メス猫が発情期を迎えると、大きな声で鳴いたり性格が急に変わったりするので、飼い主さんも気付きやすいのですが、飼い主さんの生活に大きな負担をかけてしまうことにもなりかねません。
また、多頭飼育をしている場合には、発情しているメス猫のフェロモンに誘われて、オスも性格が変わったり、何匹かで発情したメス猫を奪いあい、喧嘩に発展するなどのトラブルにつながる危険性もあります。
今回は、避妊手術を行うことで、猫同士のトラブルの軽減や問題行動の防止につなげるメリットのほか、デメリットについてもご紹介したいと思います。
実際に飼い主さん自身が避妊手術を行う判断をしなくても、保護猫お迎えする場合などはすでに避妊手術を行われていることが多いこともあります。
最近では地域猫が避妊手術を済ませている場合に、避妊手術が済んでいることのサインとして耳に切り込みを入れ、「さくら猫」と呼ばれることが一般的にも知られています。
また、飼い主さんが猫に避妊手術を行うかどうか選択する際にも、それがどんな手術なのかがわかっていないと、躊躇してしまうこともあると思います。
一般的に「避妊手術」とは、その名の通り、妊娠を避けるために行う手術で、卵巣や子宮を摘出することで妊娠しないようにする方法を指します。
手段としては、卵巣だけ摘出する方法、卵巣と子宮の両方を摘出する方法の大きく2つが挙げられます。
卵巣や子宮は腹腔内に存在する臓器のため、基本的には開腹手術を行います。
そのため、日帰りではなく入院になる可能性が高いです。
開腹手術でメスを用いて行うため、痛みや出血を伴いますが、できる限り愛猫の身体に負担をかけないよう、麻酔を用いて、痛みや感じたり、術中に暴れてしまうことがないようにします。
手術中は麻酔がかかっているため、愛猫が痛みを感じることはほとんどありませんが、麻酔をかける行為自体、体に負担がかかります。
一般的には、麻酔をかけても問題が無いかどうか、事前に全身状態を把握するための検査を行いますが、極度の恐怖を感じたり、興奮をしてしまう猫には、この検査は省略する場合もあります。
麻酔をかけている間も、心拍数や呼吸数などを管理して、安全に手術が行えるようにするケースが多いです。
また、今まで避妊手術は開腹手術で行なうのが一般的でしたが、最近は医療技術も進歩して、腹腔鏡を用いてお腹を切らずに行う方法も珍しくなくなりました。
腹腔鏡手術のメリットは、傷口が小さく体への負担が軽いこと、開腹をしないため入院日数を減らすことが期待できます。
デメリットとしては、腹腔鏡のある動物病院が限られているため、どの動物病院でも受けられるわけではないことなどが挙げられます。
かかりつけの動物病院の先生がどのような手技で行なうのかということも、事前に確認しておくと良いでしょう。
手術をしなくて済むのであれば、体に負荷がかからないので良いかもしれませんが、それでも避妊手術を行った方が良い理由があります。
避妊手術を受けるのは、妊娠を避けることが一番の目的です。
計画的でない乱繁殖は飼育崩壊につながりかねず、結果的に猫にとって不幸な事態になりかねません。
猫は繁殖のシステムが交尾排卵と呼ばれ、メス猫に発情が来て交尾を行なうと、交尾が刺激となって排卵が促されるため、妊娠をする確率がとても高いのです。
発情期が来たメス猫のフェロモンはオス猫を誘うので、飼っていない近隣のオス猫たちが誘われて交尾をしてしまい、妊娠するというケースも考えられます。
望まれない次世代の繁殖やその結果、地域に放されてしまったり、処分されてしまう子たちを減らすためにも避妊手術は大切なのです。
また、妊娠や出産にも前向きなご家庭であっても、改めて考えなければならないのが病気の予防です。
性ホルモンが関連する病気の予防のためには、避妊手術は有効な手段です。
もっとも有名なのが乳癌(乳腺腫瘍)で、良性と悪性の両方のタイプがありますが、猫の場合悪性になる確率が高いと言われています。
乳癌予防のためにも、避妊手術を早期に行うことはとても効果が高いのです。
また避妊手術は、発生率が低いですが、子宮蓄膿症の予防にも繋がります。
子宮蓄膿症は子宮に膿が溜まってしまう疾患で、程度がひどい場合、子宮が破裂したり、全身状態が悪くなってしまい死につながる危険性があります。
これらの疾患の予防のためにも、避妊手術はぜひ検討していただきたいです。
避妊手術は病気や乱繁殖、問題行動の予防のためにとても大切なものではありますが、残念なことにデメリットもあります。
メリットになる部分とデメリットになる部分を合わせて考えた時に、あなたの家の猫ちゃんにとってどちらが良い影響として大きいのかを判断すると、後悔の無い決断につなげられると思います。
避妊手術を行うことでデメリットになるのは、性ホルモンのバランスの乱れなどから肥満になりやすくなる傾向があることです。
肥満は、糖尿病などの病気につながるリスクがあり、関節などにも負担をかけてしまいます。
もともと持病があったり、食欲のコントロールが難しい場合は、避妊手術後の生活において食欲の増加が大きな影響を与える可能性が高いと思われます。
麻酔をかけることは体に負担をかけるので、全身状態が良い子であればほとんど危険性はありませんが、持病がある子や年齢、全身状態が悪い子などは注意が必要です。
どんなに簡単な手術であっても、麻酔をかけることに100%の安全は無いと言われています。
そのためにも、事前に愛猫の全身状態を把握したり、その日のために全身状態をより良くするなどの対処をすることを心掛けていただきたいです。
病院に連れてこられること自体が、愛猫にとってはストレスになることが多いので、かかりつけの先生と手術前にリスクについて相談しておくとより安心でしょう。
さらに、手術を行うことで、入院期間や術後の痛み、抜糸などの負担やストレスによって、飼い主さんとの愛情の距離が大きく引き離されてしまったという話もよく耳にします。
入院日数の相談や、術後の鎮痛剤の使用の検討、抜糸の要らない縫合方法などをあらかじめ相談しておき、愛猫の精神的なストレスを少しでも軽減するように準備すると安心ではないでしょうか。
まとめ
飼い主さんは少しでもリスクを軽減して、不安やストレスがなくなるように、飼っている猫ちゃんの性格や嗜好などの情報と、全身状態などを合わせて、かかりつけの先生に良い手術方法を見つけていただきましょう。
不安に思うことは納得できるまでの先生とよく話をして、問題点が解決されたうえで手術に臨むことが理想的だと思います。