それに伴って親には歯向かったり、抵抗したりする反抗期に入ります。
親子がぶつかりがちな時期ですが、かといって、まったく反抗期を感じさせず、ずっと親にベタベタしているのも成長の面で心配ですね。
時代が令和となり、親世代のときとは違って思春期の反抗期も変化しているようです。
今回は、学校や児童相談所のカウンセラーとしても活躍し、40年以上、あらゆる親子の問題に寄り添ってきた諸富祥彦先生著書『反抗期乗り切りマニュアル―「こんな時どうしたらいい?」がわかる』より、今どきの思春期の反抗期とその対応術をご紹介します。
小学校高学年ごろから見られる思春期の反抗期。
個人差はあれ、成長過程にはそれがあるとわかっていても、いざ豹変した我が子に直面すると、急速な変化とその扱いにくさに親は戸惑うことも多いはず。
子育て中の親にとって、思春期はもっとも悩みの多い時期です。
「難しい年ごろ」と称されるほど繊細で複雑な思春期だからこそ、親にもさまざまな感情を呼び起こし、戸惑わせます。
思春期を解説する前に、まずは子育てのステージについてご紹介します。
子育てには次のような3つの段階があるのです。
子育ての3つのステージ
1.0~6歳前後(乳幼児期) “心の土台”をつくる時期
2.6~10歳前後(児童期) “社会のルールや協調性”を学ぶ時期
3.10歳以降(思春期) “自分づくり”に取り組む時期
このように思春期は、親とのつながりが深かった幼い自分から、親とは違う自分につくり変える時期を指します。
他者からの視線や評価にも敏感になり、不満や不安、焦り、劣等感を感じるほかに、自分を誇らしく思って自信をつけるタイミングでもあります。
しかも、これらプラスとマイナスの感情が心の中で激しく入り混じると同時に、体にも変化が起こるため、心身ともに大人へと成長する速度に、子ども自身が追いついていないのが思春期という時期なのです。
ひとりの子どもの中に「自立したい自分」と「まだ親に甘えたい自分」がいたり、「理想の自分」と「現実の自分」がいたりして、常に葛藤していて、さまざまな面でアンバランスであることが、子育ての難しさにつながります。
さらに、この時期の子どもは、親よりも友だちとの関係が重要になり、これまでとは違ったストレスにもさらされます。
たとえば「周りに合わせなきゃ」とか「浮かないようにしなきゃ」といったプレッシャーも強まります。
1日の大半を過ごす学校で息苦しさを感じつつ、自分の居場所をつくろうと頑張る子もいます。
そういったさまざまなフラストレーションが子どもの内面をさらに複雑化させ、「難しい年ごろ」になっているのです。
思春期は自分の中で常に葛藤していて、ストレスフルな時期です。
そのため子育ても一筋縄ではいかなくなりますが、子どもの成長にとってはメリットもあります。
思春期は子ども本人にも、子育てをする親にも大変な時期ですが、何もデメリットばかりが起こる時期ではありません。
思春期があるからこそ、子どもには次のような3つの力が育まれます。
思春期に育まれる3つの力
1.自分設計力
2.レジリエンス力
3.悩む力
1.の自分設計力は、自分をつくる力のことです。
思春期は親とは違う自分につくり変える時期で、自分なりの新しい価値基準を形成していきます。
したがってこの間に重要なことは、親が先回りしたり、安易に安全な道に引き戻したりしないことです。
親の価値観を押しつけるのではなく、自分づくりを後押しする姿勢が大切です。
2.のレジリエンス力とは、挫折から立ち直る力を指します。
思春期は、悔しさや悲しみなどの経験から、自分で心の中を整理して立て直す術を育みます。
困難に打たれ弱い大人にならないためには重要な力です。
3.の悩む力にはネガティブなイメージを持たれる方も多いと思いますが、この力を手に入れることは思考力の向上にもつながります。
きちんと悩むことができる人は、人生の問題にしっかりと向き合える人になれるでしょう。
子どもに何か問題が持ち上がった場合、親はつい手を差し伸べたくなりますが、思春期は親が先回りして正解を出したり、安全な道を用意したりするのを意識的に控えたい時期です。
3つの力がよりよく育つように、親が子育てのスタンスを見直す時期でもあります。
子どもが思春期に入ると、親と一緒に親の価値観で生きてきた幼いころと違って、子どもも自分の意志を持って歩き出します。
したがって、いつまでも子ども扱いせず、独り立ちをバックアップする姿勢が必要です。
思春期の子育ての基本スタンスは、『子どもから離れて見守る』ことです。
親としての責任や愛情はこれまでどおりなので、口も手も出したい衝動に駆られますが、そこはグッと我慢してください。
必要以上の干渉は支配にもつながることを心に留めておきましょう。
子どもが大人になるための過程として、一歩引いて見守ることが大切とはいっても、親から見ると思春期はまだまだ未熟で不安定ですよね。
この時期の子どもを上手に見守るコツとしては、子どもが話しやすい空気を必要なときに親がつくってあげることです。
普段は意識的に子どもと距離をとっていても、助けてほしそうなときには「話せばスッキリするかもよ」と親からサラリと伝えて、弱音をいえる場を提供してあげるのです。
また、「見守る」とともに「寄り添う」ことも思春期の子どもを持つ親が心がけたいですね。
大人へと成長する段階の子どもは、もう大人が一方的に導く存在ではありません。
かといって、まったくの野放しでいい時期でもありませんから、必要なときに側で支えられる親になりたいものです。
親は子どもから助けを求められたら、それに対してジャッジをしてしまいがちですが、余計なジャッジをすると、子どもが人生態度を親任せにするようになることになりかねません。
いい・悪いは親が考えることではなく、子ども自身が考えて気づいていくべきことです。
ですから、親は子どもの話をただ聞いて、つらさや悲しみをそのまま受け止めてあげるだけでOKです。
「つらい気持ちを親がわかってくれた」「自分の意見や思いが通じた」という経験が子どもの中で積み重なっていくと、親への信頼度も増していきます。
それがまた、必要なときに「寄り添える子育て」につながります。
親は子どもの悩みや問題に対してジャッジする必要はありません。
子どもの話に共感することが最優先事項です。
親離れをする子どもは、時として反抗的な態度を取ったり、悪ぶったり、周囲もびっくりするような乱暴な言葉を使ったりもします。
いわゆる「反抗期」に対して親が感じるイライラや怒りが、心配というネガティブな感情や行動となって現れるのです。
これを断ち切るには、親が楽観的に物事を捉える力が必要です。
親がどれほどクヨクヨと考えたとしても、物事はなるようにしかなりません。
結果はおのずと落ち着くところに落ち着きます。
子どもがいろいろ困った行動に出ても、危険なことや他人を傷つけること以外は、楽観的に受け止めて、子どもを肯定する声がけを心がけてみてください。
まとめ
親が手や口を出したくなるような場面がたくさんありますが、どっしりと構えて、どれも我が子の成長のチャンスと捉えてみましょう。
親は楽観性を身につけることで、子どもの「難しい年ごろ」を大らかにすごすことができるはずです。
『反抗期乗り切りマニュアル―「こんな時どうしたらいい?」がわかる』