こういう人は自分で代案があるわけでもないのに会議の案件の前提をひっくり返そうとします。
悪気がないので直そうとしませんし、どのように対処すればいいのかわからず悩む方もおられるのではないでしょうか。
今回は「そもそもオジサン」の発言を上手に切り返すテクニックをご紹介したいと思います。
白熱した会議で皆が懸命に案を出し合っているときに、「そもそもさ~」を枕詞にして場をしらけさせる人に出くわしたことはないでしょうか?
代案を出すわけでもなく、ただ会議の進行を遅らせるような発言をするめんどくさい人です。
特に若手の人たちからよく聞く悩みのひとつに、自分が一生懸命会議の案件をまとめようと考えてきても、目上の人が阻むような発言をしてきて、上手く切り返せず、結果、会議だけでなくプロジェクトそのものが進まなくなったり、自分の案が潰されてしまったりということがおこるるということです。
その原因となっているのが、まさに、「そもそもさ~」と枕詞をつけては水を差し、会議の進行を遅らせる人の存在です。
役員や部門長など、ある程度のキャリアがあり、もしくは年次の高い男性に多いことから、こういった人たちを「そもそもオジサン」と呼びます。
立場や役職が上の人たちに邪魔をされたら、なかなか言い返すことはできませんが、
「なんで、このタイミングでそれ言うの?」
「“そもそも”といえば議論に参加してると思ってるのか?」
と、心の中でつぶやいてしまうことも少なくないようなのです。
「そもそもオジサン」の発言に、真正面から言い返したり、説き伏せようとしてはいけません。
ポイントは、
1.「衝突しないこと」
2.「説き伏せようとしないこと」
3.「相手の口から言わせること」
の3つです。
具体的な手段としては「質問」を上手く使うのです。
「そもそもオジサン」には、大きく以下の3つのパターンがあり、質問も状況に応じて使い分けます。
パターン1.会議の主導権を握りたがる「カットイン」パターン
パターン2.新しいことはやりたくない「めんどくさがり」パターン
パターン3.責任を背負いたくない「小心者」パターン
実は、これら3つのパターンの裏には、「そもそもオジサン」の本音が隠されており、それは「会議で存在感を出したい」「知的に見せたい」「その案を(自分は)やりたくない」というようなものです。
「そもそもオジサン」の発言自体は、本音は隠されたままなので、その裏に潜む本音に対して相手がノーと言えない上手な質問をして、切り返すことが重要です。
具体的な切り返しの質問例をパターン別に紹介します。
パターン1.「カットイン」オジサンへの切り返し
まず、プレゼンターが話している途中に「そもそも、その前提なんだけどさ~」と、「そもそもオジサン」がカットインをしてくる場合は、本音として「自分が会議に参加していることをアピールしたい」「会議の主導権を握りたい」「知的に見せたい」など、要するに自己主張がしたいのです。
このようなときは、次のような質問で切り返します。
「今の前提を仮置きして、いったん最後まで話しても良いですか? そのほうが、議論がしやすくなって、結果的にこの会議も早く終わるかと思います」
「もし、私の前提に誤りがあるのであれば、以降の内容はすべて誤っている内容となってしまうのですが、もうこれ以上、話さなくてもいいということでしょうか? その場合、私の代わりにお話しいただけますと助かります」
つまり、自分の話を最後まで伝えきりたいという意志をアピールしつつ、「そもそもオジサン」が話をここで止めることは、デメリットがありますよ、もしくは、不都合なことになりますよ、ということを暗に示すのです。
パターン2.「めんどくさがり」オジサンに対しては
次に、もっとも多いであろう「めんどくさがり」パターンです。
会議の大部分が進み、案件が決まりかけたときに限って、「そもそも、それってやる必要あるの?」とちゃぶ台をひっくり返してくるような場合です。
このときの「そもそもオジサン」の本音は、「決定した後、やるのがめんどくさい」ので、案件自体を潰したいのです。
このようなときは、「やらない理由」を潰すことを考えます。
「この案を実施したときのメリットは○○ですが、やらなかったときのデメリットは××となります。もしよろしければ、この○○(メリット)を確保する、もしくは、××(デメリット)を回避できる代替案を教えていただけないでしょうか?」
と相手に代替案を発言するように迫るのです。
「そもそも、その案件を実行するにはリスクがあるでしょ?」というように、リスクを盾に潰そうとしてくる場合は、「オレは高いリスクなんてとるのは嫌だ」といった本音が隠れています。
このようなときは、「リスクはどこにでもある」ことをその場で周知させた上で、次のような質問で切り返します。
「逆にこの案件を進めなかった場合には、○○なリスクが生じる可能性があるのですが、それについてはどう対処するつもりですか?」
「リスクがゼロの企業活動があるのでしょうか? むしろ、今回の案件で、やらないという選択肢をとることこそが機会損失でありリスクだと考えていますが、その点についてはどうお考えですか?」
と、「やらないリスク」のほうが高いことを示すのです。
パターン3.「小心者」オジサンには
「そもそもさ~、この件は誰が責任とるわけ?」と、責任の所在に対して過敏に反応してくるときの対処法です。
こここでの「そもそもオジサン」の本音は、「オレは責任を取りたくない」という自分の保身です。
このようなときは、「責任ある=実績になる」の構図を暗に示し、相手にやる気を与えてみましょう。
「今回のプロジェクトは、わが社にとってこれまでにない取り組みです。これが上手くいけば部長のご実績にしていただけると思っていたのですが。それはご迷惑になりますか?」
と、相手が「ノー」と言いにくいような質問で切り返すのがコツです。
また、どのパターンの「そもそもオジサン」でも、会議が終盤になり、そろそろ案件をまとめるタイミングで前提をひっくり返そうとしてきた場合は、次のような質問で切り返します。
「なぜ、今になって必要性をご質問されるのでしょうか? これまでにも意見を出す機会はあったはずですが、このタイミングでご質問された理由を教えていただけないでしょうか?」
と、タイミングの異常さを論点にするのです。
さらに、「失敗したらめんどうだな」という本音が潜んでいる場合、「そもそもさ~、それって上手くいくの?」のような発言が出たりします。
このようなときは、相手が「やりたくない」と回答できない質問で切り返します。
「正直なところ、部長ご自身はこの案件をやりたいのか、やりたくないのか、どちらなのでしょうか? もし、本音ではやりたいと思ってくださっているのでしたら、成功確率が上がる具体的な方法をご教授いただけないでしょうか?」
と、巻き込んでしまうのです。
あるいは、あえて空気を読まず、次のようなセリフとともにテンション高めに笑顔で切り返すのも効果的です。
「うまくいくかどうか分からないからこそ、やる価値があると思いませんか!?」
まとめ
そのため、「そもそもさ~」と突っかかってくる困った人に対しては、感情を逆撫ですることなく、敵対関係にならないにすることが重要です。
「そもそもオジサン」には3パターンあるとご紹介しましたが、このいずれの場合も本人にまったく悪気はありません。
だからこそ自覚にチームや組織をかき回し、生産性を下げてしまっているのでタチが悪いといえるのです。
「そもそもオジサン」は、ちゃぶ台返しがしたい本音が透けて見えるぶん、撃退しようと考えるのではなく、余裕を持って「質問」の力を借りながら上手く仲間に引き入れることを考えましょう。