猫はきまぐれな動物であることは間違いないですが、本当に数日で飼い主のことを忘れてしまうものでしょうか?
そこで今回は、猫の記憶力にスポットをあててご紹介したいと思います。
「猫は3日で飼い主を忘れる」というように、巷では猫は記憶力の悪い動物かのように話をされますが、実際はとても記憶力に優れているのです。
この記憶という概念をご説明したうえで、猫の記憶力について詳しく解明します。
記憶は情報の受信・情報の保持・情報の連想という3つのステップから成り立っています。
記憶の3ステップとは、例えば
ステップ1.テレビ番組で自宅の近くに美味しいレストランがあることを知る
(情報の受信)
ステップ2. 今度行ってみようと思い、店の場所などをしっかり確認する
(情報の保持)
ステップ3. レストランの近くを通る予定ができたため、そこで食事をしようと決める
(情報の連想)
これら3つの流れを脳内の海馬と大脳皮質で処理・認識し、いつでも思い出せるよう蓄積しているのが記憶の成り立ちです。
記憶には、大別すると「短期記憶」と「長期記憶」の2つがあります。
●短期記憶●
短期記憶とは、「一時的な期間しか覚えていられない記憶」のことです。
短期記憶の例として、“初対面の相手に名前を聞きそのときは覚えていられるが、つぎの日には忘れてしまっている”場合などが挙げられます。
あまり重要ではない事柄について記憶があいまいになるのも、短期記憶として認識しているためだと考えられます。
●長期記憶●
長期記憶とは、「時間が経過しても長期的に覚えている記憶」のことです。
長期記憶は短期記憶の繰り返しによって保持されます。
例えば、英単語の勉強を夜に行ったとします。
しかし翌朝になるとあまり記憶できていなかった。
そのため単語帳を開いて再度勉強した。
このように何度も繰り返し短期記憶を蓄積することで、長期記憶へと変換していきます。
自分の名前や仕事で必要となるスキルなど、重要なものであればあるほど記憶として色濃く残り続けると考えられています。
猫の場合、短期記憶に優れた動物だといわれていますが、長期記憶においてもおもしろい実験結果が出ています。
実験では、エサが入った箱を事前に覚えさせ、猫がどの程度の時間覚えていられるかを計測しました。
すると驚くべきことに、約16時間経過したあとでもエサの在り処をしっかりと覚えていました。
先述したように、長期記憶は自身に重要なものであるほど色濃く記憶として残ります。
この実験で猫はエサがもらえるというメリットが存在していたため、長期記憶として認識できていたと考えられます。
興味を示さないものに対して猫は10秒程度しか覚えていられないとする研究もあります。
そのことから、猫においても自身が受けるメリットと記憶に大きな関係があるといえるでしょう。
結論からいうと、猫と飼い主の関係性によって異なるようです。
先述したように、長期記憶は自身に重要なものであるほど色濃く残ります。それは飼い主と猫の関係性でも変わりません。
例えば、家族で猫を飼っているケースで考えてみましょう。
主にお母さんが猫の世話をしておりあなたはほとんど接していません。
その場合、猫はお母さんとあなたのどちらを自分にとって重要な存在だと認識するかと言えば間違いなくお母さんのほうになります。
このように、猫が飼い主であるあなたを自分にとって重要な存在だと認識していれば、少し愛猫と会えない期間があったとしても忘れられることはないでしょう。
とはいえ、離れている期間が長すぎる、外見がかなり変わったなど、猫が飼い主を識別できないほどの変化がある場合は忘れられてしまう可能性が高いと思われます。
1.子猫期を一緒に過ごす
子猫期に過ごす時間が長いほど、猫の記憶に残りやすいといわれています。
猫は生後2週齢~9週齢の頃に社会化期を迎えます。
社会化は猫が人間やほかの動物との正しいコミュニケーション方法を学ぶ期間です。
そのことから、この期間を愛猫と一緒に過ごすことで、より鮮明に記憶として残ると考えられています。
2.良い関係を築く
日頃のお世話や遊びなど、愛猫と良い関係を築くことができれば、決して忘れられることもありません。
動物と関係を築くのには時間がかかります。毎日少しずつでも時間を取り、おもちゃで遊ぶ、おやつを与える、などのコミュニケーションを取ってみましょう。
猫は警戒心の強い動物なので最初は苦労するかもしれません。
愛猫が自分を好きになってくれるよう、時間をかけて向き合ってください。
3.定期的に接する
長期出張や一人暮らしなどがはじまると、愛猫と接する時間も極端に減ります。
人間もそうですが、長期間会っていない相手への関心は少しずつ薄れていくものです。
飼い主に対する猫のなかでの重要度が変わってしまうと、知らぬ間に忘れられてしまうかもしれません。
可能であれば時間を作って愛猫に会いに行くようにしてください。
短時間でも同じ空間で過ごすことができれば、あなたの顔やニオイを思い出してくれるでしょう。
まとめ
「猫は3日で飼い主を忘れる」という話は、飼い主との関係性がとても薄い場合にのみ発生しうるもので、猫にとって大切な存在であれば、短い期間離れていても決して忘れられるものではありません。
もし、愛猫に自分のことを忘れられてしまった…、と嘆いている方は、愛猫との付き合い方を見直してみましょう。
愛猫にとってどういう存在になるかで、これまで以上に愛猫からの信頼を得られるようになるはずですよ!
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