『不登校新聞』編集長の石井志昂さんは「不登校は、いじめや学校内での競争、勉強のストレス、友人関係など、原因が重なり合って起きるため、クラスの人気者や勉強ができる子でも不登校になることはあるのです。
今回は、石井志昂氏著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』から、学校に行きたがらない子に親が何をできるのかについて考えたいと思います。
最初にことわっておくと、どんな子でも不登校になる可能性はあります。
不登校の子どもたちというのは、決して一部の特殊な子どもではなく、クラスの人気者や、勉強ができる子、運動ができる子、コミュニケーションスキルが高い子、どんな子どもでも、学校や家庭での何かしらの不具合が重なって不登校につながる可能性はあるのです。
不登校は言わば「心がオーバーヒートした状態」だと表現することもできるでしょう。
電池が切れるように体が動かなくなり、自分を守る安全装置が作動している状態なのです。
また、不登校と聞くとずっと家にいるイメージがあるかと思いますが、実際は週に2、3日は学校へ行っている子もたくさんいます。
学校は年間30日以上休むと不登校の定義に当てはまるため、ひと月に3、4日休み続けると該当してしまうのです。
それを踏まえたうえでの文科省の調査によると、小・中学生における不登校児童生徒数は年々増加を続け、2021年度は前年度から4万8813人(24.9%)増の24万4940人となり、過去最多を記録しています。
コロナ禍の影響もあり、学校に行きづらい子どもが増えたと分析されています。
学校に行きたくない理由はひとつではなく、いくつも重なり合っています。
文科省の調査による不登校児童へのヒヤリングでは、学校に行きたくない理由が平均3つ程度あがっています。
一番多いのが「友人との関係」で53.7パーセント。
次が「生活リズムの乱れ」で34.7パーセント。
「勉強が分からない」が31.6パーセント。
そのあと、「先生との関係」が26.6パーセントと続きます。
不登校児童の多くは、いじめや学校内での競争、勉強のストレス、友人関係などが複合的に重なり合って、バーストしてしまったイメージです。
学校に行きたくない理由として一番多くあがった「友人との関係」のなかでも、いじめはとくに心配される方が多いと思います。
子どものいる世界は、親が思っている以上に過酷で、女子は小4ごろから、男子は中1ごろから、クラス内にカーストができると言われています。
文科省の調査によると、小・中・高校が認知したいじめはここ最近、低年齢化が進んでおり、2019年度のいじめ61万2496件のうち、小学校で起きたいじめは約8割にあたる48万4545件となり、過去5年間で3倍以上に増えています。
ちなみに、中学校でのいじめは10万6524件、高校は1万8352件となっています。
いじめ発生のピークも10年前は中1でしたが、今はなんと小2がピークです。
不登校の小学生の人数も2016年頃から急増し、ここ数年で倍増しました。
いじめは大人から見えにくいところで進行していきます。
クラスの中だけでなくSNSなどでもいじめは広がります。
そして、子どもはなかなか大人には話したがりません。
評論家の荻上チキさんが代表理事を務める「ストップいじめ!ナビ」では、次のような「いじめ発見」チェックシートを作っているので、子どもに少しでも異変を感じたらぜひ参考にしてみてください。
【言動・態度・情緒】
1.学校へ行きたがらない。「転校したい」や「学校をやめたい」と言い出す。
2.ひとりで登校したり、遠回りして帰ってくるようになる。
3.イライラしたり、おどおどしたりして落ち着きがなくなる。
4.お風呂に入りたがらなかったり、裸になるのを嫌がる。
5.部屋に閉じこもることが多く、ため息をついたり、涙を流したりしている。
6.言葉遣いが乱暴になり、家族に反抗したり八つ当たりをする。
7.学校の様子を聞いても言いたがらない。友だちのことを聞かれると怒りっぽくなる。
8.いじめられている友人の話、友だちや学級の不平・不満を口にするようになる。
9.すぐに謝るようになる。
10.無理に明るく振る舞おうとする。
11.外に出たがらない。
12.電話に敏感になる。友だちからの電話にていねいな口調で応答する。
13.「どうせ自分はだめだ」などの自己否定的な言動が見られ、現実を逃避することや死について関心を持つ。
【服装・身体】
14.朝、腹痛や頭痛など、身体の具合が悪いと訴える。トイレからなかなか出てこなくなる。る
15.衣服の汚れが見られたり、よくケガをしたりするようになる。
16.寝付きが悪かったり、眠れなかったりする日が続く
【持ち物・金品】
17.学用品や所持品、教科書を紛失したり、落書きされたり、壊されたりする。
18.家庭から物品やお金を持ち出したり、余分な金品を要求したりする。
【その他】
19.親しい友だちが家に来なくなり、見かけない子がよく訪ねてくるようになる。
20.親の学校への出入りを嫌う。
「なんで学校に行けないの?」と子どもに言うのは代表的なNGワードで、かえって追い詰めてしまう言葉です。
子どもとしては、説明がしにくかったり、まわりにわかってもらえないかもしれないと思ったりして、言葉に詰まってうまく言い表すことができないのです。
そんなに苦しい状況にあるなら、なぜ苦しんでいるのか。それを自分の言葉として説明できるようにしないといけないと言う人もいるでしょう。
しかし子どもは、そこを問い詰められると、非常にもどかしく苦しいのです。
問い詰めることなく、子どもの自然な語りにまかせてほしいと思います。
まとめ
他にも、ご飯を食べない、部屋に閉じこもりがちになるなど、内側にこもっていく場合もあります。
頭痛や腹痛などを訴えて、体調が悪くなることもあります。
子どもはその理由をなかなか言いません。
言葉にならない理由が複数あり、複雑に絡み合っているからです。
それは親を心配させたくないからかもしれませんし、自分が情けない気持ちになっているからかもしれません。
忘れたいと思っている経験を話すことは、子どもには非常につらく、フラッシュバックが起こることもあります。
「学校でどんなことがあったのか話せる?」と聞いても、何も答えないときは無理に聞きださずに、言いたくなったらいつでも聞くという姿勢で見守ってあげてください。
『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』