そこで今回は、発言に気をつけて、「相手に自分の意見を伝える時に注意すべきポイント」について確認しておきたいと思います。
無意識に相手を傷つける一言を発してしまうのは、誰もが経験する可能性のある失敗の一つです。
そして、相手に自分の意見を言う時には、注意すべきポイントがあります。
自分が正しいと思っていることを、そのまま人に押し付けてしまうのは、私たちがやりがちな失敗です。
そのような失敗を分かりやすく例えた「群盲象を評す」というインド発祥の寓話があります。
ある真っ暗な小屋の中に一頭の象がいました。
遠い国から見せ物にするために連れて来られたのでした。
噂を聞きつけて、それまで象という動物を見たことがない6人の村人が小屋を訪れました。
暗がりのなかで、それぞれの村人が自分の手で象に触りました。
1人目は象の鼻に触り、「象とはヘビのようなものだ」と言いました。
2人目は象の耳に触り、「象とはうちわのようなものだ」と言いました。
3人目は象の足に触り、「象とは柱のようなものだ」と言いました。
4人目は象の胴体に触り、「象とは壁のようなものだ」と言いました。
5人目は象のしっぽに触り「象とはロープのようなものだ」と言いました。
6人目は象の牙に触り、「象とは槍のようなものだ」と言いました。
6人の村人たちは長いこと言い争い、それぞれが自分の意見を譲りませんでした。
6人の村人が触ったのは象の体の一部ですが、村人たちはその一部を象の正体だと思い込んでしまったのです。
話しが噛み合わないなら、みんなでもう一度明かりを持って小屋を見にいけば解決したはずです。
この寓話と同様に、私たちは自分が感じたことが全てではないこと、視点を変えれば違って見えること、そんな当たり前のことを忘れて、それが全てだと思い込んでしまうことがあります。
「今まで、このやり方でやってきた」という成功体験をお持ちの方もいると思います。
しかし、多面的な視点で物事や人物を捉えることは、よりハイレベルな創造性、イノベーション、チームパフォーマンスに影響を与えます。
視野を広げ、多様性を尊重していくというのは、もはや避けられない大きな流れなのです。
自分の意見の伝え方を確認する前に、
1.人によってさまざまな考え方や正しさがあること
2.自分が間違っている可能性もあること
3.多様性の尊重が重要な時代になっていること
この3つを肝に銘じておきたいものです。
自分の意見をそのまま口に出してしまう人が、思いやりのない人というわけではありません。
そういう人たちは、
「自分の発言が誰かを傷つけるかもしれない」
「誰かを不快にするかもしれない」
「自分の発言が非難されるかもしれない」
といった想像力が欠けているため、無意識のうちに悪気なく言ってしまうケースがほとんどなのではないでしょうか。
思ったことをそのまま口にしてしまう自覚のある人におすすめなのが「想像力を働かせる訓練」です。
自分の意見を言う前に数秒間、「この意見で誰かを傷つけないだろうか」と考えることを習慣にしていきます。
たったこれだけで、攻撃的な発言が減らせるのです。
もしも効果がない場合は、「仕事なんだからこのくらい厳しく言うのは必要」「ミスは厳しく指導するべき」「間違っていることは強い言葉で指摘するのも当然」という信念を持っているケースが考えられます。
しかし、厳しい言動だけでミスの再発が防止できることはないですし、多くの場合、厳しくない方法の方が相手の行動や態度を変えやすいというのが現実です。
最近ではパワハラにならないよう、より一層慎重な態度をとることが必要とされる時代になり、厳しい言動のデメリットは、メリットをはるかに超えています。
「厳しく言うのが当たり前」という考え方をしている人は、この機会に考えを改め、穏やかに伝える方法にシフトしていきましょう。
1.一拍おいてから発言する
相手の意見を聞いた直後に思いついた自分の意見を反射的に口にすると、意図せず誰かを不快にしたり傷つけたりしてしまうリスクが高くなります。
数秒でいいので、これから言おうとしているフレーズが誤解されないか想像力を働かせて予習しましょう。
一拍おいてから発言することを習慣づけることで、リスクを減らせます。
2.他の考え方も認めていることを言葉で伝える
発言のなかに「これはあくまで個人的な意見として申し上げますが…」というように、自分の発言はあくまで私的な意見であり、違う考え方を否定するものではないということを伝えましょう。
3.強要しないよう心がける
自分が正しいと信じていることであっても、その考え方を人に強要しないよう心がけましょう。
上司と部下、先輩と後輩、親子、という関係であってもであっても、強要するのは得策ではありません。
態度変容に強要は逆効果だということを知っておきましょう。
まとめ
何気ない一言で人を傷つけてしまったかも…と、自覚のある人もおられるのではないでしょうか。
しかし、言葉を選びすぎて、当たり障りないことしか言えなくなるのもあまり感心できません。
人と深い付き合いをするには、相手を傷つける可能性がもしかしたらあるということをいつも念頭に置いておくことが大切なのだと思います。