困ったときは、周囲と助け合える子どもに育ってほしい。
そんな親心に反し、子どもは大きくなるにつれて、自分からSOSを出すことは減っていきます。
子どもが将来、ピンチに陥ったときのために、親は今、どんなサポートができるのでしょう。
今回は、医師でもある吉田穂波氏著書『「頼る」スキルの磨き方』からから、子どもが困った時に周囲に頼れる力についてご紹介します。
自分の子どもが嫌なことがあったときや困ったときには、誰かに相談してほしいと思いますが、子どもが人に助けを求める力をつけるために、親はどんな工夫ができるのでしょう。
親としてアドバイスするなら、子どもには「できないことはできない、と言っていい」と思えるような接し方ができるといいですね。
たとえば、親に何でもしてもらって当たり前だった乳児期を終え、3、4歳になると、子どもは自分でできることが増えていきます。
そこで「一人で服を着られたね」「トイレを教えられたね」とほめるだけでなく、何かができなくても否定しない。
できなかったことを茶化したり、叱ったりすると、「失敗してはいけない」「わからないけど聞けない」と子どもは考えるようになってしまいます。
親が「わからなかったらすぐ聞いてね」「最初失敗しちゃうのは当たり前だから、そういうときは人に助けてもらってもいいんだよ」と言えるといいと思います。
それを繰り返すうち、「世の中にはできないこともある。少しずつできるようになったり、本当にできないことは人に助けてもらったりしていいんだ」という考えが育ちます。
では、子どもが自分でできることを「やりたくない」「できない」「やって」と言うときはどうすればよいのでしょうか。
親が手を貸して、自分でできることを諦めさせていいのかと迷う方もおられるかもしれません。
しかしそれはむしろチャンスなのです。
「自分でしたくない」には終わりがあって、いつも「抱っこ」という子でも、大抵は「歩く」と言いだし、いつか手を離して走って行ってしまう。
だから子どもに抱っこを求められたときは「大きくなったら、抱っこしないで」とか言いだすのだから、今は、どんどん抱っこしていいんだ、と考えてください。
子どもの「できない」を受け止めるためには、親の心の余裕が必要です。
親自身が、毎日5分でも、好きな音楽を聞いたり、映画を見たり、好きなものを食べたりして、自分の時間をつくることが大切。
親は子どもの心のお天気や見える景色を決める大気や風のようなものですから、自分ができるだけ心穏やかでいられるように工夫しないといけないのです。
子どもの心がうまく読めずに、今、助けるべき状況なのか判断できない親も意外と多い気がします。
子どもが自分から嫌だったこと、困ったことを親に話してくれるようになるにはどうすればよいのでしょう。
とくに低学年までの子どもは感情を言葉にする能力がまだまだ未熟ですし、大きくなっても「これは悪口になるのかもしれない」「こんなことを言ったら親を困らせるかもしれない」と不安や不満を口にできない子どももいます。
ただ、モヤモヤを抱えすぎると過度なストレスがかかります。
子どもが吐き出したいときに吐き出せるよう、まずは「何か嫌なこと、困ったことがあったら、いつでも聞きたいよ、あなたの役に立ちたいんだよ」という態度や気持ちを示すのがいいと思います。
保育園や学童の帰り道などに、「今日、どんなことがあった?楽しいことはもちろんだけど、嫌だったなっていうことも聞きたいよ」というような言葉がけをしてみてはどうでしょう。
小学校の低学年ぐらいまでなら、親が自分のことを気にかけてくれていると感じるのは、それだけでも心地よいものです。
話すのが苦手な子なら、家で一緒に絵を描くのもいいと思います。
気持ちの発散にもなりますし、幼児であれば「今日のヒーローは誰だった?」「大好きなお友達は?」、小中学生であれば「今、どんなキャラクターが流行ってるの?」「どんなお洋服を着てみたい?」「先生の顔、描いて」…といったように、何気ないトピックが子どもの気持ちを引き出してくれるかもしれません。
誰かと助け合うのはいいことだと伝えるには、親が、誰かと頼り頼られる姿を子どもに見せるのが一番だと思います。
自分のパートナーや両親、ママ友だけでなく、子どもに頼るのもいいかもしれないですね。
子どもが受け止められないような深刻な話や、パートナーを含め他人の悪口、子育てに対する不満や愚痴は避けなければなりませんが、「今日、紙で指を切っちゃった…」「この靴を履いてたら滑っちゃったの」「キャベツとお肉があるんだけど、夕飯何がいいと思う?」「このトーマスのお友達、なんていう名前?」…といったように、日々の小さな失敗談や相談事、子どものほうが詳しい話を聞いてみるといいと思います。
子どもが話を聞いてくれたら、「ありがとう、聞いてくれてとっても気持ちが楽になったよ。お母さんも、何かあったら話を聞けるとうれしいな」「さすがだね、全然知らなかった。また教えてね」などと伝えてください。
頼られた側の充足感を味わってもらえれば、子どもが誰かに頼るときのハードルも下がってきます。
思春期頃からは、頼り合うことが信頼の証であることも理解できるようになります。
たとえば、友達につい遠慮してしまうとき、「あなたがその子だったら、友達が遠慮して自分の気持ちを言い出せないと知って、どう思う?」といった語りかけも効果的かもしれません。
いつか親の元を巣立っていくときのためにも、人に頼り、頼られながら生きることを教えていきたいものです。
まとめ
うちの子は何も言わないから何を考えているのかわからない、とおっしゃる方は、家で一緒に絵をかいたり、子どもと交換日記をしたりするのもよいでしょう。
文章が苦手な子は、絵日記で自分の今の感情を発散してもらう方法もあります。
親が「書いてくれてありがとう」と返事を書いてやり取りしているうちに、大人に「頼るスキル」が次第に磨かれていくのではないでしょうか。
「頼る」スキルの磨き方