親の衰えは、離れ離れに暮らしていると、わずかな異変に気づくことは難しいからです。
年老いた親を、病気や犯罪などの見えない脅威から守る術はあるのでしょうか。
今回は、親の異変にいち早く気づくことができるポイントをご紹介します。
帰省した際、久しぶりに会った親の異変を目の当たりにして危機感に駆られた人もいるのではないでしょうか。
厚生労働省によると、認知症になる平均年齢は若年性認知症を含むと51.3歳だそう。
20代の方は、いつ親が認知症を発症してもおかしくないと思っていなければならないのです。
65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は2012年には7人に1人でしたが、2060年には3人に1人になると推計されています。
親に異変を感じたきっかけは何ですか、という問いに対して多かったのが認知症の兆候です。
認知症のシグナルとして、箸ではなくスプーンで食事をするようになったり、食事の回数や歯を磨く回数が増えたりすることが挙げられます。
知症の記憶障害は体験そのものを忘れてしまい、きっかけがあっても思い出せないという点に特徴があります。
同じ記憶障害でも、加齢による単なる物忘れなのか、深刻な記憶障害なのかの見極めは非常に難しいのです。
しかし親のわずかな異変をきっかけに認知症が発覚したケースも多く見られるので、それが老化による物忘れなのか認知症なのかを専門医に診てもらうことが大切です。
記憶系の認知機能が低下し短期的な記憶に支障が出てくると、脳のワーキングメモリーをいくつも同時に使う作業が困難になります。
そのため、な食材を切りながら、お湯を沸かし、フライパンを火にかけておくといった同時にいくつものタスクをこなす必要のある料理のようなものは次第に避けるようになります。
すると久しぶりに帰省した際にも、親が自炊することを面倒くさがって料理の品目が減ったり、台所に立たなくなったりするのを目の当たりにします。
何事にもおっくうになりやる気を失っていくと、異変は目に見えるかたちでわかりやすく顕在化します。
楽しみに通っていた趣味の教室などをやめてしまったり、抑うつ的な症状や意欲の減退が出始めると、それは代表的な認知症の初期症状になります。
それまできれいに整えていた身だしなみもいつのまにか無頓着になり、部屋が散らかっていても平気になったり、という変化にも注意が必要です。
さらにもっとも大きなリスクとなるのがクルマの運転です。
公共交通機関の行き届かない田舎暮らしの老親にとって、クルマは日常生活を維持するための生命線でもあります。
免許の自主返納率は、80代ドライバーでいまだ10%未満というのが実情で、子どもが免許返納を勧めても、注意して運転しているので大丈夫。それにクルマがないと買い物ができない、と言われてしまう。
黙っていると、そのうち大きな事故に直結する可能性も大いにあるため注意が必要です。
現在、国は75歳以上のドライバーを対象に認知機能検査を義務づけており、警察庁のWebサイトには問題用紙も掲載されています。 もしも親の異変に気づいたら、こういったテストを積極的に活用するといいでしょう。
異変のシグナルとして、現金での買い物をしなくなったり、口数が減ったり、と言うこともあります。
キャッシュレスで決済をすることが増えるのは、細かい計算ができなくなっているということです。
他にもTPOをわきまえない言動や、面倒に感じて連絡の頻度が減るといったことが起きる場合も多いです。
下に認知症が疑われる際のチェックリストを掲げましたので、当てはまる項目がある場合は専門医に相談することが肝要です。
【「認知症のシグナル」チェックリスト】
1.昔は密にあった連絡が減った
2.おかずが一品減った
3.箸ではなくスプーンで食事をする
4.キャッシュレスでの会計が多い
5.昔話など同じ話をするようになる
6.財布や鍵を探すようになる
7.心配で同じことを何度も聞いてくる
8.綺麗好きだったのに散らかっている
9.クルマの傷が増えている
10.料理の味つけが大きく変わった
11.食への興味や意識が減退している
12.身だしなみを気にしなくなった
13.お風呂にあまり入らなくなった
14.感情の起伏が大きくなった
15.人や物を「あれ」と呼ぶことが増えた
まとめ
まだ完治する薬などはありませんが、早期発見することによって進行を遅らせることはできます。
離れて暮らしている親と久しぶりに会った際に、「あれ?」と違和感を少しでも感じたら、認知症専門医、または物忘れ外来などにできるだけ早くかかるようにしましょう。