どういう声掛けをすればよいのかわからないまま、自分の感情に任せて親が言葉を放っていると、言葉を替えてみたところで子どもへの良くない影響は続いてしまいます。
今回は、石田勝紀氏、カワグチマサミ氏著書 『みんなの自己肯定感を高める 子育て言い換え事典』 から、子どもへの影響がいい方向に変わる「声かけ」について考えてみたいと思います。
多くの親は、声かけで子どもが変わってくれるといいな、という気持ちが強いようです。
これまでかけていた言葉を変えることで子どもの反応が違ってくることもありますが、全く変わらないままなこともあります。
その違いは、ある原因に寄るところが多く、それを知らないで言葉をただ言い換えただけでは効果は期待できないのです。
では、その原因とは何なのでしょうか?
それは、「声かけをするときの親の感情」です。
言葉を発するときは、様々な感情が伴うことがほとんどです。
まして、親が子どもに対してかける言葉というのは、時に強い感情が伴います。
日常生活で度々使われる、「指示・命令・脅迫・説得」のための言葉は、負の感情を伴いやすいことは理解できると思いますが、言い換えられたプラスの言葉であっても、負の感情が紛れ込むこともあります。
例えば、「ありがとう」という言葉。
子どもの自己肯定感を高める魔法の言葉の1つとして挙げられますが、言い方が異なると、「ありがとう」という言葉をもってしても効果が出ない場合があります。
それは、「言葉」そのものよりも、その言葉に「どのような感情を乗せるか」の方が大切だからです。
感謝の気持ちを伴っているときの「ありがとう」と、イライラしているときの「ありがと!」は、同じ「ありがとう」でも、そのまま「ありがとう」という本来の言葉の意味が伝わる前者とネガティブな印象を相手に伝えてしまうことになる後者に別れてしまいます。
前者は相手の自己肯定感を引き上げることに貢献できますが、後者の場合は、効果がないどころかお互いの感情が悪化しかねません。
書籍や記事の場合は、活字だけで書かれているため、使用する言葉を紹介できても、なかなかニュアンスや言い方まで読み手が理解できるケースは多くはないようです。
会話形式で事例を紹介することはできても、あくまで一つのシーンの例になり、そのままの会話を使うことは難しいからです。
「言葉を使うときに負の感情が乗っていれば、相手には負の印象を与える」とは書かれないため、親が推奨されている言葉を使えば子どもは変わるだろうと勘違いをすることもあるわけです。
ですから、「どういう言葉を発するか」よりも、「どのような感情を乗せて発するか」がより大切になるのです。
もしも子どもに「魔法の言葉」や「言い換え言葉」を使っても効果が出ない場合は、言葉を使うときの感情面に原因があるのではないかと気づいてみてください。
ただ、感情面に原因があると言われても、なかなか感情のコントロールは簡単ではないので、その点をどうやってクリアしてくかを下章でご紹介したいと思います。
話し方についての本はたくさんありますが、「声かけするときの言い方」を書いた本はあまり聞いたことはありません。
実は声かけでは、ここが最も大切な部分なのです。
ただ単に、声かけにはこの言葉を使うといいと言われても、言い方が適切でなければ効果はありません。
以下に、薬の取扱処方説明書のようにご紹介してみましょう。
【子どもへの声かけ版、取扱処方説明書】
1.軽く発する
声のトーンは少々高めで発します。
感覚的な表現でいえば、「ふわっとした言い方」と言ってもいいかもしれません。
例えば、「まだ宿題やらないの? → ゲームはいつ終わる?」に言い換えをしてくださいと言われたとします。
そのとき、軽いテンションで「ゲームはいつ終わる??」という言い方です(「?」の部分で軽さを表現していますが、ニュアンスは伝わるでしょうか)。
逆に声のトーンを下げて少々キツめに、「ゲームはいつ終わる?(怒)」と言ったとしたら軽いとは言えません。
相手に伝わる言い方としては、「軽く表現する」ことが最大のコツであると考えてください。
これなら、相手の抵抗という心のバリアーを突破しやすくなります。
重々しく言えば言うほど、厳かな雰囲気にはなりますが、感情面が出すぎてしまい、内容は何も伝わらないのです。
2.長く話さず、短い言葉で伝える
言葉は端的に伝えることが理想的です。
例えば、帰宅したら珍しく子どもが勉強していたとします。
このようなときに親は「珍しいのね → 頑張っているね?」と言い換えてくださいと言われたので、「頑張っているね?」と軽く言ったとします。
その短い言葉で終わればいいのですが、「頑張っているね?」の後に、「いつもこんなふうに勉強してくれたらいいんだけどね」と余計はことを言ったらどうでしょうか。
「頑張っているね?」の効果はなくなり、子どもは嫌味を言われたとだけ感じてしまいます。
これは極端な例ですが、このような表現でなくとも、余計な一言を付け加えると、せっかく言い換えた言葉の効果がなくなってしまいます。
魔法の言葉や言い換えた言葉というのは、短い言葉だからこそ効果を発揮し、余韻を感じるものなのです。
3.親または子どもが感情的になっているときは言わない
これも大切なことです。
いくら効果がある言葉であっても、親または子どものどちらかが感情的になっているときには、避けたほうがよいときがあります。
感情的になっているときは、どのような言葉を使っても効果がありません。
発する言葉はほとんどマイナス的意味を伴って相手に伝わるからです。
前述したように、言葉はただでさえ感情が乗りやすいため、感情的になっているときは感情そのものがダイレクトに子どもの心に伝わります。
以上のように、魔法の言葉、言い換え言葉は、確かに効果を出す側面がありますが、言い方を間違えると、まったくの逆効果になる場合もあります。
今後、子どもに声かけをする際には、以上の3つのポイントを意識してみてください。
そうすれば、本来の言葉の持つ意味がそのまま子どもの心に届くと思います。
まとめ
ご紹介した子どもへの声かけの3つのコツを上手に言葉にのせて、子どもの心にきちんと届く『声かけ』の習慣を作り上げていきましょう。
『みんなの自己肯定感を高める 子育て言い換え事典』