ただし、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。
さらに、老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰上げ請求は同時にする必要があり、基礎年金だけ、または厚生年金だけを繰り上げて受給することはできないので注意が必要です。
今回は、年金を繰り上げ受給することによるデメリットをご紹介します。
年金は原則として65歳から受け取ることができますが、早く年金を受け取りたい方は、受給開始年齢を60~65歳の間で前倒しして1カ月単位で繰り上げることが可能です。
令和3年度で前倒して年金を受給されている方は、約9人に1人(11.2%)となっています。
繰上げ受給を請求すると、請求した時点に応じて、年金が減額されます。
さらに、その減額率は、生涯にわたって変わりません。
減額される率は、繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数×減額率になります。
減額率は、昭和37年4月1日以前生まれの方は0.5%(最大30%)、昭和37年4月2日以降生まれの方は0.4%(最大24%)減額されます。
また、年金は一度繰上げ請求すると、取り消しはできないので、繰り上げ受給するタイミングをよく考えることが大切です。
なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方の受給資格がある方は、原則として、両方一緒に繰上げ請求する必要があります。
高齢になると、若い頃と同じように働くことが難しい方も増えてきます。
肉体を酷使する職種などは、60歳前半でも続けられなくなることもあるでしょう。
そのような場合、年金を繰上げて受給できる制度は、とても役に立ちます。
その一方で、安易に年金の繰上げ受給を選択して、あとで悔やむ方もいます。
以下に、実際に年金を繰上げ受給した方が、主に後悔しがちなことを3つご紹介しますので、受給のタイミングを決める際の参考にしてください。
1.国民年金の任意加入被保険者になれない
国民年金は、原則として、60歳未満の方しか加入できませんが、国民年金保険の加入期間が40年に満たない場合は、60~65歳まで、任意加入ができます。
任意加入をして、年金を支払うと、将来受け取る年金を増やせるというメリットがあります。
老齢基礎年金を繰上げ受給してしまうと、国民年金保険の任意加入被保険者にはなれず、さらに60歳の時点で、年金加入の期間が40年に満たない場合は、年金の受給額も少なくなりそのまま生涯続きます。
年金は死ぬまで受け取ることができますが、年金額が少ないと何かとデメリットも大きくなるでしょう。
2.寡婦年金・障害年金を失効してしまう
寡婦年金や障害年金の受給資格がある方が、年金の繰上げ受給を行うと、どちらか一方を選択しなければならなくなるケースもあります。
寡婦年金・障害年金よりも、老齢基礎年金や老齢厚生年金のほうが少なかった場合は、最終的には損をする可能性があります。
寡婦年金や障害年金は、支給年齢によって減額されることはないので、老齢基礎年金や老齢厚生年金の繰上げ受給を選択するよりも、受給資格を得たまま、ほかの方法で収入を得る算段をしたほうが、メリットが大きいこともあります。
3.60歳を過ぎて働く場合、年金が減額される可能性がある
60歳を過ぎても働きたいけれど、給与が下がってしまうため、年金を繰上げ受給して、給与と合わせて生活費にしたいと考えている方もおられるかもしれません。
しかし、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が、48万円を超える場合は、注意が必要です。
60歳以降、仕事を続けながら受け取る老齢厚生年金である在職老齢年金を減額されたり、支給を停止される可能性があります。
また、高年齢雇用継続基本給付金を受け取る予定がある場合も、繰上げ受給を選択すると、年金の給付額が減額される可能性があります。
60歳を過ぎても働く場合は、受け取れる年金と給付金を合わせた金額がどれくらいになるのかをしっかり確認してから、繰上げ受給をするかどうかを決めることが大切です。
まとめ
また、障害年金や寡婦年金の受給資格がある場合は、繰上げ年金を受給すると、支給が停止される可能性もあります。
老齢になって、定期的な収入手段が途絶えることはとても不安ですが、繰上げ受給を選択する前に、ほかに収入確保として利用できる制度がないかを、よく確認しましょう。