定年の前後にどう決断するかによって、生涯で受け取ることのできる金額は相当変わってきます。
今回は、マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏著書『知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版』より、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介します。
個人事業主として働いていれば、どれだけ働いても年金をカットされることはありません。
しかし、自営だけで稼ぐと、国民健康保険料が思いのほか高くなってしまうことがあるので注意が必要です。
もしも自営をしながら健康保険料を抑えたいと考えるなら、国民健康保険には加入せず、社会保険に加入している会社に勤めながら、個人事業主もすることです。
勤めている会社では、年金が減らされない程度の低い給料に抑えてもらいます。
一方、並行して個人事業主としてしっかり稼ぐことができれば、年金も減らされることがない上、社会保険料も低く抑えられます。
完全に自営業だけだと国民健康保険に加入しなくてはならず、あまりバリバリ稼ぎすぎると、国民健康保険料も高くなってしまいますが、会社で社会保険料を払っていれば、国民健康保険に加入する必要はありません。
給与が少なければ負担する社会保険料も少なくなります。
これなら、自営業でバリバリ働いても、社会保険料が高くなることはありませんし、年金も減らされないですむ、というわけです。
定年退職後、前職の経験を活かしてコンサル業をはじめたAさんは、2年ほどたつと大きな案件も入り始め、年間利益が500万円近く出るようになりました。
妻は専業主婦です。
Aさんの所得に対する国保の年間保険料は約51万円です。
それ以外に妻の国民年金保険料が別途約19万円かかるので、合わせて約70万円を負担しています。
個人事業専業で、1年間に約70万円の社会保険の負担は率直に大きい額だと言えるでしょう。
もしも、Aさんが自営の傍ら、パートなどで会社勤めをして、仮に月額9万円の給料をもらい、その会社の社会保険に加入したとすれば、負担する社会保険料は、年間約16万円。
個人事業専業で支払っていた国民健康保険料と比べると、その差額は年間54万円にもなります。
しかも、この金額には、健康保険料に加えて、妻と自分の厚生年金の保険料も含まれているので、断然オトクなのです。
個人事業と並行して会社勤めをした場合、会社の社会保険に加入するためには、いくつか条件があります。
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が継続して1年以上見込まれること
・賃金の月額が8万8,000円以上であること
・学生でないこと
・勤務先の従業員数が101人以上であること
※2024年10月からは、従業員数は51人以上の企業に拡大されます。
また、労働契約で所定労働時間が20時間未満となっていても、実際の労働時間が2ヵ月を超えて20時間以上となり、同じ状態が続くことが見込まれる場合は、3ヵ月目から社会保険加入となります。
上記の条件を満たせるように、入社時に会社と詳細を相談することが望ましいです。
まとめ
しかし、儲けるほどに高くなってしまう国民健康保険料を支払うのも避けたいところです。
それを防ぐためには、今回ご紹介した自営で稼ぐと同時に給料を抑えつつ会社勤めをして社会保険に加入し、保険料を会社と折半する方法が役に立つでしょう。