厚生労働省が発表した平均寿命のデータを見てみると、女性の方が男性よりも6年も長生きするということが分かっています。
もし仮に、夫に先立たれ妻のひとり暮らしが始まったら、住み慣れた家がやけに広く感じ、手放したいと思うかもしれません。
しかし、夫婦で建てた「夢のマイホーム」の価値は、そのときにはすでにゼロになっているかもしれないのです。
30代の頃に新築で一戸建てを建てたとしても、もう築40年近く経っているはずです。
それだけ古い物件だと建物の価値はゼロですし、売っても土地代にしかなりません。
家の解体費用を支払うと、手元に残るお金はぐっと少なくなってしまうのです。
土地の値段とは違い、家の値段は住み始めた瞬間から下がり続けていきます。
どうしても家を売りたいなら、「いまがいちばん高い」と考えて、即、行動した方がいいのですが、しかし、家を売った後のことまで考える必要があります。
お金の面では割り切ることができても、気持ちの面で割り切ることができない人が多く、思い出が詰まった家を離れて、慣れない環境に変わったことで体調を崩す人もいるのだとか。
住み慣れた家を二束三文で売って小さなマンションに移り住んでも、快適な余生が送れるとは限りません。
ある方は、一戸建てを売ったお金で1LDKのマンションに引っ越して、質素に暮らすつもりだったのに、毎月家賃だけでなく、管理費と修繕積立費に2万円、駐車場代に1万円も取られ、ご近所さんはふた回り以上年下の人ばかりなので挨拶くらいしか会話がなく、家に引きこもりっぱなしの日々が続いていると嘆きます。
お金の問題だけでなく、年を取ってからの環境変化によるストレスは計り知れないのです。
住み慣れた一戸建てなら玄関を出てすぐに外に出られていたのが、移り住んだマンションはエレベーターや階段を使わなければならなくてわずらわしく、外出しなくなる高齢者も多いと言います。
すると次第にQOL(生活の質)が下がり、認知症や孤独死のリスクも高まることになります。
最近は高齢者が多く住むマンションも増えてきていますが、その多くが築50年以上経っているような古い物件なので、マンションの管理が行き届かず、防犯システムも整っていないので、犯罪の温床にもなりかねないのです。
家を手放そうにも高く売れず、移り住むのも不安、ということになると、いちばんいいのは、いま住んでいる家を自分が住みやすいようにリフォームすることではないでしょうか。
かといって、「今すぐ、とりかからないと!」と、急いでリフォームに着手しなくても大丈夫です。
リフォームは、住人のあなたが必要性を感じてから行うべきなのです。
足元がおぼつかなくなってからでは遅いからと、元気なうちに手すりをつける方がおられますが、それをやってしまうと、実際に手すりが必要になったときには腰が曲がって高さが合わなくなっていたり、手すりで通路の幅が狭くなって車いすが通れなくなり、体をぶつけたり、かえって怪我をするリスクが上がったりします。
必要になった時に、すぐに手すりをつけられるように、壁の中に下地を仕込むなどの下準備だけにしておくのが無難だと言えるでしょう。
まずは、ドアノブを握り玉式からレバー式やバー式につけ替えたり、畳やカーペットからフローリングに床を張り替えるなど、体の状態に左右されにくいものから取り掛かるのが賢明です。
まとめ
子どもが独立し、夫婦二人の生活になって、その上どちらかが欠けてしまうと、一人で暮らすには広く感じてしまうかもしれませんが、そこで慌ててマンションなど別の場所に引っ越しするのは考えものです。
せっかく愛着のある長年住んだ我が家なのですから、身体が元気でしっかり動けるのであれば、老後の一人暮らしか快適になるように、リフォームの計画を立ててみましょう。