保護したのが子猫の場合、授乳期にミルクを飲むことができないのは致命的な問題になり得るため、『何らかの乳製品を与えなければいけない』と考えるのは理解できますが、人間が飲用する牛乳については、有害な成分が入っているわけではないものの、積極的に与えることはおすすめできません。
というのも、猫の母乳と人間が飲む牛乳とでは、栄養組成に大きな差があることが挙げられます。
牛乳には乳糖(ラクトース)という成分が豊富に含まれていますが、猫の中には、乳糖を消化する能力が低い個体が存在します。
人間でも、牛乳を飲むとおなかが緩くなる『乳糖不耐症』の人がいますが、これは猫にも同様にみられるもので、便が緩くなるケースがあるのです。
一方で、人間用の牛乳を飲んでも特に不調を来すことがない猫もいます。
個体による差があることをあらかじめ知っておくとよいでしょう。
なお、猫が衰弱している場合や、幼齢・高齢の猫の場合では、消化管の機能が低下している可能性があるため、手元に猫用ミルクがあればそちらを与えることが望ましいといえます。
保護時に手元に猫用ミルクがなく、すぐには動物病院に連れて行けない場合もあるかもしれません。
そのような場合は緊急的な代用方法として、牛乳に卵黄を溶かしたものを用いることがあります。
こうすることで、猫用のミルクの成分に近づけることができ、与えた後は、健康チェックや適正なミルクの摂取量を確認するため、なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。
子猫にミルクを与える際に重要となるのは、与える量と間隔です。
体は小さいものの多くの栄養が必要なので、頻繁に授乳を行う必要があります。
例えば、目が開いていない生後1週間程度の猫であれば、1回の授乳量は5~8ミリリットルで、これを2~3時間置きに行い、1日の総量として50ミリリットルほど飲ませることが望ましいです。
そして、毎日体重を計測して、1日当たり10グラム程度増加していきます。
生後4週付近までの猫は自力で排せつできないため、その際は綿棒で肛門を刺激するなどして排せつ補助も行いましょう。
屋外で保護された猫は、十分な食べ物にありつけていないことや、感染症やさまざまな病気によって体力が十分でない場合が多くみられます。
この状況で、一度に多くのミルクや食べ物を急激に与えると、かえって下痢を誘発する場合があるため、慎重に様子を見ることが大切です。
猫によって人間用の牛乳を与えても特に影響がないものがいる一方で、乳糖不耐症によって便が緩くなり下痢をしてしまう猫もいます。
人間用の牛乳を与えたあとに、明らかに便の状態に変化が生じた場合は、与えるのを控える必要があります。
また、牛乳に含まれる『カゼイン』と呼ばれるタンパク質に対して、猫がアレルギーを持っているケースもあります。
このアレルギーの場合、下痢の他、皮膚にかゆみを伴う症状が出ることがあるかもしれないので、牛乳を与えたことで明らかに不調が生じた場合は、動物病院に連れて行き、適切な処置を受けてください。
飼い主さんの中には水の代用として牛乳を与える方がいますが、栄養組成のバランスに変化を与える可能性があるため、無理に牛乳を与える必要はありません。
牛乳のほかにも猫に与えてはいけない飲食物は意外と多いです。
日本は海に囲まれた島国なので、猫は魚介類をよく食べるような感覚でいる方がおられますが、魚介類の中でもタコやイカなどの生食はビタミンB1の欠乏症を招き、食欲低下や嘔吐(おうと)が生じる可能性があります。
また、豚肉の生食は『トキソプラズマ』と呼ばれる原虫の寄生リスクがあります。
国内で流通している豚肉はリスクが低いと考えられますが、豚肉は人間と同じく、猫にとってもそもそも生食では与えない食材という認識でよいと思います。
他にもネギ類は貧血、チョコレートは興奮や嘔吐、下痢などを起こすため、与えてはいけません。
また、食べ物ではありませんが、人間が服用する薬を誤って飲んでしまったという例が多くみられます。
猫は、体内で薬物を代謝する能力が人間や犬よりも低いため、中毒が生じやすい点も注意が必要です。
薬の管理は猫の目の届かないところで行うようにしてください。
まとめ
牛乳を飲ませる場合は、よく様子を観察しながら慎重にあたえるようにしましょう。
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