それは、あえて言葉に出して『結論から言うと……』と、話し始めることなのだそうです。
そして続けて「理由」「具体例」の順に説明し、最後に結論をもう一度話すと、要領よく話を進めやすくなるということです。
今回は、嶋津良智氏著書 『話し方の一流、二流、三流』から、ややこしい内容でもスッキリ伝えられる話し方についてご紹介したいと思います。
三流は、思いついた順に話す
二流は、強弱を考えずに話す
では、
一流は、話のどこにウエイトを置く?
話を構成するときは、初頭効果とクライマックス効果という、心理学的効果を活用するために、最初と最後に話のウエイトを置きます。
初頭効果とは、最初に与えられた情報ほど影響を与えるというもので、聞き手の関心が低い場合や、相手はあまり乗り気ではないけれどあなたには話すべきことがあるような場合に効果を発揮します。
例えば、会社の指示で社員研修を受けているシーンをイメージしてください。
研修の前は
「めんどくさいな、今日は一日、研修を受けなきゃいけないのか」
と思っていても、最初にインパクトのある話を聞いて、
「おっ! 今日の研修はいつもとは違うぞ!」
「今日はいい話を聞けそうだ」
と、興味を惹きつけられることがあります。
同じように、企画会議のような場合でも、最初にインパクトを受けると、
「この企画は期待できそうだぞ」
「おもしろそうな商品だな」
と興味を持ち、その後の話も聞きたくなるものです。
つまり、話のメインディッシュを最初に伝え、話の間中、何度も繰り返すことで、聞き手の関心を惹きつけるのです。
クライマックス効果は、「おわりよければすべてよし」の親近効果ともいいます。
人は、最後に聞いたことが印象に残るものなので、聞き手が最後に聞いたことに満足感を得ると、その高揚感や満足感を維持することになります。
クライマックス効果は、聞き手の関心が高く、最後まで熱心に話を聴いてくれる場合に、特に効果を発揮します。
例えば、受講生が自分で受講料を支払って参加する研修や、自分で聴きたいことを質問してきたときなどは、
「必ず何か役に立つことを聴こう」
という気持ちで臨んでいるので、最後まで意欲的です。
そうした場合に、最後にインパクトのある話をすると、「いい話を聴けてよかったな」という満足感に満たされる効果が強まるのです。
さらに、最初に聞き手の関心を惹きつけ、最後にもう一度、関心の強い内容を繰り返して、初頭効果とクライマックス効果の併用で、聞き手の満足度を上げることもできます。
聞き手の感情を想像して、話のウエイトをどこに置くのかを考えて話せば、聞き手の満足感を引き上げることができるのです。
三流は、感覚で話す
二流は、最初から全部話す
では、
一流は、どこから話す?
ちょっと込み入ったことや、話しにくいことを話す時、あなたはどうやって話し始めますか?
なんだか回りくどくなってしまうな、と感じることも多いはずです。
時には、「自分って話が下手なんじゃないか」、と思うこともありますよね。
ついいろいろなことを話したくなって、横道にそれてしまったり、あるいは回りくどくなったり…。
そこで、うまく話がまとまらない予感があるときには、結論から話すように意識してみましょう。
あえて言葉に出して「結論から言うと……」と、始めてもOK。
そういう話し方をするほうが、必要な行動を引き出しやすくなることが多いからです。
結論から話すというのは、「PREP法」というトークスキルの一つです。
最初にP(Point)=ポイントや結論を話し、次はR(Reason)=理由、E(Example)=事例、具体例の順に説明し、最後にP(Point)=結論をもう一度話すことで要領よく話を進めやすくなります。
「私は○○だと思うよ」(結論)
「なぜなら○○だからだよ」(理由)
「例えば、○○ということがあるよね」(事例、具体例)
「だから私は○○だと思うよ」(結論)
また、新聞記事のように話す方法もあります。
新聞記事の内容は、ほとんどが、タイトル(結論)、リード(要約)、記事本文(詳細情報)の順で構成されています。
例えば、
「タンカーが沈んだらしいんだよね」(結論)
「テロで大騒ぎになっているらしいよ」(要約)
「そのタンカーは3日前に○○の港を出発して、沈んだのは○○の海で、テロによる爆発で、こんな風に沈んだのを○○の国の機関が確認したそうだよ」(詳細情報)
と話せば、回りくどさを避けられます。
「現状」「目標」「課題」の順番に伝えて相手を納得させる「ギャップ法」という話し方もあります。
まず現状を話し、ありたい姿(目標)を提示して、現状と目標とのギャップ(課題)を共有し、解決策を提示するという話し方です。
「今こうだよね」(現状)
と現状の事例を出すと
「うんうん、私もそう思う」
「あるある、私も経験したことがある」
と、自分のこととして聞き手は感じます。
そこで、
「もしこうなったらいいと思わない?」(目標)
と話すと、聞き手は「確かにそうだ」と思います。
そして、
「そのためにはこんな課題があるよね」(課題)
「解決するためにはこうしたほうがいいよね」(解決策)
と話すと、納得できますよね。
そう、これはテレビやラジオの通販番組でもおなじみの手法なのです。
この手法では、感情変化のプロセスが上手に設計されていて、事例を、こんな悩み(=課題)として考えさせて、理想の状態を提示し、解決方法として商品を紹介します。
だから、テレビショッピング、ラジオショッピングの語りを聞いているうちに、つい、その商品が欲しくなってしまうのです。
あなたから「買う」という行動が引き出されているのです。
「ゴールデンサークル」という理論もあります。
二流の話し方では、What→How→Why(何をやるか→どうやるか→なぜやるか)の順で、話の外側から話しますが、一流の話し方では、Why→How→What(なぜやるか→どうやるか→何をやるか)の順で、話の核心から話すというものです。
もし、スティーブ・ジョブズが普通の人だったら、
「我々のコンピュータは素晴らしく(what)、美しいデザインで誰にでも使える(How)、なぜなら、違う考え方に価値があると信じていて、世界を変えるという信念で行っているからだ(Why)」
と話したはずです。
でも彼は、話し方も一流の人でした。
だから、なぜするの?→どうやってするの?→何をするの?の順で話しました。
「我々のすることは全て世界を変えるという信念で行なっています」(why)
「違う考え方に価値があると信じています」(why)
「私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使えて親しみやすい製品です」(how)
「こうして素晴らしいコンピュータができあがりました」(what)
一流は、目的に応じて話す方法を変えます。
一番伝えたいことに合わせて、話し方を変えるのです。
まとめ
最初と最後にウエイトを置く
「結論から話す」と必要な行動を引き出しやすくなる
最後にインパクトのある話が聞き手の満足感を上げる
ことを、一流の人は理解しています。
同じ話をするのなら、やはり一流のスキルを持っていた方が良いに違いありませんし、そうなるように意識するだけでもステップアップに繋がるのではないでしょうか。
『話し方の一流、二流、三流』