この年代の子どもは「難しい年ごろ」といわれるほど繊細で複雑です。
だからこそ、子育てにもこれまでとは違ったコツが必要になってきます。
今回は、学校や児童相談所のカウンセラーとしても活躍し、40年以上、あらゆる親子の問題に寄り添ってきた諸富祥彦先生著書『反抗期乗り切りマニュアル―「こんな時どうしたらいい?」がわかる』より、思春期の子どもを持つ親がやりがちな「NG行為」4選をご紹介します。
思春期は、自分なりの新しい価値基準を形成して親とは違う自分につくり変える時期です。
また、身体的にも変化が起こり、心身ともに大人へと急速に成長する自分に、子ども自身が追いついていない期間でもあります。
成熟していく身体の中に大人と子どもが共存しており、自分でもどうにもならないギャップが反抗的な態度だったり、感情の爆発となったりして表面化するので、親としては子育ての難しさにつながるわけですが、そんな子どもに対抗しても事態は悪化するだけです。
この時期を乗り越えるコツは、『親が先に大人になること』でしょう。
そこで、思春期の子どもを持つ親がやりがちなNGワード&行動をご紹介します。
我が子が反抗期に入ったら、親が先に大人になることを意識して、接し方を変えていきましょう。
NGワード&行動1.「質問責め」
「ちゃんと勉強してるの?」「○○ちゃんとはどうなったの? それと△△もどうなった?」など、心配が講じて知らないうちに子どもを質問責めにすることがあります。
しかし、思春期の子どもにはこれらは悪い効果しか生みません。
質問責めを不快に思った我が子は、おそらく口をつぐんで何も話さなくなっていくはずです。
彼らにとって、プライベートなことは何よりも大事な領域ですから、たとえ親でも無神経にズカズカと踏み込まれることを嫌がります。
大切なのは、日常の些細なことにはできるだけ口を挟まないこと。
子どもは聞いてほしいことがあるときには、親から聞かれなくても自分から話してきます。
子どもが歩み寄ってきたときに親子のコミュニケーションをじっくりと図ればいいのです。
NGワード&行動2.「子どもと同じ目線になる」
「そんなのみんなやってるし、なんでウチだけダメなの!?」
「何もわかってないのに、簡単にいわないで!」
など、子どもが反抗的な態度をとると、親もついカッとなることがあります。
しかし、ここで親が子どもに負けじと声を荒らげたり、正論で追い詰めたりするのはNGです。
お互いに引っ込みがつかなくなって、最悪の場合は親子関係が修復不可能な域にまで達するかもしれません。
思春期の子どもを育てていると親もイラっとする場面はありますが、ここで子どもの怒りに引きずられないように、「親のほうが先に大人になる」ことを思い出すのです。
怒りが込み上げてきたら、とにかくその場から離れましょう。
別の部屋に行くのでもいいですし、いったん外出するのもいいでしょう。
クールダウンの時間として、2時間が目安にしてください。
距離が必要だからといって子どもを外に出ていかせることはNGです。
家出のきっかけになるばかりか、夜の場合は別の危険も潜んでいます。
その場から離れ、外に出るのは親の役割です。
2時間を長いと感じる方もいますが、これは「魔の2時間」とも呼ばれ、イラっとしたあとの2時間をどう避けられるかで、その後の親子関係が大きく変わると言っても過言ではありません。
物理的に距離をおくと親子ともども冷静になれるので、頭に血が昇ったらとにかく親からその場を離れることが大切です。
NGワード&行動3.「最終的に説教する」
思春期の親子にとって、子どもがSOSを出せる、あるいは親がSOSを受け取れる関係は作っておきたいものです。
実際に誰かに弱音を吐くことは大切だと思っている親もとても多いのです。
しかし、せっかく我が子が勇気を出して不安や相談をしてきても、気づかないうちにNG言動をとる親が後を絶ちません。
子どもから相談を受けると、「それくらい大したことはない」などといって、せっかくのSOSを知らず知らずのうちに打ち返してしまう親もいます。
5分我が子の話を聞いたら、5分説教するパターンです。
SOSはとにかく受け止めてあげるだけに徹してください。
「○○君(ちゃん)、つらいことを教えてくれてありがとう」といったあとに、「でもさ、○○君(ちゃん)も悪いところあるじゃない?」なんて説教は不要です。
また、その場で解決しようと考えないようにしましょう。
子どもも簡単に解決できるものではないとわかっていますし、実際に解決できない場合が多いのです。
子どもの問題だからと親が勝手に簡単に考えて、大人の価値観を押し付けて解決しようとすると、「大問題なのに舐めてる」「この親に話してもだめだ」と捉えられて、もう子どもから何も話してくれなくなります。
NGワード&行動4.「無理やり取り上げる」
子育てにおいて、暴力が子どもの心身に悪影響を与えることは多くの親が知っています。
しかし、暴力は叩くといった身体的攻撃だけとは限りません。
時代が令和となり、ますます私たちの生活にはスマホが必需品となっています。
今の親世代が思春期だったときよりも、子どもの生活に深く入り込んでいて、ゲームやSNSなどのいきすぎた利用が問題を生んでいます。
だからといって無理やり取り上げるのは暴力と同じだということを理解してください。
思春期に子どものスマホを無理やり取り上げて、それ以降10年も親と口をきかなかった例もあります。
残念なことに、自分は子どものために正しいことをしていると考えて暴力的な手段に出る親がいますが、いくら子どものための正しい行為だからといって、何をやってもいいわけではありません。
「それじゃあゲームをいつまでもやってていいんですか?スマホで遊んでていいんですか?」と危惧される方もいますが、暴力のほうがはるかに親子に悪影響を与えるのです。
深刻な場合は、親子間だけではなくカウンセラーなどの専門家を交えて話し合うなど、暴力以外の解決策を探るようにしましょう。
子どもが思春期に見せる困った振る舞いに、親は振り回されることがあります。
しかし、子どもの行為や言葉に引っ張られて怒りをヒートアップさせたり、逆に押さえつけるとますます反発していきます。
何度も言いますが、この時期に大切なことは、「親のほうが先に大人になる」ことです。
怒りや心配がエスカレートして爆発しそうになったら、親から子どもと距離を開けましょう。
クールダウンすることで、冷静に我が子と向き合えるようになります。
そうならないために、子どもの話は丸ごと聞いて共感してあげてください。
「つらかったね」「大変な思いをしたんだ」「悲しいね」と、それで十分です。
子どもから弱音を吐かれたときに、多くの親がアドバイスをしないと親としての役目を果たした気分にならないようですが、上から目線の言葉はまったく必要ありません。
思春期の子どもに必要なのは、どこまでも共感することだと覚えておきましょう。
まとめ
とはいえ、わかっていても、いざ豹変した我が子に直面すると親は戸惑ったり、心配になったりします。
その時に親が子どもの目線まで下がって対等にやり合うのはNGです。
親は大人として、感情的にならずに話を冷静に聞き、共感するだけにとどめましょう。
子どもは説教やアドバイスを聞きたくて話しているのではないのですから。
『反抗期乗り切りマニュアル―「こんな時どうしたらいい?」がわかる』