結婚(婚姻)制度がそれほど重視されなくなってきている昨今、独身で生きることを選択する方のほか、パートナーとの死別や離別など、おひとりさまになる理由はさまざまです。
家族やパートナーがいる方は、遺言がなくても法的な遺留分が考慮され、遺産の相続がなされます。
しかし、現在、65歳以上のおひとりさまも増加傾向にあり、亡くなった場合には残された財産がどこへ行くのかというのも素朴な疑問になります。
今回は、おひとりさまが亡くなった場合、財産はどうなるのかを調べてみました。
相続が発生した場合、亡くなられた方を「被相続人」、亡くなられた方の財産を引き継ぐ方を「相続人」と呼びます。
民法では、配偶者以外の相続人となるべき人を血族相続人として、順位が定められています。
第1順位は子ですが、子がいない場合には第2順位が親などの直系尊属となり、いない場合には第3順位の兄弟姉妹となります。
兄弟姉妹がすでに他界している場合には、その子が代襲して相続人となります。
最近ではひとりっ子も多く、法定相続人がいないというケースも珍しくありません。
亡くなった方の両親がすでに他界し、兄弟姉妹もいない場合、相続が発生すると「相続人不存在」となります。
家庭裁判所への申立てにより「相続財産清算人」が選任され、一定の手続きの後,相当と認められれば、被相続人と特別の縁故のあった者(特別縁故者:内縁関係など被相続人と生計を同じくしていた人、被相続人の療養看護に努めた人、その他被相続人と特別の縁故があった人など)が相続財産を受け取ることができる場合もあります。
法定相続人がなく、借金などの債務もない、さらに特別縁故者からの請求もなければ、最終的におひとりさまの財産は、国庫(国)に帰属します。
ただし、財産が共有財産であった場合には、国庫には帰属せず、他の共有者に帰属することになります。
お亡くなりになった方が、おひとりさまという認識であっても、実は、兄弟姉妹の子など、法定相続人が存在するケースがあります。
親族間の付き合いが希薄で、長期間連絡が途絶え、現在どこに住んでいるかも不明というケースの場合には注意が必要です。
なぜならば、法定相続人は法律で定められた正式な相続人であるため、相続が発生すると、相続人を確定するために、その方の出生から死亡までさかのぼって戸籍を確認する必要があるからです。
思いがけず相続人となり、相続手続きに巻き込まれることや複数の甥や姪による遺産分割協議がまとまらず「争族」へ発展するといったトラブルの可能性もあり得るので、回避するためには、おひとりさまであっても遺言書の作成が有効です。
遺言書は、書かれる方の最期の意思表示です。
遺言書がある場合には、財産は遺言書に記載されている通りに引き継がれます。
法定相続人がいる場合も、いない場合も、元気なうちに自分の財産を明確にしたうえで遺言書を作成しておくことをおすすめします。
遺言書には、形式により「公正証書遺言」「自筆証書遺言」などがありますが、正しく作成していないと無効となってしまうこともあるため注意が必要です。
「公正証書遺言」であれば、費用はかかりますが、口述した内容を公証人が作成し、公証役場で保管されるため確実に履行されます。
「自筆証書遺言」は手軽に作成できるのがメリットであり、法務局の保管制度を利用すれば紛失のリスクを回避できます。
「自筆証書遺言」の作成にあたっては、有効となる要件として、
1.全文を自筆で書く
2.日付
3.署名
4.押印
がなされていることが必要です。
財産目録を添付する場合には、それぞれに署名および押印すれば自筆でなくても構いません。
遺言書を作成したら、遺言執行者を指定することをおすすめします。
遺言執行者は、遺言書に記載されている内容を実現してくれる人です。
友人などに個人的な依頼もできますが、責任やトラブルが発生した場合に迷惑がかかる可能性もあるため、弁護士など専門家に依頼しておくほうがより安心です。
無用な相続トラブルを回避し、社会貢献ができる手段として、「遺贈寄附」という有効な選択肢があります。
「遺贈」とは、遺言によって、特定の個人や団体に財産を寄附することです。
自分の財産がどこでどのように活用されるのか、自分の意思で決められることに大きな意味があります。
遺贈の寄附先として、さまざまな慈善団体、非営利団体がWEB上でも検索できますので確認してみることをおすすめします。
これまで築いてきた大切な財産ですので、有効に活用されるためにも、信頼できる団体かどうかを慎重に判断しましょう。
元気なうちに直接問い合わせや相談をしてみることをおすすめします。
まとめ
体力がなくなってくると、何かアクションをすることにおっくうになり、ついそのままにしてしまいがち。
すると、自身が亡くなった後に遺品整理で遠縁の親族などに手間をかけさせてしまいかねませんし、何より財産は相続に関わってきます。
不動産や口座などは健康なうちに整理し、財産目録などで状況がひと目で分かるようにしておくと良いでしょう。