ところで、あなたはパスポートの「残存有効期間」をご存じでしょうか?
「残存有効期間」とは、パスポートの有効期限が切れるまでの残り日数のことですが、日数が足りないと、入国できない国もあります。
今回は、うっかりではすまされない、「残存有効期間」について、ご紹介します。
パスポートの「残存有効期間」によるトラブル事例をご紹介します。
今年の8月、20代のAさんは、彼氏と二人でバリ島に行く計画を立てました。
彼氏がエアチケットとホテルをネットで予約し、旅行の予算を少しでもレジャーに回したいと考えて、航空会社は外資系のLCCを選択。
どこで遊ぼうかとガイドブックを見ながら計画を立てたりして、旅行のテンションを少しずつ上げて行きました。
そして出発当日、スーツケースを抱えて、張り切って二人で羽田空港に向かったのです。
空港でポケットWi-Fiを借り、ネックピローを首に巻き付け、いざ出発!と、航空会社のカウンターへ。
スーツケースに荷物を詰め込み過ぎたAさんは、「この重さで通るかしら」と重量制限の心配をしていたところ、スタッフから思いもよらない言葉を投げかけられます。
「あなたは、この飛行機には乗れません」
「は?」
言っている意味が分かりません。
スタッフはAさんの目を見て、ゆっくりと丁寧な口調で話し始めます。
「あなたのパスポートは残存有効期間が6カ月未満です。だからこの飛行機には乗れません」
Aさんのパスポートの「有効期間満了日」は12月です。
「まだ5カ月あるから大丈夫」と思っていましたが、航空会社のスタッフ曰く、バリ島があるインドネシアは、パスポートの「残存有効期間」が6カ月以上なければ入国できない決まりになっているとのこと。
想定外の展開に、なんとかならないかとスタッフに訴えましたが、「これは国の定めたルールなので」と取り合ってもらえず、結局、二人は羽田空港で追い返されることになったのです。
当日キャンセルのため、二人分のエアチケットとホテルの料金は返金されず。
Aさんはショックのあまり空港で大泣き、旅行の予約をした彼氏も責任を感じて、激しく落ち込みました。
あまりに可哀そうな様子に、空港にいた外国人が二人を慰めにくるほどだったといいます。
「パスポートに有効期間があるのは知っていたし、旅行当日も『パスポートを忘れてはいけない』という認識は持っていました。
でも、『残存有効期間』というのがあって、その期間がインドネシアは『6カ月以上必要』ということは、今回、初めて知りました。
自分にそういう知識がなかったことがいけなかったですし、すべての予約を彼氏に任せて、自分自身の確認を怠ってしまったこともいけなかったと反省しています…。
この記事を書いている私自身も、今回初めてパスポートの「残存有効期間」という存在を知りました。
そもそも海外旅行は旅行代理店に手配を全面的に依頼することが多いので、パスポートのトラブルに見舞われた経験はありません。
しかし、調べてみると、外務省のホームページでは、パスポートの残存有効期間の確認に関して、強く注意喚起しています。
各国が外国人のパスポートに求める残存有効期間は、滞在期間や入国目的等により様々ですが、おおよそ3~6ヶ月以上とされている場合が多く、長期滞在を予定している場合には、滞在予定期間よりも長い残存有効期間を求められる場合もあるため、海外渡航を計画する際には、日本にある当該国の大使館、総領事館等に必要となるパスポートの残存有効期間をぜひ確認するようにしましょう。
また、パスポートの残存有効期間は各国で定められていて、海外旅行に行く前に、必ず訪れる国の残存有効期間を確認しておくほうが良いようです。
(参考:ANAホームページ:https://www.ana.co.jp/ja/jp/guide/plan/int-info/passport/)。
パスポートの残存有効期間が必要なことは理解できましたが、パスポートには取得した日からカウントされた「有効期間」も存在しています。
その日数よりも“未満”であれば、Aさんのように「まだ期間があるから大丈夫」と勘違いしてしまう人も多いのではないでしょうか。
普通に私たちが考えるとき、割引券や会員証も、有効期間ギリギリまで使えるのが常識ですよね。
そんな中で、実はパスポートには残存有効期間も必要なのです、などというダブルスタンダード的なルールがあることは、多くの人が知らないと思います。
