は、ストレス反応もなかなか下がりません。
ずっと怒り続けているわけですから、血圧も上昇したまま、心拍数も高いまま、ストレスホルモンもずっと分泌されたままになってしまうのです。
たとえひどいことをされても、すぐに気分を切り替えるようにしましょう。
「起きたことは仕方がない」
「そんなこともある」
「誰でも、同じような経験をしている」
「今回は運が悪すぎた」
このように頭の中で考えれば、水に流すこともあまり難しくはありません。
嫌なことをしつこく頭の中で思い返すのをやめましょう。
頭の中で思い返し続けるから、いつまでもストレス反応がつづくのです。
物事に固執するというのは、よい場合もありますが、メンタルの健康という観点からすれば、あまりよいことではありません。
過ぎたことには固執しない人のほうがストレスを感じずにすみます。
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉があります。
お坊さんが嫌いな人は、お坊さんが着ている袈裟まで憎たらしく見えてしまう、ということです。
私たちは、嫌いな人に対しては実際以上に気に入らないと感じてしまう傾向があります。
話し方、食事の仕方、その人のつけている香水、その人の乗っている自動車など、すべてが気に食わないのです。
けれども、そんなふうに考えていたら、余計にストレスが溜まってしまいます。
ストレスを溜めないためには、ひどいことをされても、できる限り早く水に流したほうがいいように、嫌いな人のこともできるだけ大目に見るようにするのがポイントです。
アメリカにあるヴァンダービルト大学のアレクサンドラ・ベティスは、9歳~15歳の子どもたち70名に、家庭内でのストレスを減らす方法を教えました。
お母さんやお父さんに心無いことを言われたとき、「お母さんは“いつだって”文句ばっかりだ」と考えるのではなく、今日は「“たまたま”虫の居所が悪いだけ」というような考えをしたほうがいいですよ、と教えたのです。
すると、こういうトレーニングを受けることで、ストレスを大幅に減らせることがわかりました。
考え方をほんのちょっぴり変えるだけでも、ストレスはかなりの程度まで解消できるのです。
たとえ嫌いな人であっても、「いつだってあいつは……」と考えるのではなく、「今日はたまたま……」と大目に見られるようにすると、そんなに腹も立ちませんし、イライラして自分の血圧を上げるのもバカバカしくなります。
たとえば、若者のことを、あるいは、年配者のことを悪くとらえる人がいます。
たまたまチャラチャラした若者に不愉快な思いをしたとか、たまたまひとりの年配者に嫌がらせをされた、ということが原因で、「すべての若者(年配者)が嫌い」という方向に進んでしまうことが少なくありません。
こうなると、あらゆる若者(年配者)との付き合いでストレスを感じることになってしまいます。
そうならないためには、
「たまたまおかしな若者と会ってしまった」
「こういう怒りっぽい年配者がたまにいるんだよな」
と考えれば、ストレスも減らせるでしょう。
本当はやりたくないことを、「相手が気を悪くするのではないか」などと考えて、うまく断れない人がいます。
周りとの関係を気にする人当たりのいい人ほど、断りきれずに悩むのではないでしょうか。
本当はまっすぐ帰宅したいのに、上司や同僚から「飲みに行こう」と誘われると、どうしても断れないという人は、お金と時間がムダにしてしまった自分に対して、後になって不愉快な気分を抱えてしまいます。
もしこういう悩みを抱えているのなら、上手な拒絶法があります。
それは、あらかじめ拒絶のセリフを考えておき、拒絶する練習を自宅で何回もしておくことです。
そうすれば、仮にイヤな誘いを受けた場面でも、ロボットのようにそのセリフを口に出せるようになります。
俳優さんや女優さんになったつもりで、暗記したセリフを読み上げるだけなので、だれにでもできるのではないでしょうか。
アメリカにあるアラバマ大学のジョン・ロックマンは、ある学校の小学4年生と5年生に、タバコやアルコール、あるいはドラッグを友だちから勧められたとき、どうやって拒絶するのかを教えました。
友人や先輩から「タバコを吸っている人って、クールだよね」と言われたときには、「ちっともカッコよくなんてないよ、ただの依存症じゃないか」とすぐに切り返せるようにトレーニングしたのです。
トレーニングは1回40分~60分で、8回のセッションが行われました。
そしてセッションから1年後に、子どもたちがどれくらい非行に走るか、ドラッグに手を出すかを測定してみたところ、拒絶のトレーニングを受けた子どもたちほど上手に断ることができ、非行やドラッグに手を染めていないことがわかりました。
うまく断れない人は、断りのセリフをあらかじめ考えていないからうまくいかないのです。
「ええと、どう言って断ろうかな……」とその場その場で断りのセリフを考えようとするからできないのです。
自分がイヤなことをさらりと拒絶できる人は、頭の中にすでに拒絶のセリフやシナリオがしっかりと入っていて、ただそれを口に出しているだけなのです。
あらかじめ覚えているセリフなら、誰でもうまく言えます。
買い物をして、コンビニやスーパーのレジで店員さんから「袋をお付けしますか?」と聞かれて、「どうやって断ろう…」とまごつきますか?
おそらく瞬時に「いえ、けっこうです」と断ることができるのではないかと思います。
なぜうまく断れるのかというと、あらかじめ「袋はいらないので断る」ということが自分の中で決まっているからです。
ですから、「こういうケースでは、こんなふうに断ろう」ということをあらかじめ決めておき、自分なりのセリフを練習しておくことで、コンビニの袋を断るときと同じくらいストレスを感じずに拒絶できるはずです。
まとめ
自分自身のストレスを軽減するためには、いつまでもしつこく頭の中で恨み言や文句を繰り返すのではなく、「起きたことは仕方がない」とよい意味で忘れっぽい人間を目指すことがストレスフリーへの近道のようです。