動ける身体を維持するために、シムに通ったり、ストレッチを習慣にしたりするように、脳の若さをキープすることを考えなければなりません。 今回は、加藤俊徳氏の著書『脳が若返る最高の睡眠 寝不足は認知症の最大リスク』からより、健康な脳をキープする食事のポイントを5つご紹介します。
★ 健康脳になるための食事
1.ポリフェノールと食物繊維とトリプトファン
2.オメガ3脂肪酸
3.鉄分
4.補助食品
5.食事の時間
★ まとめ
果物と野菜摂取量の増加が、糖尿病、心臓病、脳卒中、および一部のがんを予防することが明らかになっているほか、うつ病でない人は、うつ病の人よりもマメ科植物・果物・野菜の摂取量が多く、お菓子の摂取量が少ないことをスペインのアルバータヒメネス高等教育センターで報告されています。
これは、果物と野菜に含まれるポリフェノールが、腸と脳の調節系、概日リズムへよい影響を介して睡眠効果を上げると考えられているからです。(ぶどう・りんごなど)。
また、果物と野菜の摂取が睡眠に及ぼす影響は、メラトニンとセロトニンの含有量に関連すると考えられています(バナナ・そば・大豆など)。
セロトニンは、腸で90%が作られ、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にしています。
また、食べ物によって腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)が著しく変化することや、腸と脳が密接につながっていることが、明らかになってきました。
腸内細菌は、たとえば腸内のセロトニンの分泌を助け、脳内のセロトニンの前駆体(ぜんくたい)をつくる脳の活動をつかさどっています。
そして、この腸内細菌の食料になっているのが、果物と野菜に含まれている食物繊維です。
また、食物繊維は肺の機能を高め、便通など胃腸の健康に役立ち、メタボリックシンドロームのリスクを減らす効果も明らかになっています。
野菜は生で食べるだけでなく、煮たり焼いたりして摂取することも重要です。
ごぼう・人参・サツマイモなどを煮物にして、たっぷり食べるようにしてください。
腸内細菌を良好にする食べ物
ヨーグルト、納豆、キムチ、漬け物、味噌(みそ)、オリゴ糖
セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンからつくられ、そのトリプトファンは、気分の改善や、双極性障害などに対する抗精神作用を持つことも報告されています。トリプトファンは体内ではつくれないアミノ酸なので、必ず食物からとることが必要です。
トリプトファンの豊富な食べ物
マグロ赤身、カツオ赤身、鮭、豚肉、牛肉、鶏肉、豆腐・豆乳、牛乳、チーズ、玄米、そば。バナナ、ブラックチョコレート
2.オメガ3脂肪酸
脳の中では、不飽和脂肪酸という、常温では固まらない油であるオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸が特に重要な役割をしています。
この2つは、脳の神経細胞の「細胞膜」をつくっている重要な材料なので、不足すると、細胞膜の活性が落ち、神経細胞同士のつながりができにくくなります。
オメガ3脂肪酸は、魚や植物に含まれる油で、オメガ6脂肪酸は、ゴマ油・コーン油などに含まれています。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、バランスよくとることが必要です。
この50年、日本では、オメガ3脂肪酸の摂取が減り、オメガ6脂肪酸の摂取が増えています。
昔はアジやサンマやなどの青魚を、季節ごとにたくさん食べており、エイコサペンタエン酸(EPA)というオメガ3脂肪酸がたくさん摂取できていましたが、食事の欧米化により、魚や野菜の摂取が減っているのです。
オメガ3脂肪酸は、以下の食物に含まれています。
アジ、サンマ、サバ、いわし、鮭、アマニ油、エゴマ油(熱を加えないで摂取)、クルミ、かぼちゃの種
3.鉄分
人の体では、ミネラルという微量元素が働いており、栄養の分解や合成・代謝において、酵素の活性を上げるなどの仕事をしています。
中でも、睡眠に大きな影響を与えるのが、鉄分です。
赤血球に含まれるヘモグロビンは、ヘム(鉄)とグロビンというタンパク質でできています。
鉄分が不足すると、酸素を運べなくなり貧血になり、自ずと疲れやすく活動性が低下します。
端的にいえば、顔色が蒼白になり、元気がなくなります。
鉄分欠乏は、認知機能が低下しやすく、世界保健機関(WHO)は、「鉄分を補給することは、認知症に対する最も費用対効果のよい治療法である」と推奨しています。
貧血を起こしていない場合でも、血液中の血清鉄(けっせいてつ)やフェリチン値が低い場合があり、隠れ鉄欠乏の場合があります。
この隠れ鉄欠乏でも、精神的に不安定になりやすいことが指摘されています。
実際に、鉄分が欠乏することで、呼吸が浅くなり、パニックを起こしやすくなります。
また、鉄分は、赤血球の酸素輸送に重要な役割をするだけでなく、セロトニンとドーパミンをつくる酵素活性を上げる役割もしています。
ですから、鉄分が不足すると、この2つの重要な脳内物質をつくれなくなるのです。
さらに、鉄分の不足によって、睡眠の質が低下し、足がむずむずして眠れないムズムズ脚症候群に罹患し、眠れないこともあります。
不調を訴えていた高齢者が、鉄剤の補充だけで元気になることもあります。
高齢者は鉄分が欠乏しやすいのと同時に、ミネラル、ビタミン不足にもなりがちなので、注意が必要です。
女性は生理の出血のために、貧血に対する注意が必要ですが、ランナーにとっても気をつけたいことです。
ランニングは、地面に着地する時のショックで、体重の2~3倍の負荷が片膝にかかり、赤血球を傷つけやすいの、体重の重い方、ランニングシューズのクッションが弱い方は、特に注意が必要です。
鉄分は鉄製のナベやヤカンを使用することでも摂取できますが、次の食物からもとれます。
牛や豚の赤身肉、レバー、マグロの赤身、カツオの赤身、アサリ、シジミ、カキ、ほうれん草、小松菜、枝豆、そら豆、豆乳、鶏卵、ごま
4.補助食品
4つ目のポイントは、サプリメントの摂取です。
栄養に関しては、全てを書ききれませんが、いろいろな栄養素をいろいろ試すことが大切で、食べ物の重要性を自覚し、体感力がついてきます。
不眠につながる、食生活上の3つの悪習慣は、
1.マーガリンのなどに含まれるトランス脂肪酸(アメリカでは禁止されています)の摂取
2.塩分のとりすぎ
3.野菜の摂取量が少ないこと
です。
これらは、絶対に避けましょう。
5.食事の時間
5つ目のポイントは、夕食を就寝の3時間前までに、特に20時までに済ませることです。
入眠時に食物の消化が済んでいないと、消化器に食べ物が残ってしまいます。
そして、これにより、脳は腸との連絡を密にとり続けなければならず、腸の休息だけでなく、脳の休息も夜遅くにずれこむことになるからです。
また、朝食をしっかり摂ることも重要です。
朝の光の働きと同様に、「腹時計」が起動して、体内時計を整えてくれます。
毎日朝食を摂ることは、概日リズムを整えることなのです。
また、1日3食をできるだけ同じ時間に摂ることも大切です。
毎日同じ時間に食事することで、ここでも、概日リズムが整います。
まとめ
特に食事の量と食べる時間は、睡眠の時間にも質にも大きく影響します。
食べるものから身体や脳波作られるので、たくさんの栄養素を通り入れる音は必要ですが、食べすぎて肥満になると、前頭葉の働きが低下することも報告されているので、1日の食事を意識しながら過ごすことが大切です。
『脳が若返る最高の睡眠 寝不足は認知症の最大リスク』