周囲に感謝の気持ちを持つだけで、心理的、身体的、人間関係にポジティブな効果を得られるそうです。
感謝できない人は失敗や不幸などを自分ではなく、他人やまわりの環境などのせいにするようになり、どんどん孤立してマイナスのサイクルに陥る危険性があります。
「すみません」を「ありがとう」に言い換えるだけでも仕事も人間関係がうまくまわるようになるのです。
今回は、鹿島しのぶ氏著書『小さな感謝 人生を好転させる一番簡単な方法』から、人生を好転させる「感謝」について掘り下げようと思います。
感謝とは、ひとことでいえば、「ありがたい」と思う気持ちのことです。
そういう気持ちを持ち、お互いに示し合っているのは、地球上に生きている数多くの生き物のなかで、一部の霊長類を除けば人間だけとされています。
人は、まわりの人と支え合い、助け合っているからこそ生きていられる存在といえます。
人間が長い時間をかけて進化してくるなかで、「感謝」という気持ちを持つようになったのも、そんな人間の、社会を基盤とした生き方がきっかけだったのかもしれません。
ところが、時代が経つにつれて、人々は忙しく日常生活を送るなかで、ついそのことを忘れがちになってきました。
かつての日本社会では、地域に住む人々に仕事を手伝ってもらったり、子どもの世話をしてもらったり、あるいはモノをやりとりしたときには、「ありがとう」と感謝の気持ちを口にしていたものです。
多くの人がお互いに顔を知っており、密なコミュニケーションが成立しているなかでは、それが当然のことでした。
ところが都市化が進むにつれ、とくに人口が集中している都会などでは、なかなか他者との関わりを持つことが難しくなり、その結果として、感謝の言葉を口にする機会も激減しています。
人に感謝できない人は、他罰的な人になります。
他罰的とは、失敗や不幸などを自分ではなく、他人やまわりの環境などのせいにすることです。
何かあるたびに、「私が失敗したのはあの人のせい」「ああいう人たちがいるからうまくいかないんだ」「私は悪くない。まわりが悪いのよ」などと言う考えが立ち、コミュニティの和を乱します。
そんなことを繰り返しているうちに、「あの人はわがままだ」「あの人は自己中心的ね」と見られてしまい、徐々に関わるのも面倒だと敬遠されるようになって、最後には居場所を失ってしまいます。
「べつに、私は私で勝手に生きるから」と虚勢を張っても、人は他者との関係を完全に断ち切って生きていけるはずがありません。
人生は好転するどころか、どんどん孤立してマイナスのサイクルに陥っていくばかりです。
誰かに、何かお世話になったとき、相手の人に「ありがとう」という言葉を伝えれば、清々しい気持ちになります。
いつも何に対しても感謝の心を持ち、それをきちんと周囲の人に伝えられる人は、いわれた相手もうれしく感じることを知っています。
そして、感謝してくれた人のために、もっと何かしてあげたいと思うのです。
お互いに、感謝し、感謝されることで、関係がより近く、より安定したものとなり、いい人間関係が結ばれて広がり、幸せのサイクルを生み出していきます。
そういう意味では、感謝は、上手に生きるための「人生スキル」ではないでしょうか。
アイルランド生まれの教育学者、マーガレット・カズンズは、こんな言葉を残しています。
「感謝は一日を豊かにし、人生を変えることさえあります。必要なのは、それを言葉にしようとするあなたの意欲だけです」と。
カリフォルニア大学のロバート・エモンズ教授は、長年にわたって、「感謝の気持ち」が心理的幸福、身体的健康、そして他者との関係に与える影響を研究してきました。
その結果として、教授は次のような効果があったとしています。
【心理的効果】
・ポジティブな感情が高まり、肯定力が増す
・より注意深くなり、いきいきとしてくる
・より楽しさやうれしさを感じるようになる
・楽天的になり、幸福感が高まる
【身体的効果】
・免疫力のアップ
・痛みの軽減
・血圧の低下
・より運動し、健康管理に努めるようになる
・よく眠り、目覚めがよくなる
【社会的効果】
・より親切になり、他者を助け、慈悲深くなる
・より他者の過ちに寛大になる
・より外交的になる
・孤立感や孤独感が軽減される
こんなにもすごい効果がなぜ表れるのでしょう。
エモンズ教授は、その理由について、次のように語っています。
理由１.感謝することで“いま”得られる喜びが最大化される
人は、新しい洋服や新しい車、以前よりも高い収入を手に入れてもすぐに慣れてしまうように、喜びやうれしさなどのポジティブな感情も、あっという間に消え去り、ときにはまるで何も起こらなかったかのように“これまでの自分”に戻ってしまいます。
しかし、感謝の気持ちを持ち、それを表現し、確認することで喜びが継続し、増大するのです。
理由２.感謝が、有害でネガティブな感情を排除する
ネガティブな、嫉妬、恨み、後悔などは人の幸福感を損ないます。
しかし、感謝の気持ちはそうしたネガティブな感情とは対極にあり、感謝の気持ちに意識を集中することでそれらを排除することができるのです。
理由３.感謝する人はストレスに強い
きちんと感謝できる人は、トラウマ・逆境・苦しみからの回復が、感謝できない人より早いようです。
感謝の気持ちが、ものごとに対するとらえ方にプラスの影響を与え、ストレスや不安から身を守るように働くからでしょう。
理由４.感謝する人は自尊心が高い
感謝するということは、これまでの自分に貢献してくれた人々や、いまの自分を支えてくれている人の存在に気づくことです。
またその結果、他者が感じる自己の持つ価値に気づくことができ、自分自身に対する見方をいい方向へ変えることができ、自分自身の自尊心を高める効果もあります。
そして感謝の気持ちを相手に伝えることで、これらの効果をより高めることができるのです。
まとめ
小さなことへの感謝は忘れがちになるので、日頃から何か素敵なプレゼントをもらったり、美味しい食事をごちそうになったりしたときなど、ちょっとしたことでも「ありがとうございます」と感謝する気持ちを伝えることが大切でしょう。
