それに伴って、認知症の発症リスクも高まるといわれており、平均寿命が延びるとともに認知症患者も増加することは間違いないでしょう。
今回は認知症予防のための基礎知識として、認知症患者が増加している背景をご紹介したいと思います。
超高齢社会がの進むなかで、「健康寿命」がクローズアップされています。
健康寿命とは、人が一人でも支障なく日常生活をおくることができる期間のことです。
厚生労働省「2019年国民生活基礎調査」によると、介護保険制度で要介護になった原因としては「認知症」が18%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」16.0%、「高齢による衰弱」「骨折・転倒」13%となっています。男女別に見ると男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が24.5%、女性は「認知症」が19.9%です。
認知症の患者数は2020年には約630万人、2025年には約730万人と右肩上がりに増加し続け、2060年には実に1100万人以上となり、高齢者の約3人に1人が認知症になるという予測もあります。
平均寿命は、医療技術の進歩や食生活の改善、福祉制度の充実などによって年々伸びていますが、それに比例して健康寿命でない方も確実に増えると予測されています。
2019年の女性の平均寿命は87.45歳でしたが、健康寿命は75.38歳で、亡くなるまでに健康でない状態が12.06年間続きます。
言い換えれば、何かしら誰かのサポートやケアを受けなければ一人では生活できない期間が、約12年もあるということなのです。
長生きをしたいという希望には、健康な状態を保ちながらというプラスαがセットであることを思えば、それをどれだけ長く維持できるかが課題と言えます。
認知症は高齢者の病気で、高齢になるほど発生数が増えると考えられがちです。
しかし5歳きざみで年齢層別に認知症の有病率を見てみると、60代前半から後半にかけて急増していることがわかりました。
認知症の有病率を年齢別に見ると、60~64歳が0.189%、65~69歳が2.9%です。
この間、実に15倍も増えています。
ちなみに70~74歳は4.1%、75~79歳は13.6%です。
80~84歳では21.8%となって「約4人に1人」に突入。
85~89歳は41.4%と半数に近づき、90~94歳で61%と半数を超えます。
有病率だけだと、60代の認知症患者は3%弱ですが、注目したいのは、なぜこの年代に急増するかということです。
その一番の理由として考えられるのが定年退職です。
会社や組織によって異なりますが、組織や仕事を離れるのはおおむね60~65歳が多いと思われます。
特に男性の場合、何十年も勤め上げた会社を離れ、仕事仲間と顔を合わせることもなくなると生活が180度変わります。
家に居てもすることがなく、打ち込む趣味もなく、人づきあいも煩わしくなり、一日中家に閉じこもりがちになる方も少なくありません。
そんな生活習慣から、うつ症状に引き込まれてしまうことも多くみられます。
家族間で明るい会話ができればいいのですが、それもないと「丸一日、誰ともしゃべらなかった」ということにもなりかねません。
身体を動かすのがおっくうになると、運動不足にもなります。
こうなるとまさに悪循環で、「魔の年代」そのものだと言えるのではないでしょうか。
認知症を予防するためには、質の良い睡眠と食事がポイントになります。
睡眠の質を上げるためには、まず朝一番に太陽の光を浴びましょう。
1日は24時間ですが、人の体内時計は約25時間周期で進むので、その1時間の差をリセットする必要があります。
起床後すぐにカーテンを開けて太陽光を浴びたり、朝一番に散歩することで体内時計をリセットしましょう。
また、昼間の活動量を増やすと、昼と夜のメリハリがついて、より夜の快眠につながりますし食欲も出てきます。
食べすぎ・飲み過ぎに気を付けて、バランスのよい食事を心掛けましょう。
昼間の活動量を増やす対策としては、仕事に代わる社会的活動、レジャー、ボランティアなどを生活の中に取り入れること。
そうすることで、自然と他者とコミュニケーションをとることができ、脳の働きが活性化します。
予防医学的な研究によれば、社会的活動に積極的な人ほど認知症になりにくいといわれています。
さらに興味のあること、好奇心が湧くことには積極的に打ち込みんでみましょう。
写真を撮る、絵を描く、ガーデニング、観劇、スポーツ観戦、工芸、裁縫など、現役時代には忙しくてできなかった趣味を持つことで脳は活性化します。
ウォーキングやサイクリングなどのスポーツや旅行、自然散策など、身体を動かすことも認知症予防になります。
今までできなかった勉強を始めるいい機会でもありますね。
現役時代からリタイア後の生活プランを練っておくことも、ひとつの認知症対策といえるでしょう。
まとめ
この差をなるべく縮めるために、日常的に食事や運動習慣、睡眠、歯の健康維持などに取り組みましょう。
アルツハイマー型の認知症の原因は、今もはっきりとはわかっていません。
確かなことは、脳の老化をできるだけ防ぎ、発症する年を遅らせるための予防策を講じることです。
さらに、高齢になると医療費や介護費用が多くかかるようになります。
自己負担は1割~3割程度とはいえ、あらかじめ各種保険に加入したり、十分な備えを確保しておくことも大切です。