しかしながら腸内細菌の働きにより生じた代謝産物は、認知機能と大いに関係があるようです。
もとをただせば、それは私たちが日常的にどういう食事をしているかによって、認知機能に差が出てくるかもしれないということです。
今回は、腸内細菌と認知症について、ご紹介していきます。
私たちが食事をして、食べ物が体内に入ると、腸内細菌が食物を代謝し、その結果、様々な代謝産物が発生します。
例えば、腐敗産物であるインドールや、悪い菌を抑制する乳酸・酢酸などが代表的な代謝産物です。
食事によって、代謝産物は変わります。
なので食事はいろんな病気に関連していますが、認知症もやはり代謝産物が一つのカギとなって関係しているのではないかと考えられています。
腸内細菌がつくり出す様々な代謝産物と認知症の関係を調査しところ、腸内細菌のいくつかの代謝産物は、認知症と関係があることが分かったのだそう。
中でも、食物中のタンパク質が代謝されるときにできる有毒な物質「アンモニア」が認知症リスクとの関連が高く、乳酸は低いという結果が得られたといいます。
ただし健康な人では、肝臓の働きによってアンモニアは無毒化され、尿とともに体の外に排せつされるので心配はありません。
また、別の研究では、認知症の人と認知症ではない人では、腸内細菌叢(さいきんそう)はタイプが異なることが分かりました。
認知症ではない人に比べて、認知症の人の腸内細菌叢には、種類の分からない菌が増えていたのだそう。
「日本食と認知症」「日本食と腸内細菌」については、これまで東北大学などで研究されてきましたが、これらをまとめて、日本食と腸内細菌・認知症との関係についての解析を行い、食事の内容を調査して、どの程度日本食中心かを、次のようなスコアで表しました。
伝統的日本食スコア
米飯、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶が多いと、それぞれプラス1点、牛肉豚肉、コーヒーはマイナス1点とする。
現代的日本食スコア
伝統的日本食スコアに加えて、大豆類、果物類、キノコ類が多いと、それぞれプラス1点とする。
コーヒーを含む現代的日本食スコア
現代的日本食スコアのコーヒーをマイナスではなくプラス1点とする。
ご飯、味噌汁、焼き魚、野菜、海藻類、納豆などの和食を点数化して調査した結果、認知機能がよい患者さんは、魚介類、キノコ類、大豆類、コーヒーを摂取する割合が多かったのだそう。
また、「現代的日本食スコア」が低いと認知症の人が多く、高いと認知症の人の割合は少ない結果となりました。
「現代的日本食スコア」と「コーヒーを含む現代的日本食スコア」が高いと、認知症の割合が低かったという結果も出ています。
海外の研究でも、DASH食(アメリカで高血圧改善のために推奨されている、飽和脂肪酸とコレステロールを抑えてミネラル、食物繊維、タンパク質を多くとる食事法)やMIND食(地中海食とDASH食を組み合わせた食事法)という健康によい食事をとっている人は、血液から脳組織への物質の移行を制限する仕組みの血液脳関門が保たれるという報告があります。
また、国内の研究では、魚油(DHA)を多くとる人は認知機能低下のリスクが低く、豆類を多くとる女性は10年後の認知症発症リスクが下がるといった報告があります。
まとめ
あまり知られていないようですが、食事や健康に関する情報は、厚生労働省のe-ヘルスネットや農林水産省の『日本型食生活』のススメといったサイトに紹介されています。
これらのサイトの情報を活用して、自身の健康を保っていきたいものですね。
・厚生労働省 e-ヘルスネット 栄養・食生活
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food
・農林水産省 「日本型食生活」のススメ
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/nihon_gata.html