しかし、介護支援が必要かどうかを早い段階で気づくことができれば、段階に応じて介護サービスを利用しながら、ご本人が望む自立した生活を続けることもできます。
そして自立した生活を続けることで、生きがいを失わず、症状の重症化を防ぐことにもつながり、おのずと家族や社会の負担も軽くなるのです。
今回は、親の暮らしぶりから介護の必要時期を判断するポイントをご紹介します。
残念ですが何となく親の様子がおかしいと感じながらも、様子を見るかたちで放置し、症状が重症化するまでケアマネジメントや介護サービスにつながらない方は数多くおられます。
もっと早期に、適切な介護サービスとつながっていたら、今の状態とは違ったのではないかと後になって後悔されるのです。
介護が必要になるタイミングは人それぞれですが、いざと言う時になって慌てないために、次のポイントをチェックして介護が必要なタイミングを見逃さないようにしましょう。
7つのチェックポイントのうち、ひとつでも当てはまれば、そろそろ介護が必要かもしれないと考えましょう。
1.食欲がない、急に痩せてきた、食事量が減った
一緒に食事をした時に、さまざまな病気や摂食嚥下機能の低下、口腔トラブル、認知機能低下といった原因から「食べられない」という問題が起きていなませんか。
食欲や食事の量はどうなっているかを確認しましょう。
2.自宅の壁に穴が空いている、ガラスが割れている、杖や靴が壊れている
運動機能の低下や脳の病気などが原因で「転倒」している可能性があります。
骨折につながるような大きなリスクもあるので、青痣や打ち身、擦り傷などが身体にないかを確認しましょう。
3.手帳やカレンダーに予定を書き込まなくなった、外出の機会が減った
認知機能の低下や、何らかの身体的・精神的な不安や困りごとが原因で社会参加が減っている可能性があります。
出かける予定などがカレンダーや予定表に記載されているかを確認しましょう。
4.物をしまう場所(位置)が変わる、探し物が増える
認知症や意識障害などから、体験の一部ではなく体験全体を忘れ、忘れた自覚もない場合があります。
家の中で物の置き場所が変わっていないか、わからなくなっていないかを確認しましょう。
5.人との約束や日時を忘れる、何度も繰り返して日付を尋ねる
日時や季節の見当がつかなくなったり、場所や人が分からない場合は、認知症や意識障害などの可能性があります。
約束を忘れたり、場所や人がわからなくなっていないかを確認しましょう。
6.メガネや食器など、手で持つ物、身につける物をよく壊す
認知症によって物との位置関係がつかめなくなっていたり、別の病気や薬の副作用などによっても手の震えやしびれ、筋弛緩が起き、ひんぱんに物を落としている可能性があります。
食器など手に持ったものをよく落とさないかを確認しましょう。
7.眠れていない、昼夜逆転している(昼間に寝て、夜中起きている)
認知症による時間感覚の喪失や薬の副作用などにより、生活のリズムが破綻している可能性があります。
昼夜が逆転して不眠になっていないかを確認しましょう。
ご紹介した7つのポイントは、いずれも症状を起こしている原因の特定が難しく、高齢者の場合は、若い人とは全く違う原因で起きているケースが珍しくありません。
それぞれ原因を探しあてて対応する必要があり、症状を放置すると悪化するだけでなく、全身の健康に影響し、自立した生活が困難になるきっかけになってしまうこともあります。
家庭で介護保険のサービスを利用するためには「要介護認定(要支援1、2または要介護1~5)」を受ける必要があります。
介護が必要かもと思ったら、行政の介護相談窓口や福祉の窓口で申請方法を尋ねてみることをおすすめします。
なお、2015年に施行された「第4次改正介護保険法」により、一部の自治体では要介護認定を受ける前でも希望すれば 「介護予防・生活支援サービス事業対象者」としてヘルパーやデイサービスを利用できるようになりました。
在住する自治体の対応が分からない場合は、要介護認定を希望する場合と同様に行政の介護相談窓口や福祉の窓口、地域包括支援センターで聞いてみてください。
介護保険のサービスを利用するにあたっては、「地域のケアマネジャー」を頼ることもできます。
ここでいう「地域のケアマネジャー」は、都道府県知事の指定を受けた居宅介護支援事業所に所属し、都道府県知事が行う試験や研修をクリアして都道府県知事への登録を行っている有資格者を指します。
家庭で介護を受けたい人の要介護認定の申請の代行は、地域包括支援センターとケアマネジャーがいる居宅介護支援事業者のうち、厚生労働省令で定めるもののほか、成年後見人、民生委員・介護相談員、社会保険労務士も可能です。
すべてのケアマネジメントが公平に行われ、ケアマネジャーの個人的な考えや手法に左右されないように、さまざまな決まりごとがあり、居宅介護支援事業所や所属するケアマネジャーはそれを遵守しています。
要介護認定を受けたら、これから、どのようなサービスが利用可能か相談しましょう。
要支援1、2の場合は、地域包括支援センターに、要介護1~5の場合は、地域のケアマネジャーにサービス計画を示すケアプランを立ててもらえます。
介護保険の介護サービスの利用自体には一部自己負担が必要ですが、介護認定の申請やケアプラン作成には自己負担はありません。
介護サービスを「受ける・受けない」は後で判断することとして、ケアプラン作成だけでも相談してみましょう。
また、ご本人自身は、いろいろ困まりごとがあることはわかっていても、認知機能の低下によって、困っていること自体を自覚できないケースもあります。
もしも7つのチェックポイントの症状が見られたら、ご本人が「必要ない」と言っても、気づいた人が介護の窓口とつながり、備えることが、ご本人の安全な暮らしを守ることにつながります。
まとめ
するといつの間にか時間だけが過ぎて行き、気づいたときにはご本人の症状が取り返しのつかないところまで進んでしまっている場合もあります。
早期に適切な介護サービスとつながるためにも
1.行政の介護相談窓口や福祉の窓口
2.地域包括支援センター(地域によって名前が異なる場合もあります)
3.地域にある医療機関(院内にある患者相談室など)
4.地域にある訪問看護ステーション
などを頼って、症状や具体的な介護相談にのってもらいましょう。