実際、同じようなトラブルが起きているのではないかとSNSで検索してみたところ、やはりここ最近、残存有効期間不足で空港で追い返されるケースが多いことが分かりました。
例えば、
「友達がパスポートの残存有効期間が足りなくて来れなくなり、急に一人旅になった」
「カウンターに行くとパスポートの残存期間がなく、飛行機に乗れなかった」
「先輩がパスポートの残存期間が足りずフライトに乗せてもらえない事案が発生」
など、SNSには数々の悲しいコメントが見受けられます。
果たしてどのくらいの人が、パスポートの「残存有効期間」の存在を知らないのでしょうか。
あるリサーチ会社で20代の200人の男女にアンケート調査を行ったところ、約7割の人が残存有効期間を「知らなかった」と回答しています。
あまり知られていない結果となっていますし、今後も同じようなトラブルにあう可能性が引き続きありそうですね…。
だからといって、20代の7割の人が、みなパスポートの残存有効期間が足りなくて、空港で追い返されるのかといえば、そういうわけではないようです。
旅行代理店で予約すれば、当然、スタッフが残存有効期間を確認してくれるでしょうし、ネットでエアチケットを予約しても、パスポートの有効期間を入力した段階で「残存有効期間が足りません」と表示され、予約ができなくなるシステムを組んでいる航空会社もあります。
しかし、今回のように、旅行代理店を使わず、残存有効期間が足りないパスポートを、自動的にはじくシステムがない航空会社を利用した場合、Aさんのような悲惨なトラブルに巻き込まれてしまう可能性が出てきてしまうのです。
この残存有効期間のトラブルは、今後、多発することが予想されます。
コロナ前に「5年」の有効期間でパスポートを申請した人は、ちょうどこれから残存有効期間がギリギリになっていく時期に差し掛かるからです。
コロナでしばらく海外旅行に行けなかったので、残存有効期間の存在を忘れてしまっている方も数多くおられるのではないでしょうか。
お金を少しでも節約するために、安い外資系のLCCを予約するのは、ネットで予約することにも慣れている若い人に多いと思われます。
なので、残存有効期間を知らずにスマホやパソコンから簡単にエアチケットを取ってしまうのではないでしょうか。
このパスポートトラブルを未然に防ぐ方法はあるのでしょうか。
効果的なやり方としては、航空会社のすべての予約システムに、パスポートの残存有効期間が足りないと、強制的に入力ができなくなる仕組みを取り入れてもらうことです。
いやいや、安く飛行機に乗れるんだから、残存有効期間ぐらい自分で確認しろよ、と言われてしまえばそれまでですが、海外旅行未経験の若い人が乗る可能性が高いLCCであれば、せめてそのようなセーフティシステムが導入されていれば、空港で追い返される人を少しでも減らすことができるのではないかと思われます。
もうひとつの防御策は、今回の記事のような「パスポートの残存有効期間のチェックを忘れて酷い目にあった」という体験談を、できるだけ多くの人で共有することです。
本人が「知らない」ことを気づかせるのは、実はかなり難しいのです。
たとえば、山手線で事故が発生し、電車が運休している場合、その事故を知らない人は、「山手線は動いている」という認識のもとで、知らずに駅に向かってしまいます。
その人たちに「なぜ、山手線が運休していることを知らないんだ」と言っても、そもそも事故が発生したことを「知らない」のだから、「調べる」ことはしませんよね。
つまり、今回の残存有効期間と同じで、「知らない」ことは、知る術がなく知ろうともしないので、気づかせてあげることも、教えてあげることもできないのです。
この記事を読んだ方は、ぜひ多くの方と共有してください。
「パスポートの残存有効期間が足りなくて、泣く泣く空港から引き返した人がいる」というショッキングな話を、多くの人と共有することが、実は同じようなトラブルを未然に防ぐ最も効果的な防御策になると思います。
まとめ
中には「残存有効期間」を「有効期間」と勘違いしている人もいると思われます。
それであれば、人々の記憶には残りやすいもっとインパクトのある「パスポートの残存有効期間」のトラブルエピソードを共有して、多くの人にことの重大さを認知してもらったほうがいいのではないか、とも思います。
パスポートの残存有効期間を知らずに、空港で追い返されてしまう人が一人でも減るように祈るばかりです。