2021年4月からは、70歳までの就業機会の確保が努力義務となり、将来的には定年制度そのものの廃止される時代が来ることも想定されます。
今回は、定年退職に関連する再雇用、再就職のメリット・デメリットについて解説します。
再雇用とは、勤務先の企業で定年を迎え、一度退職した後に同じ企業に再度雇用されることを意味します。
この場合、「同じ企業」の範囲には、子会社やグループ企業への出向が含まれることもあります。
一度退職の手続きを踏むため、基本的には退職金を受け取ってからの再雇用ということになります。
再雇用が制度化された背景には、高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの雇用確保措置を講じる必要性が生じたという事情があります。
これによって「65歳までの定年年齢引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年制廃止」のいずれかを制度として導入する義務が発生しました。
再雇用後の仕事は、定年前と同じ業務内容である場合もあれば、責任が軽い業務に移る場合もあり、給与は定年前60歳の水準を100%とした場合、61歳時点で80%程度に減ることもあります。
再雇用のメリットを3つ、デメリットを2つご紹介します。
【再雇用のメリット】
1.慣れた場所で働ける
定年前と職場が変わらないケースが一般的なので、慣れ親しんだ場所で一緒に働いてきた同僚もいるという働きやすさがあるでしょう。
2.再就職先を探す必要がない
再就職となると、自分で次の勤め先を探さなければならず、時間も手間もかかります。
一方、再雇用であれば手間暇をかけることなく働き続けることが可能です。
3.厚生年金受給額が増える
定年以降も働き続けることでその分、年金加入期間が長くなり、将来的な厚生年金受給額を増やすことができるからです。
【再雇用のデメリット】
1.賃金トラブル発生の可能性がある
再雇用によって定年前と同じ仕事で働き続ける場合、同じ業務内容でも給与が下がることに不満を覚えることがあるかもしれません。
場合によっては会社とのトラブルに発展する可能性があるため、定年を迎える前に再雇用後の勤務条件をしっかり相談しておくとよいでしょう。
2.役職が変わる可能性がある
再雇用によって責任ある役職から外れて、かつての部下だった年下の社員が自分の上司になる可能性があり、新たなストレスの原因が生じる場合もあります。
また、責任ある立場から外れたことで仕事に物足りなさを感じることもあるでしょう。
再就職は、定年を迎えて今までの会社の継続雇用制度を利用せず退職し、別の会社に就職することを意味します。
再雇用と異なり基本的には自力で再就職先を探すことになります。
ハローワークや定年退職向けに職業紹介を行う「シルバー人材センター」、転職サイトなどを活用して探すのが一般的です。
また、再就職の場合には、非正規雇用の求人が60代以上の分野で多くを占めていることもあり、再雇用の場合と同様、給与は定年前の水準よりも減少するケースがあります。
再就職の主なメリットを3つ、デメリットを2つご紹介します。
【再就職のメリット】
1.自分で仕事を選べる
定年前の業務内容の枠にとらわれず自分の希望に沿った仕事を選ぶことが可能です。趣味を生かせることや、定年後にやってみたかったことを仕事にできる可能性もあります。
2.心機一転できる
定年前と職場が異なり、人間関係も新しく構築するため、今までとは違う環境で働けます。
3.65歳に達した後も勤務できる可能性がある
企業によりますが、再雇用の場合は現在のところ65歳までの雇用しか保障されていません。
再就職であれば、65歳以降も勤務できる可能性が生まれます。
【再就職のデメリット】
1.希望条件に合った仕事が見つかるとは限らない
定年後の再就職は、前職よりも雇用条件が悪くなる場合もあります。
賃金が低かったり、仕事の内容に興味が持てなかったりすると、不満を感じてなかなか仕事を決められないということもあるでしょう。
2.仕事を探すのが大変
再就職の場合、自分で仕事探しをする必要があります。
60歳以降になると求人が限られているため、思うように再就職先が決まらないこともあるため、心身の負担が増える可能性があるでしょう。
まとめ
まずは、自分自身が何のために働き続けるのかを明確にし、選択の軸を作ることが大切です。
定年は第2の人生の始まりでもあります。
自分の人生をどのように歩んでいきたいのかについて改めて考えを深め、時間をかけて再雇用か再就職かを判断するようにしましょう。