創設当初は男性にしか適用されず、受給開始年齢は55歳でした。
その後、適用範囲が女性にも広がり、時代の変遷とともに受給開始年齢が少しずつ引き上げられ、現在は公的年金は原則として65歳から受給できます。
しかし、なかには65歳になっても老齢年金をもらうことができない方がいます。
今回は、老齢年金を受け取れないかもしれない可能性についてご紹介します。
現在、老齢年金は、支払った期間が10年あればもらえるようになりましたが、65歳になって年金がもらえるのは、「10年間の年金の受給資格期間がある人」なのです。
この要件を満たしていない方は老齢年金はもらえません。
以下の期間が合計で10年あれば老齢年金がもらえます。
1. 年金保険料を支払った期間(厚生年金・旧共済年金で天引きされている期間含む)
2. 年金保険料が免除・猶予された期間(学生納付特例含む)
3. 合算対象期間
2017年8月以前は、1から3の期間が合計で25年なければ、老齢年金はもらえませんでしたが、大きな改正により10年で老齢年金がもらえるようになりました。
受給資格期間がある方には、黄色い封筒が届きますので、年金事務所を訪れて手続きをすると受給が開始されます。
日本年金機構では「年金保険料を支払った期間と支払いを免除・猶予された期間」が、合計10年にならない方にもお知らせを送り「年金加入期間の確認」を勧めています。
年金保険料を払った期間や年金保険料が免除・猶予された期間は年金機構で把握できますが、「合算対象期間」は把握できないことがあり、10年の期間にするには本人からの申請と証明書類が必要になるからです。
「合算対象期間」とは年金保険料を払っておらず、保険料免除・猶予も受けていないので、年金額は増えないが月数だけを受給資格期間に入れられる期間です。
月数は入れられるが、年金額には影響しないため「カラ期間」とも呼ばれます。
「合算対象期間」(カラ期間)になる可能性があるのは主に以下の7つの期間なので、もらえないと思っていた方でも確認してみる価値はあります。
1. 昭和61年3月以前に会社員の配偶者だった期間(現在離婚していても婚姻期間は入る)
2. 昭和36年4月から平成3年3月までの学生期間(夜間や通信制は除く)
3. 外国在住期間(日本国籍は必要)
4. 国民年金に任意加入したけれど滞納した期間
5. 厚生年金で脱退手当金をもらった期間(昭和61年4月以降65歳前月までに保険料納付済・免除期間がある方に限る)
6. 遺族年金を受給中の期間
7. 配偶者が老齢年金を受給中の期間
老齢年金をもらえない人の条件を改めて確認すると、
1. 国民年金保険料免除・猶予の手続きをしていなくて、国民年金保険料の滞納期間が長く、保険料納付済み期間・合算対象期間と合計しても10年の受給資格期間にならない人
2. 合算対象期間(カラ期間)を証明できず、10年の受給資格期間を証明できない人
ということになります。
例えば、会社員だった元配偶者との婚姻関係を証明するのに元配偶者の戸籍が取れない、学生時代の在籍証明が取れない……などです。
また、年金は「老齢」だけではありません。
生計同一だった「遺族」に遺族年金が支給されることもあります。
遺族年金でも、もらえない方がいるので確認してみましょう。
1. 受給資格期間が10年で老齢年金をもらっている方が亡くなった場合、生計同一の親族(配偶者・子・父母等)は遺族年金をもらえません
→年金事務所では死亡した人の「合算対象期間」を確認し、25年の受給資格期間がなかったか確認することになっています。
死亡したご親族の職歴、結婚歴・離婚歴、学歴や外国居住歴などを把握しておきましょう。
2. 死亡者が死亡日の前々月分までの直近1年間の保険料を払っていなくて、その期間免除・猶予もされていない
3. 死亡者が20歳になってから保険料納付した期間と免除・猶予された期間が合計で2/3以上ない(1/3以上の期間、年金保険料を滞納している人)
老齢年金・遺族年金ともに年金をもらえない条件は、老齢年金は本人が、遺族年金は死亡者が「年金保険料を払っていない、その上保険料免除・猶予の手続きをしていない期間が長い」ことです。
つまり、年金保険料を支払うのが大変に感じるときは、住所地の市区町村役場に保険料の免除・猶予の申請をマメにし、「保険料滞納期間」を少なくすることが確実に年金をもらう早道なのです。
申請をした年度に保険料の免除・猶予が認められても、来年度には再度申請をし直す必要があります。
忘れがちになりますが、保険料免除・猶予の申請は、毎年する必要があるので気を付けましょう。
ここまでで、もしも老齢年金がもらえないと思った方もまだあきらめることはありません。
65歳で受給資格期間が10年ない方は、10年になるまで任意加入で国民年金保険料を納めることができます。
仮に70歳で受給資格期間が10年未満でお勤めされている方は、事業主の合意がなければ全額自分で負担にはなってしまいますが、10年になるまで高齢任意加入で厚生年金保険料を納めることができます。
まとめ
保険料を10年以上、毎月納付しなければならないので、もしも納付が難しい場合には、早めに免除・猶予の手続きを役所でするようにしましょう。
また、年金受給は自ら年金事務所に出向いて受給の手続きをしなければ始まりません。
そのためにも受給開始年齢は、人生100年時代をどう生きるかという老後の生活設計を考えた上で、とても大事な要素になってきます。
自分は何歳から受給を開始するのが人生にとってよりよいものになるのかをよく考えて、手続きをするようにしてください。