よって定年を65歳未満に定めているのであれば、定年制の見直しまたは65歳までの継続雇用制度の導入が必要になります。
また、2021年法改正により、65歳までの雇用確保の義務化に加えて、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務となりました。
このように65歳以上になっても働いて収入を得る方は増加傾向にあります。
今回は、実際65~69歳で働く人の割合や平均年収についてご紹介します。
働いて収入を得ることで、原則65歳から受給開始の、老齢年金の受け取りを最大75歳まで遅らせることができる「繰り下げ受給」の利用も、心置きなく選択することができます。
繰り下げ受給は、年金受け取りを1カ月遅らせるごとに0.7%増やすことができ、受給開始を70歳にすれば42%、75歳にすれば84%も増額します。
増額された年金額は一生涯もらえるので、長生きのリスクに備えるために有効な方法といえるでしょう。
では実際、65~69歳に働く人の割合はどのくらいなのでしょうか。
2022年版の高齢社会白書によると、2021年の労働力人口は6,907万人でした。
そのうち、65~69歳は410万人(6%)です。
また、同調査での一定年齢で区切った2021年の就業率を見ると、65~69歳は50.3%です。男女別の就業状況では、男性が60.4%、女性は40.9%となっています。
以前であれば、65歳を過ぎたらリタイアしてゆっくり暮らすというイメージがありましたが、最近では、男性・女性ともに約半分の人が働いていることがわかります。
高い割合で就業している65~69歳の人々の雇用形態で多くを占めているのは「非正規職員」です。
65~69歳の役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員の比率を男女別に見ると、男性は67.8%、女性は83.9%となっています。
パート、アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員、嘱託などの雇用となり、実際の業務内容は定年退職前と変わらないのに、退職前に比べて給与水準が下がる場合もあります。
それでも働く理由として、継続的な収入が得られること、生活リズムが整うことなどのメリットが動機付けになっているのではないでしょうか。
では、65~69歳の平均年収を厚生労働省の「2022年賃金構造基本統計調査の概況」で確認してみます。
それによると、男女をあわせた平均賃金は257,600円で、年収に換算すると3,091,200円です。
また、男女別では、男性の平均賃金が274,500円(年収換算すると3,294,000円)、女性の平均賃金が216,200円(年収換算すると2,594,400円)となっています。
65歳以降になると、多くの人は非正規雇用で働きますが、要件を満たすことで厚生年金に加入でき、65歳時点で受け取れる年金をさらに増やすことが可能になります。
実際、上記の男性・女性の平均賃金であれば、どのくらい年金が増額になるのかをみてみましょう。
●男性の平均賃金が約27万円で厚生年金に加入した場合
男性の平均賃金約27万円の場合、標準報酬額は「28万円」
28万円×5.481/1000×12カ月=1万8416円≒約1万8000円増額
定年後、厚生年金に加入して、月給与27万円(年収324万円)で1年間働いた場合、将来もらえる年金額は年額で約1万8000円増えます。
もし5年働けば、将来もらえる年金は約9万円増えます。
●女性の平均賃金:約22万円で厚生年金に加入した場合
女性の平均賃金約22万円の場合、標準報酬額は「22万円」
22万円×5.481/1000×12カ月=1万4469円≒約1万4000円増額
定年後再雇用されて、月給与22万円(年収264万円)で1年間働いた場合、将来もらえる年金額は年額で約1万4000円増えます。
もし5年働けば、将来もらえる年金は約7万円増えます。
65歳以降も働き続けると、毎月の定期収入が得られると同時に、将来の年金受給額を増やせるという効果も得られるのです。
毎月の定期収入を得ながら、将来の年金受給額も増額になるというのはうれしい話ですが、厚生年金の適用事業所で働くときは、在職老齢年金制度に注意する必要があります。
在職老齢年金制度とは、60歳以上で老齢厚生年金を受け取っている人が(繰り下げしている人も含む)厚生年金適用事業所で働いている場合、老齢厚生年金の基本月額と給料の合計が48万円を超えると、年金額が全額停止されたり、一部停止になったりする制度です。
(老齢基礎年金は全額受給できます。)
在職老齢年金で老齢厚生年金がカットされる可能性がある場合は、まず自分の月収や老齢厚生年金額を確認して、わからないことがあれば基礎年金番号がわかるものを用意して、ねんきんダイヤル(0570-05-1165)に問い合わせるか、お近くの年金事務所へ直接相談にいくことをおすすめします。
まとめ
身体が元気であれば、定年後も働き続けることによるメリットは大きいですし、働いて継続的に収入を得ることができれば、原則65歳から受給開始の老齢年金の受け取りを最大75歳まで遅らせる「繰り下げ受給」の利用も、心置きなく選択できるからです。
自分の寿命が何歳までなのかということは、誰にもわかりません。
人生の最後まで、生き生きと充実した人生をおくるために、安心材料として定年後の就労を考えてみるのはいかがでしょうか。