モラル・ハラスメントは、フランス人の犯罪学被害者学者であり精神科医のマリー=フランス・イルゴイエンヌ氏が著書『モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない』で提唱した概念で、言葉や態度で相手の尊厳や人格を傷つけることを言います。
近年、日本でもモラル・ハラスメントを行う夫を「モラ夫」と呼び、そのエピソードを描いた漫画やエッセイが多数登場しています。
モラハラは男女ともに加害者になり得ますが、男性が加害者でパートナーの女性が被害者になるケースが圧倒的に多いのです。
今回は、弁護士の大貫憲介氏の著書『私、夫が嫌いです』から、モラ夫について掘り下げてみようと思います。







モラ夫は人を「序列化」する


◇ ◇ ◇


「モラ夫」になる男性の共通した傾向としては、基本的な人格に「家父長制」「男尊女卑」「性別役割分担」などの一昔前の社会的・文化的規範がに刷り込まれています。


「モラ夫」は、妻が体調不良で夕飯が作れなかったときにも「大丈夫?」と心配するよりも「俺の飯は?」と聞くような、妻よりも自分がケアされないことに腹を立てたり、不機嫌になったりします。
「モラ夫」は妻を「家事・育児をする者」「俺の世話をする者」「俺に従う者」と捉えているのです。
多くのモラ夫のなかには、腹を立てたり、不機嫌になったりするだけでなく、実際に暴力に訴えったり、脅したりすることもあります。


モラ夫の言動は、今まで刷り込まれた規範群に従うため、観察したり、当人と受け答えをすれば、どのような規範群が刷り込まれているか見当がつきます。
日本がモラ夫の多い国だと言われる理由として考えられるのは、今でも日本社会に家父長制度が根強く残っているからです。


人は誰でも幼い頃から自分の属する社会のなかで諸規範を刷り込まれ、そのコミュニティの構成員になります。
モラ夫は、刷り込まれた規範から外れた相手(妻)に対して、規範を遵守させるために様々な制裁(モラハラ)を加えます。


妻が規範に違反していると見た場合、「普通は~」を多用して非難します。
例えば、「普通、ここは(妻が)謝るところだろ」といったように。
ここでの「普通」とは、モラ夫に刷り込まれた規範の領域内での「普通」です。


刷り込まれた規範群の歪みは増幅するので、モラ夫の認識が客観的あるいは社会的標準から大きくズレていることも少なくありません。


また、モラ夫から見ると規範に違反しているのは相手(妻)であるため、「お前が俺を怒らせている」という意識になります。
規範違反の状態に置かれた自分が「被害者」で、「処罰」を手加減することで「俺は我慢している」という意識があるのです。






モラ夫を治すのは非常に難しい

◇ ◇ ◇


なぜ難しいかというと、「モラ夫」は自分がモラ夫であることを自覚できていないからです。


まず挙げられるのは、幼いころから慣れ親しんだ社会的文化的規範群を基本として、基礎的人格は形成されており、無意識にそれらに従っているので、自覚するのが難しいということです。
また、自らの規範を守るため、認識自体が歪んでいることも多く、モラ夫自身は規範を修正する必要があることを認めません。
例えば、男尊女卑を刷り込まれた者は男性は理性的、女性は感情的などの歪んだ認識を持っていることが多いです。


さらに、これは脳科学においてわかっていることですが、モラ夫はモラハラ行為そのものに依存しています。


というのも、ヒトは自らが属する社会の他の構成員を「処罰」すると、脳の報酬系が刺激され、ドーパミンなどの“脳内麻薬”が分泌され、快感や多幸感を覚えるからです。
そして、処罰(モラハラ)を受けた相手が泣いたり、従ったりする、つまり自らの規範に従い支配従属関係を強めることで、さらに脳内麻薬が放出され、怒って妻を支配することが、モラ夫にとって快楽になっているんです。




以上のようなことから、モラハラは依存症だと言えるのです。




「モラ夫」予備軍を見分ける8つのポイント

◇ ◇ ◇


モラ夫は自分の本性を見せたら女性にモテないことをわかっているので、結婚するまではその性質を出さないことが多いのです。
付き合う前や結婚前にチェックしておきたいモラ夫予備軍の特徴を8つ以下に挙げておきます。


1.店員などにクレーム




客と店員の上下関係は家父長制的な価値観における夫と妻の上下関係と類似性があるため、店員に対して執拗に、容赦なく、理不尽にクレームをつける男性は、将来、妻に対しても同様の態度をとると考えられます。




2.俺様物語




モラ夫(予備軍)は交際相手に、「俺がいかに偉く、すごいか」あるいは「俺がいかに苦労したか」という俺様物語を話す傾向があります。




3.短気




よく怒る男性は、当然、結婚してからもよく怒ります。交際相手に怒っていいと思っている男性は、結婚後はさらに遠慮なく頻繁に怒るようになります。




4.強い独占欲




支配欲と独占欲はほぼ同じ。
交際相手の社会生活、活動範囲を限定したり、行動のすべてを把握しようとする独占欲の強いタイプは交際相手を支配対象と考えている可能性があります。




5.孤立化させる




交際相手の交友関係や家族を敵視し距離をとろうとする男性は、結婚後に妻を彼らから引き離して孤立化させ、ハードなモラハラを行う傾向があります。




6.強い結婚願望




モラ夫(予備軍)は、人生観のなかに家長になることが組み込まれているため、結婚願望が強く、同居や結婚を急かす傾向があります。




7.話を聞かない、説教する




交際相手の話を聞かず、聞いても理解しようとしません。
また、交際相手に説教する男性は結婚後、さらにその傾向が強まり自分こそが正しいと相手を遣り込める可能性が高いです。




8.謝罪するが、同じことを繰り返す




多くのモラ夫(予備軍)にとって、謝罪は自分の言動を悔い改めることではなく、自分に対する非難を終了させるための手段に過ぎません。
謝罪した後に同じ話題を持ち出すと「何度謝らせれば気が済むんだ」と逆ギレしたり、一度謝罪した問題行動を繰り返す場合は注意が必要です。






まとめ

いつモラ夫の予備軍から稼働スイッチが入るかは確定できません。
結婚式の晩から突然いばりだしたり、新婚旅行の飛行機の中で「今日から俺に従え」と宣言する夫もいるそうです。
気に入らないことがあると、突然黙り込んでガン無視を決め込むことも多く、この「ガン無視」がモラハラの始まりだった、という事例は数多くあります。
モラハラの稼働スイッチが入るきっかけは、結婚、出産、マイホーム購入、就職・役職への昇進など「俺が一家の主になった」「俺は一人前の男になった」という判断を本人がもったタイミングが多いようです。

次回は、モラハラに耐えられず離婚したい場合、どうすればいいのかをテーマにご紹介します。

『私、夫が嫌いです』

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




このブログは
bootstrapテンプレート
Maxim Theme.の無料版を使わせていただいてます。

似顔絵は、「似顔絵メーカー」で作成しました。