しかし実際には、それがスムーズに行われていないことも多いのではないでしょうか。
とくに上司と部下の間のコミュニケーション不足は、業務の非効率を生み、企業の生産性を大きく下げる結果をもたらします。
今回は、職場の「心理的安全性」の確保の重要性についてご紹介したいと思います。
業務の効率化というと、システムの導入や業務フローの見直しなどを考える方が多いのですが、それらの方法はコストや手間がかかり、現場に混乱を招くこともあります。
その点、コストも手間もかけずに業務を大幅に効率化できる方法として「上司に質問することへの躊躇」を解消するという方法があります。
これまでさまざまな会社で現場の社員に業務の非効率の原因についてのヒアリング結果によると、その中で特筆すべきなのが「上司に質問することへの躊躇」によって生じる時間のロスだとわかってきています。
不明点が生じた時、上司に聞けばものの5分で終わることでも、質問できずに部下が抱え込み、数十分、1時間、2時間と時間が経っていく…、といったことが上司の知らないところで起きています。
これが業務効率を大幅に下げているのです。
管理職の立場にある人は、「チーム全体の生産性」を最大化するように自分の時間と部下の時間を使うことが求められます。
部下の質問に答えることによって自分の時間は奪われますが、代わりに部下の業務効率が上がり、部下はより少ない時間で業務を進められることになります。
例えば、部下の質問に答えることに上司が5分費やした結果、部下がその仕事を5分でできた場合、その仕事をするのにチーム全体で10分の時間がかかります。
一方、部下が上司に質問できずに自分で調べて不明点を解消し、その仕事に1時間かかった場合、チーム全体で1時間を要したことになります。
つまり、上司の仕事の重要度が部下の仕事の重要度より圧倒的に高い場合を除き、(上司の進捗+部下の進捗)÷(上司の業務時間+部下の業務時間)の値を最大化することが、チーム全体の生産性を最大化することであり、それが管理職に求められることでもあります。
そのため、部下の質問に応じることはチーム全体の生産性に大きく影響し、それが管理職としての仕事の成果を左右するのです。
このように部下の質問に応じることの重要性は理解できたとしても、自分の仕事が忙しいとついピリピリして、話しかけづらい雰囲気が出てしまうものです。
それによって「上司に質問することへの躊躇」が部下の側に生じます。
そういった傾向にある人は、部下に「自分が忙しくピリピリしていても、そこは遠慮せずに質問するように」という点を普段から伝えておく必要があるでしょう。
ただ、何でもかんでも質問されると自分の時間が大幅に奪われることになり、それでは上司もたまったものではありません。
また、部下に自分で考えさせる姿勢を持たせることは、部下の育成上も重要なことです。
そのため、現場の状況に鑑みながら、一定時間は自分で考えさせ、それでもわからない場合は遠慮せずに質問させるというスタイルが望ましいと考えています。
いずれにせよ「上司に質問することへの躊躇」が業務効率に大きく影響していることは、間違いないのです。
チームの生産性を高めるうえで、「心理的安全性」を確保することが重要だと言われますが、「上司に質問することへの躊躇」への配慮はその点からも重要な意味を持ちます。
心理的安全性とは、「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をしていると思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」といった不安から解放され、安心して自分の意見や考えを言える状態のことをいいます。
この心理的安全性が確保されていないと、上記の不安を恐れ、発言や質問を控えたり、無能と思われないようにミスを隠したり、ネガティブと捉えられないように否定的な意見を言わない、といったことが起こり、それがチームの生産性の低下を招きます。
たとえば、上司から「本気で5分考えて、それでわからなければ、自分が忙しそうにしていても遠慮なく質問して」等の言葉がけをすることによって、部下の「邪魔をしていると思われる不安」を払拭して心理的安全性を確保し、「上司に質問することへの躊躇」を解消することができます。
それによって部下が必要なときに必要な質問ができるようになり、その結果、チームの生産性が上がります。
「上司に質問することへの躊躇」の解消は心理的安全性の確保にもつながること、そして心理的安全性の確保がチームの生産性を上げることになるのです。
管理職の仕事はチーム全体の生産性を上げることです。
「上司に質問することへの躊躇」がチーム全体の生産性を下げていないかを意識することはチーム全体の生産性の向上に寄与するでしょう。
そして、それは部下のストレスを軽減し、部下に働きやすい環境を提供することにもなります。
加えて、管理職としてのマネジメントの考え方を身につけることにもなります。
自分の業務の進捗ばかり早めようとする管理職と、チーム全体の業務の進捗を早めようとする管理職。
どちらの管理職がチーム全体の生産性を高めるかは言うまでもないでしょう。
こういったマネジメントの感覚を持ち、チーム全体の生産性を高めることができる管理職こそが貴重な人材です。
まとめ
どうやって業務を早くしていくかは、入力タイピングの速さや文字を書く速さ、PCのショートカット機能を駆使したりなど、さまざまあります。
このように数秒単位で業務効率を追求しているにもかかわらず、仮にそのチームのリーダーが感情の起伏が激しく、忙しくなるとピリピリして話しかけづらいオーラを出していたら、現場ではスピードが求められているにもかかわらず、メンバーはリーダーに質問することに躊躇し、質問できそうなタイミングをうかがったり、自力で解決しようと悪戦苦闘したりして、大幅に業務効率が落ちるのです。
部下が積極的に質問できる状況を作ることで、業務効率yた生産性の向上も確実に上がります。
これを機に、あなたの組織で「上司に質問することへの躊躇」がチームの生産性を下げていないかを意識されてみてはいかがでしょうか。