反抗期に入った子どもに対して、親はどういった態度で接すればよいのでしょうか。
子どもの性格や反抗期の現れ方にもよりますが、学校や児童相談所のカウンセラーとしても活躍し、40年以上、あらゆる親子の問題に寄り添ってきた諸富祥彦先生著書『反抗期乗り切りマニュアル―「こんな時どうしたらいい?」がわかる』を参考に、思春期の子どもの反抗タイプや、そのエピソードと対応法をご紹介します。
思春期の子どもの心は常にモヤモヤしています。
「このままじゃダメだ」という焦りや「誰もわかってくれない」という怒り、「自分をわかった気になってほしくない」という苛立ちなどが渦巻いているためです。
さらに、こういった複雑な気持ちを的確に伝える言葉や解消法を持っていないため、自分でもどうしたらいいのかわからないまま「反抗」という形でモヤモヤを表現しようとします。
我が子が思春期に突入すると、大半の親が「最近、子どもがどうしちゃった!?」とか「前はあんなにパパママっ子だったのに、変わってしまった」と戸惑います。
無愛想になったり、話しかけてもスマホに夢中で返事をしなかったり、あるいは情緒不安定で感情を爆発させるという態度は、思春期にはよくある姿です。
しかし、どれも自分づくりの過程で見られることなのだと寛容に受け止めてください。
思春期の反抗タイプには3つの代表的なものがあり、それによって注意すべきポイントや対応のコツがあります。
思春期の代表的な反抗タイプ
1. 親が話しかけても返事をしない「コミュニケーション回避タイプ」
2.『うるさい!』『ほっといて!』と反発する「闘争タイプ」
3.『このままで大丈夫?』と親のほうが心配になる「反抗期がほとんどないタイプ」
3つのタイプのうち、1.の「コミュニケーション回避タイプ」は反抗期の約5割を占めると考えられます。
とはいえ、Aさんは「コミュニケーション回避タイプ」で、Bさんは「闘争タイプ」と明確に分けられるものではありません。
1.と2.は、ひとりの中に共存していています。
時には同時に1.と2.が見られる場合もあり、たとえば親が話しかけても何も答えず、ドアを乱暴にバタンと閉めてどこかに行ってしまうといったパターンです。
また、3つのタイプには男女差もありません。
1.の「コミュニケーション回避タイプ」は親が話しかけても答えない、かといって口を開いても「別に」「さぁ」「知らない」と気のない返事をするパターンです。
反抗期の初期段階は、このタイプが特に多く見られます。
反抗期に入る前は、学校から帰ってくると「ねぇねぇ、聞いて」と子どものほうからその日あった出来事や友だちの話や好きなアイドルの話などをしてくれたのが、いざ反抗期に突入すると、親が聞いても教えてくれなくなります。
「コミュニケーション回避タイプ」の反抗期は、自分の世界を大切にしている結果です。
したがって、コミュニケーションをとらなくなったからといっても、すべてが親への反抗や不平不満から起こっているものではないことは心に留めておいてください。
思春期の反抗的な態度は、大人になるための大切なプロセスであることは頭ではわかります。
しかし、子どもからの反応が薄いと親としてはどうしても心配で、後追いしたくなるものです。
「コミュニケーション回避タイプ」の対応のコツとしては、子どもが親とのコミュニケーションを拒絶して、心のシャッターを下ろしてしまったら、それ以上の後追い・侵入をしないことです。
返事がないからといって執拗に質問攻めにするのはやめましょう。
昔話の『鶴の恩返し』と同じように考えてください。
子どもたちは自分づくりのために「見ないで」といっているのですから、自分の部屋や殻に閉じこもっていても無理に追いかけないことです。
親は子どもが無反応だと『おかしなことを考えているんじゃないか』『何を考えているんだろう』と余計に知りたくなるものですが、それでも持ち物やスマホをチェックしたり、勝手に部屋をあさったりしてはいけません。
思春期の子の立ち入り禁止エリアに親が無断で入った場合、子どもは『自分の世界が荒らされた』と思って、完全に心を閉ざしてしまいます。
そうなると親子関係の修復は非常に難しくなります。
「コミュニケーション回避タイプ」が見られる子どもの様子は、我慢強く見守り、必要なときにいつでも話を聞いてあげる心づもりを持って関係づくりをしてください。
また、子どもの話を根掘り葉掘り聞くよりも、親のほうから『今日のカレーおいしくできたね』とか『会社の帰りに○○なことがあった』などの話を振ってみましょう。
無理にコミュニケーションをとらなくても興味があることであれば、子どもも話に乗ってくるはずです。
親の質問には答えないけれど、逆に親が子どもの話を聞かないとイライラが爆発するケースです。
反抗期になり、学校や友だちのことを聞いても何も話してくれなくなったA君。
その一方で、自分が伝えたいことは一方的に親に話してくることがあります。
子どもの話をちゃんと聞いていないと「ちっとも人のいうことを聞いてくれないんだから!」と怒り、「もう1回いって」と頼んでも、「イヤだ。もう絶対にいわない!」といって、もう何も教えてくれません。
このケースは、実は子どもが親とコミュニケーションをとりたがっている例です。
「一方的に話してくる」ということは、親にメッセージをたくさん送っている証拠です。
反抗期なので、決して素直な態度ではないし、伝えたいタイミングも親の都合と合わない場合もありますが、生返事で返したら「なんで聞いてくれないの!」となるのは必然です。
子どもの話を聞いてあげることはとても大事なことです。
それを頭でわかっている親御さんは多いものですが、ぜひ行動でも示してあげてください。
我が子からコミュニケーションをとりたいというメッセージに気づいたら、手を止めて向かい合って話を聞いてあげましょう。
すぐに手が離せないなら、「5分待って、これを終わらせるから」などと伝え、話を聞きたいという態度を表してください。
子どもからの発信は予告なく行われるので、敏感にアンテナをはっていないとコミュニケーションチャンスを逃しそうになります。
しかし思春期の場合は特に、親がどんな対応をして信頼に値するのか子どもが試しにきていると思って、そのチャンスを逃さないことが大切です。
まとめ
反抗的な態度をされるとどうしてもその反抗的だという一点の印象が強くなりますが、思春期の行動はもっと全体像を捉える必要があります。
親として、子どもが生きている思春期、反抗期という世界そのものを、一緒に寄り添って見てあげましょう。
『反抗期乗り切りマニュアル―「こんな時どうしたらいい?」がわかる』