例えその菌が動物にとっては無害でも、人間に移ると非常に危険な場合があります。
それゆえに、「チュー」のような濃密な触れ合いは、ペットと言えども避けるべきともいわれているのです。
例外なく猫の口の中にも様々な常在菌がおり、中には猫から人に感染して病気を誘発させるものもあります。
今回は、猫と「チュー」することで感染する可能性がある病気についてご紹介します。
この病気は、カプノサイトファーガ・カニモルサスという細菌が原因で起こる感染症です。
カプノサイトファーガ・カニモルサスは、猫の57~64%が保菌しているといわれています。
初期症状は「発熱」「倦怠感」「腹痛」「吐き気」「頭痛」などで、重症化すると敗血症を起こす恐れがあり、最悪のケースでは命を落としてしまう危険性があります。
基本的には咬まれたり引っかかれたりすることで感染します。
2.パスツレラ症
パスツレラ菌が原因で起こる感染症です。
特に、犬や猫などと暮らす機会が多い先進国で多く発症する傾向にあります。
甘噛みなどで噛まれた部位が炎症を起こし、そのまま放置していると化膿する恐れがあります。
細菌が血中に侵入してさらに重症化すると敗血症になり、身体全体に炎症反応があらわれて臓器障害などを引き起こします。
パスツレラ菌は猫の爪の中にも存在しているため、引っ掻かれたことが原因で感染してしまうケースもあります。
3.コリネバクテリウム・ウルセランス症
コリネバクテリウム・ウルセランス菌によって引き起こされる感染症で、ジフテリアによく似た症状を示します。
呼吸器に感染をおこしやすく、はじめは発熱や鼻汁など風邪に似た症状で、その後に咽頭痛や咳などの症状が始まります。
喉の粘膜がやられてしまうと、そのまま喉が腫れ上がり、呼吸困難を引き起こす恐れがあります。
また、呼吸器だけでなく皮膚の炎症を引き起こすケースもあるので要注意です。
4.猫のクラミジア性結膜炎
ネコクラミジアという細菌が原因で起こる感染症です。
人が感染すると結膜炎を引き起こします。
猫クラミジアは人と動物で共通する感染症のため、結膜炎の猫の目やにや鼻水がついた手で目をこするなどして人が結膜炎を発症することがあります。
猫を触ったあとは必ず手を洗うようにしましょう。
日本国内で猫から人に感染した例は報告されていませんが、外国では報告例が上がっています。
5.トキソプラズマ症
トキソプラズマという寄生虫が原因で起こる感染症です。
主に便を介して感染しますが、猫は綺麗にする目的でお尻を舐めることがあるので、我々も猫に舐められることによって菌が入り込む恐れがあります。
ただし菌自体は弱く、健康な成人であればダメージがないケースがほとんどです。
実は知らぬ間に感染し、猫以外の動物も保菌している身近な菌のため、何事もなくやり過ごしている場合も多いのです。
トキソプラズマ症に注意していただきたいのは妊娠中の方です。
感染歴がない状態で感染すると、流産の危険性や目や神経、運動に支障をきたす先天性疾患に胎児が罹患する恐れがあります。
可愛い愛猫とのコミュニケーションは、信頼関係を築くためには必要なことではありますが、「チュー」については細心の注意をしておく必要があります。
また、何気ない日常の単純な動作や状況で、深刻な感染症に発展しまう危険性があるため、以下のような猫との触れ合いは、「チュー」以外でも気を付けなければなりません。
猫に傷口を舐められる
例えば、乾燥によって唇が荒れ、知らぬ間に切れていたり、口腔内に傷ができたりすることがあると思います。
その部分を舐められたり、舐められた部分をご自身で舐めてしまうことで菌が入り込む可能性があります。
猫に甘噛みされる
目立つ外傷がない場合でも、猫に噛まれてしまったら感染症を引き起こす恐れがあります。
猫はチューの途中で甘噛みをすることも考えられるので、傷口から感染する恐れかあります。
自分の免疫力が落ちている
病後や服薬によって普段よりも免疫力が下がっていると考えられる場合は、より感染症が起こりやすくなります。
免疫力が落ちると、人とペットに共通する感染症に限らず、病気になるリスクが高くなってしまうため、常に細心の注意が必要になります。
猫との濃密な触れ合いをしてしまったなら、そのあとにどんなことに気を付ければよいのか、いくつかポイントを挙げておきます。
もしも、次のようなトラブルがあれば医療機関で事情を説明して治療を受けるようにしましょう。
・ずっと風邪っぽい症状が改善しない
・傷口が化膿している
・皮膚炎などが起きている
早期発見によって適切な治療が受けられれば、その分最悪の事態を回避することができます。
あくまで猫との濃密な触れ合いをしてしまった事後策という前提ですので、それ以前に、猫とのチューを避けるようにする事が賢明です。
まとめ
感染症が移る確率は非常に低いと言えますが、やはり猫とのスキンシップは頬擦り程度にしておくのがよいでしょう。
小さなお子さんがいる方は、子どもが猫と触れ合っている時には一緒にいるようにしましょう。
そして、触れ合った後はしっかりと手洗いをするように心がけてくださいね。